「横浜美術館コレクション展」を観た! | とんとん・にっき

「横浜美術館コレクション展」を観た!

hama12


横浜美術館コレクション展、今期のテーマは「ともだちアーティスト」です。「大観展」の時にもコレクション展を観ましたが、今回の「観山展」の時も、同じ展示でしたが観てきました。横浜美術館の収蔵作品を、「作家の交友関係という視点から並べてみると、作品と作品の間を結ぶ新たな物語が見えてくる」、という趣旨のようです。場所と時代を共有した作家たちのまとまりを6つのセクションに仕立ててあります。


1.横浜での出会い 写真家と画家

2.藤田嗣治とパリの作家たち

3.ヨーロッパとアメリカ、ダダとシュルレアリスムの作家たちを中心に

4.戦後日本とアメリカ 具体とネオダダ

5.美人画の作家たちと赤曜会

6.「毛の生えた心臓の夕べ」シアター


ここでは、1.横浜での出会い 写真家と画家と、2.藤田嗣治とパリの作家たち、を以下の取り上げます。


1.横浜での出会い 写真家と画家


ハイネとブラウン・ジュニア

1854年(嘉永7)、前年の約束通りに再来日したペリー率いる黒船には、2人の記録係が乗っていました。ドイツ人画家のペーター・B.W.ハイネと、アメリカ人写真師のエリファレット・ブラウン・ジュニアです。彼らが国内各地を写し取った絵画と写真は、日本の風景・風俗を海外につまびらかに伝える最初の媒体のひとつとなりました。同時に、彼らがもたらした新しい視覚メディアによって、日本における洋画と写真の歴史が、ここから本格的な幕開けを迎えることになります。



ワーグマンと高橋由一

ワーグマンのもとからは、何人かの重要な画家が輩出しましたが、その筆頭格が高橋由一です。武士の家庭に生まれ、幼少期から絵画の才を発揮した由一ですfが、ワーグマンのもとで本格的な洋画技法に初めて触れることができたのは1866年(慶応2)、39歳のときでした。翌年には早くもパリ万国博に油彩画(のちに焼失)を出品しますが、その肖像画には師の筆が加えられていたと言われています。ワーグマンからの油彩画技法の習得を経て、さらに独自のリアリズムの画境を開いた由一は、「近代洋画の開拓者」としてその名を今日まで留めています。




五姓田とその画塾

西洋画の技法に衝撃を受けた五姓田芳柳は、「写真画」と称する、写真をもとにした独自の技法を創案しました。その息子である義松は、わずか10歳でワーグマンに入門し、そののち渡仏して、アカデミズムの画家レオン・ボナから本格的な油彩画技法を学びます。また義松の妹であり、父芳柳や兄のもとで洋画を学んだ勇子は、同門の渡辺文三郎と結婚したのち、渡辺幽香の名で活動しました。今日「五姓田派」と総称される彼ら一族とその門弟たちは、日本の近代絵画の幕開けにあたって重要な役割を果たしました。





2.藤田嗣治とパリの作家たち

1914年(大正3)にパリに渡った藤田嗣治が多くの作家たちと交流したことは、広く知られています。1929年(昭和4)までのパリ滞在のことを、藤田は「地を泳ぐ」「腕一本」「パリの昼と夜」などの随筆に書き残しています。


パリの到着した翌日に、藤田はパブロ・ピカソと出会いました。キュビスムとの出会いは大変な衝撃だったようで、藤田の画風はその直後に変貌を遂げます。ピカソとの友情は終生続き、ピカソを通じて、モンマルトルのアパート「洗濯船」を拠点としていた芸術家集団の仲間とも知り合いました。女流画家マリー・ローランサンもその一人です。やがて藤田は、陶器のような滑らかな「乳白色の肌」の裸体画で、一躍パリの寵児となりました。その後、藤田を頼ってパリに来る日本人画家たちが後を絶たず、パリの日本人グループが形成されました。


藤田は、肖像写真のモデルとして写真家も魅了しました。シュルレアリスムの写真家マン・レイは、モンパルナスの芸術家コミュニティーにおいて藤田と交流しており、藤田も含め当時の作家たちの肖像写真を多く残しています。また、二人ともモデルのキキに魅了され、同じ女性を通して自らの芸術を昇華させた、という共通点は興味深いものです。一方、円熟期の藤田を撮影しているのが、木村伊兵衞と土門拳です。戦時中の日本での藤田と、フランス国籍を取得しパリに戻った後の藤田をとらえたそれぞれの写真は、藤田の異なる表情を切り取っています。藤田を画家にした「パリ」という街の写真作品とともに、藤田と彼の友人たちの作品を紹介します。





過去の関連記事:

神奈川県立歴史博物館で「ワーグマンが見た海―洋の東西を結んだ画家―」展を観た!
神奈川県立歴史博物館で特別展「五姓田のすべて 近代絵画の架け橋」を観た!

過去の関連記事:横浜美術館関連

横浜美術館で「生誕140年記念 下村観山展」(前期)を観た!
横浜美術館で「横山大観展 良き師、良き友」(前期)を観た!
横浜美術館で「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」を観た!
横浜美術館で「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」を観た!
横浜美術館で「コレクション展」を観た!
横浜美術館でコレクション展2010「イサム・ノグチと20世紀の彫刻」展を観た!
横浜美術館でコレクション展「ダリとシュルレアリズム」他を観た!
横浜美術館で「ドガ展」を観た!
横浜美術館で「フランス絵画の19世紀」展を観た!

丹下健三設計の横浜美術館!
横浜美術館「アイドル!」展