東京都美術館で「ポンピドゥー・センター傑作展」を観た! | とんとん・にっき

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東京都美術館で「ポンピドゥー・センター傑作展」を観てきました。観に行ったのは7月7日にのことでした。

2011年に国立新美術館で開催された「シュルレアリスム展」と様々な個所で印象が重なる部分があります。と思って過去の記事を調べたら、やはり「パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による」とありました。

国立新美術館で「シュルレアリスム展」を観た!


そこで書いたことですが、以下に引用しておきます。

パリには何度か行きましたが、その度にポンピドゥセンターに行きました。とは言っても、上にエスカレーターで上がったのは一度だけで、現代美術だけの展示だったので、なぜか怖じ気ついてすごすごと降りてきました。ですからポンピドゥに行ったと言っても、広場で行われている大道芸を観に行ったようなものです。いや、そればかりではありません。当時、ポンピドゥセンターは最先端の「現代建築」だったのです。もちろん、今でも現代建築のトップランナーですけど・・・。パイプむき出しで、原色に塗り分けられたこの建物ができたときは非難囂々でした。


ポンピドゥセンターは、当時のポンピドゥ大統領の名前を取ってつけられたもので、1971年のコンペにより設計されました。設計者はレンゾ・ピアノ+リチャード・ロジャース、そしてオヴ・アラップからなる設計チームです。レンゾはイタリア人、ロジャースはイギリス人、オヴ・アラップは構造や設備を設計する組織体です。現代美術館、研究図書館、デザイン・センター、音楽音響研究の4つの領域からなり、市民の広範囲なイベントをカバーする場として利用されています。


「ポンピドゥセンター」の画像については、以下に載せてあります。

ポンピドゥー・センター:パリ3


磯崎新の「日本建築思想史」をパラパラと見ていたら、ポンピドゥーセンターが主催、という箇所が見つかりました。僕も観に行ってましたが、「あれっ、そうだったんだ」と今頃気が付く始末。金沢21世紀美術館のコメントには、たしかに以下のようにありました。扱っていたのは日本の現代建築でしたが、今回の「ポンピドゥー・センター傑作展」と、いろんなところで似通っているのに気が付きました。例えば、作品のセレクションについて、あるいは作品の並べ方、会場構成、その他さまざまな個所で。


「ジャパン・アーキテクツ」はポンピドゥー・センターパリ国立近代美術館副館長のフレデリック・ミゲルー氏を監修・キュレーターにお迎えして、戦後日本において大きな役割を果たしてきた日本の建築家たちによる150を超えるプロジェクトを考察し、戦後日本建築史を紹介する展覧会です。

金沢21世紀美術館で「ジャパン・アーキテクツ 1945-2010」を観た!



今回の「ポンピドゥー・センター傑作展」、大きな特徴として、ポンピドゥー・センターが所蔵する膨大なモダンアート作品を、1900年代初めから70年代後半まで、1年ごとに1人の作家の作品を並べて展示していることです。1人の作家は1作品に限られ、しかも、作品はフランス人か、フランスで制作したことのある作家の作品に限られています。時代や流派、作者といったテーマに基づいて作品を選んだ展覧会が数多くある中で、今回の「ポンピドゥー・センター傑作展」はあええてその流れに逆らっています。


「ポンピドゥー・センター傑作展」のラストを飾るのは、「ポンピドゥー・センター」そのものです。1977年にレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースによってコンペを勝ち取った時の、「パリ、ポンピドゥー・センターのスタディ模型」が最後に出てきます。パイプむき出しで、原色に塗り分けられたこの建物ができたときは非難囂々でした。


一般的な美術評はさておき、朝日新聞では「ル・コルビュジエ30代の油彩画」として、ル・コルビュジエの描いた油彩画「静物」(1922年)を取り上げています。コルビュジエは近代建築の巨匠としてよく知られていますが、「静物」はまだ30代の若描きです。コルビュジエは1918年からパリで、知人の画家とともに、秩序や厳密さ、幾何学的な美を追求する「ピュリスム(純粋主義)」を起こし、絵画に集中します。「静物」はその頃の代表作で、瓶やパイプ、ギターなどを細部は省略し、単純な形にして画面を構成しています。
ル・コルビュジエの絵画


