東京都美術館で「ボルゲーゼ美術館展」を観た! | とんとん・にっき

東京都美術館で「ボルゲーゼ美術館展」を観た!

ローマへは何度か行きましたが、一度だけ、ボルゲーゼ公園をさまよったことがありました。(たぶん)1990年のことです。たしかポポロ広場を通って、ローマ時代の擁壁の向こう側にボルゲーゼ公園があったと思います。僕の目指したのはなぜか「ヴィラ・ジュリア国立博物館」で、「ボルゲーゼ美術館」でなかったのは、どうしてなのか思い出せません。いずれにせよ、ボルゲーゼ公園をさまよっただけで、何も観ることができませんでした。帰りに街のバールに立ち寄り、ピッザ一切れを食べてデミタスコーヒーを飲んだことだけは覚えています。


東京都美術館で「ボルゲーゼ美術館展」を観てきました。ボルゲーゼ美術館には、バロック彫刻の傑作、ベルニーニの「アポロとダフネ」があることで知られています。アポロの追われたダフネが月桂樹に変身する瞬間をとらえた大理石の彫刻です。副題には「ルネサンスからバロックへ 美の饗宴」とあります。今回の目玉は、ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」、謎多き名画日本初公開、とあります。もう一つの目玉は、カラヴァッジョの「洗礼者ヨハネ」、こちらは最後の傑作日本初公開、とあります。チラシも2種類、この2つが使われています。


「謎多き名画」とは、どういうことなのか?ラファエロ20代前半の作品。かつては一角獣を塗り潰され、別人の作とされていた「謎多き名画」。ダ・ヴィンチからの影響が認められ、安定した構図と精妙な描写は、若き天才の手腕を証明している、とチラシにあります。一方、「最後の傑作」とは?38歳で病死したカラヴァッジョの最晩年の代表作。劇的な光によって暗闇から浮かび上がるヨハネは、気だるそうな雰囲気を漂わせ、妖しい魅力をたたえている、とチラシにあります。


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展覧会の構成は、以下の通りです。

序章 ボルゲーゼ美術館の誕生

Ⅰ 15世紀・ルネサンスの輝き

Ⅱ 16世紀・ルネサンスの実り―百花繚乱の時代

Ⅲ 17世紀・新たな表現に向けて

ボルゲーゼと日本:支倉常長と慶長遣欧使節


東京都美術館の大改修が行われるので、今回が最後の展覧会です。東京都美術館は、前川国男の設計によるもので、築後30年余年が経過し、施設や設備が老朽化していることから、平成22・23年度の2年間にわたって改修工事が行われます。


さて今回のボルゲーゼ美術館展、見所はというと、「一角獣を抱く貴婦人」と「洗礼者ヨハネ」以外には、なんでしょう?こう言っちゃなんですが、全体的に凡庸な作品が並んでいました。ボッティチェリの「聖母子、洗礼者ヨハネと天使」、トンド(円形の絵画)形式の中に、幼子キリストを腕に抱き、王座に座る聖母マリアが描かれています。その傍らに洗礼者ヨハネが跪いています。玉座の後ろには祈りに没頭した天使たちがいます。しかし、全体に顔の表情が乏しい、生き生きとしていません。ボッティチェリが描いたトンド形式の絵画は、他に「マニィフィカトの聖母」「ザクロの聖母」がウフィッツィにあります。比較しちゃなんですが、この2つの方が優れています。トンド形式の絵画では、ウフィッツィ美術館にあるミケランジェロ唯一の絵画「聖家族」が有名です。


レオナルド・ダ・ヴィンチの「レダ」は消失しています。今回出されたものは「模写」です。ウフィッツィにあるものも「模写」です。両者を比較すると、レオナルドらしい人物は似ていますが、背景はほとんど異なっています。背景は、ボルゲーゼは明るく、ウフィッツィは暗い。「レダ」には、ラファエロの模写デッサンもあるようです。


「魚に説教する聖アントニオ」はヴェロネーゼのもっとも成熟した時期の作品だそうで、強烈な色彩と明暗の使い方が素晴らしい。ヤコポ・ズッキの「アメリカ大陸発見の寓意(珊瑚採り)」を観て、牧島如鳩の女性像を思い出しました。


どうしても、というか、僕の観たものでは、ついつい「女性」を描いたものに目が行ってしまいます。予想外にいい作品がありました。ブレシャニーノの「ヴィーナスとふたりのキューピッド」、ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオの「レダ」と対になる「ルクレツィア」、カヴァリエール・ダルピーノに帰属の「キューピッドに冠を被せられるヴィーナス」、そしてジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマッリの「巫女シビラ」などです。ブレシャニーノの「ヴィーナスとふたりのキューピッド」は、ウフィッツィにあるミケランジェロのヴィーナスの素描に由来しているという。


そうそう、最初に書くべきだったのがマルチェッロ・プロヴェンツァーレのモザイク画「オルフェウスの姿のシピオーネ・ボルゲーゼ」です。作品自体はそう大きくはありませんが、これはすごい、近くで見ると驚きます。小さなモザイクタイルで描かれたものです。 


最後に特別出品の「支倉常長像」、僕は支倉常長のことは、遠藤周作の小説で初めて知りました。もちろん遠藤の小説では名前は変えてありますが。常長が仙台藩主伊達政宗の命を受けて出帆、以来7年後、仙台に帰着し、その2年後に52歳で病没したという。この皮肉な物語は、「支倉常長像」の顔の苦渋に満ちた表情にも表れているように思えます。


序章 ボルゲーゼ美術館の誕生





Ⅰ 15世紀・ルネサンスの輝き




Ⅱ 16世紀・ルネサンスの実り―百花繚乱の時代







Ⅲ 17世紀・新たな表現に向けて





ボルゲーゼと日本:支倉常長と慶長遣欧使節



*以下の画像は、1990年に行ったイタリア旅行の時に、ボルゲーゼ公園内を歩き回ったときのものです。主たる目的は「ヴィラ・ジュリア」へ行こうと思ったのですが、あまりにも広く、やっとたどり着いたのですが、結局、建物の中へは入れませんでした。ボルゲーゼ美術館は反対側でした。






イタリア、ローマ市北東部の広大な公園の中に位置するボルゲーゼ美術館。名門帰属であったボルゲーゼ家の出身であり、ローマ教皇の甥でもあったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿(1576-1633)は、17世紀を代表する大パトロンでした。ボルゲーゼ美術館のコレクションは、彼が情熱的に集めた絵画・彫刻を出発点としており、世界に名だたるルネサンス・バロック美術の宝庫とされています。本展は、同館のコレクションをまとめてご紹介する初めての機会です。15世紀から17世紀にかけて花開いたイタリア美術の流れを、ラファエロやカラヴァッジョといった巨匠たちの手による、約50点の珠玉の名品によってご堪能ください。(チラシより)


「東京都美術館」ホームページ


「ボルゲーゼ美術館展」公式ホームページ


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