「奇跡のりんご」はなぜ無農薬栽培なのか

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有名な木村秋則の「奇跡のりんご」をモチーフにした映画が公開されたそうで、それに関係するお話を最近よく見ます。
ところで木村農法はよく無農薬無肥料と言われていますが、なぜそれが可能なのかというと、それは彼が農薬等のことを全く知らないからであり、事実として奇跡のりんごは無農薬栽培でも無肥料栽培でもありません

というのは本人が著書や講演などでも言っている通り、普通に言われる農薬は使っていなくても酢やワサビを使っているらしいので農取法の定義上無農薬ではなく、肥料については菌根菌との共生が肝らしいですが必要に応じて緑肥も使っているらしいので無肥料でもないからです。

緑肥を使っているのに無肥料というのは正直言って全く意味がわかりませんが、無農薬の方に関してはよくある勘違いではあります。農家でも、登録農薬のみを指して農薬であると思っている人は多いです。ただしそういう認識の人が「無農薬栽培」を行うのはいろいろ危ないことは指摘できるでしょう。

農薬の定義に関しては以前のブログ記事(農薬取締法についてhttp://ameblo.jp/vin/theme2-10007267107.html)で説明しています。
それを踏まえて言うと、酢は、食酢であれば特定防除資材に該当します。ワサビはいちおう特定防除資材の保留資材区分Aに入っているので自己責任での使用は可能です。両方とも防除目的で使用すればもちろん農薬にあたります。
農薬農薬といって、普通の農薬に比べれば酢やわさびの方が安全だろうからいいだろう!と思う方がおられるかもしれませんが、酢が食酢ならまだしも酢酸や氷酢酸だったりしたらそれを散布している現場には絶対近づきたくないですし、わさびにだって当然毒性はあって赤ん坊や犬などに与えるのははばかられるでしょう。そもそもりんごに与えても本当に安全なのかさっぱり調べられていません。だいたい無農薬という表記が間違いである事実はなんら変わりません。

また前回のブログ記事で少し指摘しましたが、農薬取締法などの農薬規制が厳しくなってきたのは農薬リスクを問題視する人たちの運動の成果で、木村農法のファンにもそういう人は多そうです。本来、そういう人たちこそ、厳しくなった農薬取締法をちゃんと把握して守っていくべきであって、農薬規制的にグレーな物をありがたがっている場合ではありません。

木村農法は、正しく表現すると無登録農薬・無化学肥料栽培となりますが、無登録農薬農法については酢とわさびはたまたまOKでしたがほかのものもなんでも使えるというわけでもなく農薬取締法違反の影はついてまわり(ストリキニーネのような毒を殺虫剤がわりに使う「無農薬栽培」の農家も実在します)、無化学肥料栽培はいまどき珍しくもなんともありません。
また「奇跡のりんご」の奇跡の部分は「腐らない」というお話に大きく拠っているようですが、本人がそう言っているだけで特に確かめられているわけでもありません。

奇跡のりんごのお話がスピリチュアルとか自己啓発とかいう文脈で語られるならまあそういうものかと思いますが、少なくとも農業技術としては意味がないでしょう。商売としては、良く言えば非常に変わった6次産業化というか、農業のメディアミックスの先駆けとは言えるでしょうが。
もっとも普通のりんご農家が普通にりんごを作っている様を映画化するのはものすごく難しいでしょうけど、そういう普通のひとの頑張りが評価されるようになるほうが世の中は良くなるような気がするなぁ。
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