いつの頃からか、建築家が会場構成を行う、ということが目に付くようになってきました。各種の展覧会では、一種、流行りのようにもなっています。いや、「売り」にもなっているようです。今回の「ポンピドゥー・センター傑作展」では、以下のようになっています。


展示デザインは建築家の田根剛さんによるもの。トリコロールに色分けされた三つのフロアはそれぞれ、斜め、ジグザグ、円形の壁で区切られ、まったく異なる空間で作品を鑑賞できるように構成されている。


そんなことで、今回の展覧会の会場構成について、下記の画像を載せておきます。(画像は「朝日新聞」2016に年7月16日の記事による)


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朝日新聞(2016年7月16日)は作家・原田マハさんと会場を歩き、「アートは歴史の必然で生まれる」という記事にしています。そこで取り上げられた作品は、まず最初にマルセル・デュシャンの「自転車の車輪」、そしてマルク・シャガールの「ワイングラスを掲げる二人の肖像」と、パブロ・ピカソの「ミューズ」でした。レオナール・フジタにも触れていますが。


以下、朝日新聞の囲み記事より

マルク・シャガール「ワイングラスを掲げる二人の肖像」1917-18年

第1次大戦が起こり、パリにいたシャガールは旧ロシアの故郷の町にもどる。そこで結婚式を挙げ、縦2メートルを超える本作品に歓喜の気持ちを込めた。画かはウェディングドレスを着た妻の肩に乗り、祝杯を掲げている。私生活のうえでも創作活動のうえでも、シャガールの最も幸せな時期に描いた作品である。

パブロ・ピカソ「ミューズ」1935年

自由で多彩な表現を繰り広げたピカソの傑作。画中の女性2人が誰かをめぐって、様々な解釈がなされてきた。腕を重ねて眠るのが愛人マリー・テレーズ、絵筆を執るのがその姉か妹、あるいは当時の妻オルガとも。この年、ピカソは愛人の妊娠が発覚して妻と別居にいたり、苦悩を抱えていた。


以下、「ポンピドゥー・センター傑作展」の作品の一部

(キャプションの上は画像の左、下は画像の右)


1900年 :ラウル・デュフィ「旗で飾られた通り」

1910年:コンスタンティン・ブランクーシ「眠れるミューズ」


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1913年:マルセル・デュシャン「自転車の車輪」

1917年:マルク・シャガール「ワイングラスを掲げる二人の肖像」


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1922年:ル・コルビュジエ「静物」

1924年:ジャン・プルーヴェ「リクライニングチェア」


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1926年:ロベール・ドローネー「エッフェル塔」

1928年:レオナール・フジタ「画家の肖像」


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1929年:セラフィーヌ・ルイ「楽園の樹」

1931年:ピエール・ボナール「浴槽の裸婦」


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1932年:アンリ・カルティエ=ブレッソン「サン=ラザール駅裏」

1935年:パブロ・ピカソ「ミューズ」


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1937年:ヴァシリー・カンディンスキー「モノクロの小宇宙」

1940年:マリー・ローランサン「イル・ド・フランス」


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1948年:アンリ・マティス「大きな赤い室内」

1950年:ベルナール・ビュフェ「室内」


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1956年:アルベルト・ジャコメッティ「ヴェネツィアの女V」

1961年:クリスト「パッケージ」


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1967年:ヴィクトル・ヴァザルリ「アーニー(影)」

1973年:ジャン・デビュッフェ「騒がしい風景」


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1977年:レンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャース

「パリ、ポンピドゥー・センターのスタディ模型」


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「ポンピドゥー・センター傑作展」

パリの中心部に位置するポンピドゥー・センター。その珠玉の近現代美術コレクションから一年ごとに一作家一作品を厳選し、1906年から1977年のタイムラインをたどる展覧会。マティスの油絵の到達点《大きな赤い室内》をはじめ、多彩なラインナップでフランス20世紀美術を一望します。

「東京都美術館」ホームページ


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