若手農業人主体で作られている雑誌「Agrizm」を発行している農業技術通信社というところがあるのですが、そこのウェブページのとあるコラムが先日話題になりました。


植物を治療する方法「ホメオパシー」
http://agri-biz.jp/item/detail/3214


 後藤芳宏という人のコラムで、その1からその8まであるんですが、主に批判の対象になったのはその2でホメオパシーを説明している部分です。


http://agri-biz.jp/item/detail/3215?page=1


主流になりつつある獣医分野


 また、ドイツやフランスでは、ペットと畜産の分野において「ホメオパシー」は中心的な治療法となりつつあります


 その理由には、もともと環境や食品への関心が高い国民ということもありますが、副作用のある一般的な薬物療法よりも、ペットの負担が少ない治療を望む飼い主が増加していること、BSE問題などがあり畜産物の安全性への関心が高くなっていることがあります


 近年では「ホメオパシー」によって飼育した畜産物や農産物に対する消費者の反応はとても高いものがあります。それは、家畜や農産物への副作用の心配がないことと、可食部に薬剤成分が残留しないからです。「ホメオパシー」で利用する薬剤のことを「レメディ」と呼びますが、この「レメディ」に含まれる薬剤物質の成分は、薬効が有効とされる限界値にまで薄められていますその限界値は「アガバドロ数」と呼ばれ、残留値を測定しようとしても、一般的な測定機器では検出されることのない超微量なレベルです。


 日本ではポジティブリストの導入で、輸入食品の規制が厳しくなる状況にありますが、「ホメオパシー」であれば残留物質が検出されることはありませんので、今後ますます注目されてくるでしょう



 ほとんどの部分にツッコミが入れられますが(上記引用のうち赤字で示した部分は間違っている箇所です)、ある意味最も注目を集めたのが「アガバドロ数」という用語で、おそらくは「アボガドロ数」のことなのでしょうが、高校の化学で習う基本的な単語を間違える(しかも解釈も間違っている)点で、批判というよりほとんど嘲笑されています


 私はこれを読んだとき気が遠くなりそうでした。全体的に、典型的なホメオパシー従事者がしばしば発言していることがそのまま書かれていて(例えばその6ではベンベニストやジョセフソンを好意的に紹介しています)、どうもホメオパシー側のみに取材して書かれたのだろうと思われます。科学的素養の無さと同時に、この取材態度にも疑問を感じます。


 そしてもう一つ残念なのが、こんな滅茶苦茶なコラムを載せてしまう編集部です。ネット上の記名投稿文とはいえ、管理者のチェックは無いのでしょうか?あったとしたらその管理者も同じ程度の科学知識しかないのでしょうか?
 このページはこれは「オカルト農法探検隊」という連載の一部であり、「農業の生産現場で起こる不可思議な現象を、「科学的に解明できなくても、農業経営に役立てばいいじゃないか!」と開き直ってレポートするものです。」だそうです。「筆者には科学的な専門知識などがありません。」のはイヤと言うほどわかりますが、明らかに何も起こらないものを(実際、この人が行ったホメオパシー農法の実験は失敗しているらしい。当然だけど)、なんとなく科学っぽい説明をつけて他人に勧めるのはどうなのでしょうか。


 ところでくだんのサイトは個人ブログではなく、農業技術通信社のサイトなので基本的に責任は会社のほうにあると思います。なので私ははてなブックマーク にこのようにコメントをつけてツイッター連動で投稿しました。



農家こうめのワイン-つい

 ちなみに「これこそムカムカする」というのは、その直前にマクロビ系の酷いページをブックマークしている(http://b.hatena.ne.jp/entry/www.npo-comecome.com/check/ )からです。


 で、どうもこの社名で検索してきたらしいアグリズム編集部(http://twitter.com/agrizm_edit/ )が私を批判してきました。もちろん普通の批判ならいくらでもどうぞですが、やりとりしていて私は正直あきれてしまいました。
 そのやりとりに関してはツイートのまとめ(Togetter)がありますので興味を持った方は読んでいただきたいのですが


Togetter -「読み手にリテラシーがあればいいのではないですか。」
http://togetter.com/li/62398


 正直私が書いている内容もかなり感情的で、突っ込まれどころがいくつもあります。そして実際その突っ込まれどころに関しては的確に突っ込まれています。が、それ以外の私からの指摘に対してアグリズム編集部からは一切の返答がありません。なぜでしょうね。


 どうも農業技術通信社の中では、読み手にリテラシーがあれば書き手は何を書いてもいいそうです。情報発信のリテラシーは問題にならんのかと突っ込みたいし、そもそも本当にリテラシーがある読者ならば件の記事などあきれるだけで、これ以外の出版物に対しても「どうせこんなレベルか」と変な印象を持たれてもおかしくありません。
 というか私がムカムカしたのはまさにこの件で、同じ業界の、しかも多少なりとも縁の無いこともない所が自傷行為に走っている(ように見えた)のが恥ずかしく、悲しかったのですが、どうもそんなことを考える必要はなかったようです。


 まあどうでもいいんですけど。