東京都美術館で「新印象派」展を観てきました。観に行ったのは3月10日のことでした。当初、正直言って、あまり気の進まない展覧会でした。点描作品は、あまり好きではなかったからです。しかし、実際に展示されている作品を見てみると、それまでとはがらりと変わり、「印象派」を受け継ぎ、来るべき「フォーヴィスム」へと橋渡しをした、わずか20年ほどの「運動」であったことが、作品とともによく理解できました。
「新印象派」とは、1880年代半ばから1900年代初めにかけて活躍した点描技法を用いた画家たちです。彼らは、その名が示す通り、「印象派」を継承しながらも、最新の工学や色彩理論を参照し、光と色の効果を探求しました。
今回の展覧会には出品されていないものの、図録の巻頭ではスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」が、新印象主義による実験的な作品であり、記念碑的な規模の野心作だった、としています。日曜日に首都を抜け出して、まだ街とは言えないものの、もはや田舎でもない中間的な場であった郊外に、自然を見出そうとするパリの人々の営みを描写した絵画作品です。この作品が、当時の画家たちのアトリエに強烈な興奮を巻き起こしたという。
今回の展覧会の目玉は、スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の技法を受け継いだ「セーヌ川、クールブヴォワにて」です。建築物は細かな筆触で描かれ、木の葉の描写にはより軽やかな筆触が用いられています。セーヌ川の川面の描写は繊細な平行線をつられた網のような筆触は、散歩する女性の洗練されたシルエットをほっそりと見せるために、縦に引き伸ばされています。
スーラとシニャックは、1886年5月にはベルギーに出品開幕する最後の印象派展に参加します。ピサロとモリゾの尽力によるものです。統一性に欠けるこの展覧会は、印象派グループの解体を反映するものでした。
展覧会の構成は、以下の通りです。
プロローグ 1880年代の印象派
第1章 1886年：新印象派の誕生
第2章 科学との出会い―色彩理論と点描技法
第3章 1887-1891年：新印象派の広がり
第4章 1892-1894年：地中海との出会い―新たな展開
第5章 1895-1905年：色彩の解放
エピローグ フォーヴィスムの誕生へ
プロローグ 1880年代の印象派
第1章 1886年：新印象派の誕生
第2章 科学との出会い―色彩理論と点描技法
第3章 1887-1891年：新印象派の広がり
第4章 1892-1894年：地中海との出会い―新たな展開
第5章 1895-1905年：色彩の解放
エピローグ フォーヴィスムの誕生へ
「色彩表現の変化の軌跡」
美術批評家フェリックス・フェネオンが「新印象派」と名付けたのは1886年のことです。この年の5月、最後となる印象派展が開催され、ここでジョルジュ・スーラ、ポール・シニャックらによって色彩を小さな点に分割する新しい技法の作品が初めて発表されました。観る人の目の中で混ざるよう置かれた小さな点は、色彩の輝きと光の効果を高めるものでした。新印象派の作品は、翌1887年2月にはベルギーに出品され、すぐに国際的な広がりを見せます。1891年に新印象派の創始者スーラが早すぎる死を迎えた後、シニャックやクロスを中心に新印象派の様式は新たな展開を迎えました。色彩理論に忠実に従うことをやめ、自然の観察に基づく色彩からも解放されていきます。次第に自由で豊かになっていく新印象派の色彩は、マティスらによるフォーヴィスム誕生の源泉にもなりました。本展は、新印象派の流れをその誕生から20世紀初頭までの約20年にわたってたどるものです。世界12か国から厳選した珠玉の約100点を通して、画家たちの探究した色彩表現の軌跡をご紹介します。
「東京都美術館」ホームページ
「新印象派―光と色のドラマ」
編集：あべのハルカス美術館
東京都美術館
日本経済新聞社文化事業部
学術協力：三浦篤
発行：日本経済新聞社
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