神奈川県立歴史博物館で「ワーグマンが見た海―洋の東西を結んだ画家―」展を観た! | とんとん・にっき

神奈川県立歴史博物館で「ワーグマンが見た海―洋の東西を結んだ画家―」展を観た!




神奈川県立歴史博物館で「ワーグマンが見た海―洋の東西を結んだ画家―」展を観てきました。先日、太田記念美術館で観た「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」(後期)の項で、以下のように書きました。


国芳の門人である五姓田芳柳がリアルに描いた「歌川国芳肖像」もありました。5度も改名したので五姓田と称したとのこと。その次男が義松といい、早くから神童と呼ばれ、横浜でワーグマンに油絵を学び、パリにも留学しました。


つまり、五姓田芳柳は歌川国芳の弟子で、その息子である五姓田義松はワーグマンの弟子だったというわけです。義松の描いた油彩画「西洋婦人像」は、素晴らしい作品です。そして国芳の没後150年、ワーグマン来日150年という、不思議な連関、いや驚きました。驚いたのはそればかりではありません。あの「花魁図」「鮭図」で知られている高橋由一は、ワーグマンのもとを訪れ、入門に至ったというから、これも驚きです。舶来の油彩画技術を学習し、実践し始めます。「江之島図」は由一がワーグマンの元に通っていた頃描いた作品です。翌年にはパリ万国博覧会へ出品もしています。ついつい国芳の「江之島図」と比較して観てしまいます。


初代芳柳に学んだ山本芳翠は、ワーグマンの孫弟子にあたりますが、パリに学び、義松を超える「婦人像」を描いています。今回も「富士山」が出ていました。渡辺幽香は義松の妹です。油彩画では「植木棚の少女」(不詳)、版画では「大日本風俗漫画」(1887年)、「大日本帝国古今風俗 寸陰漫稿」(1886年)が出されていました。これらに関して多くは、神奈川県立歴史博物館で開催された「五姓田のすべて 近代絵画への架け橋」を観て、始めて知りました。


展覧会の構成は、以下の通りです。

Ⅰ 航海

ワーグマンが旅立ったのは、1857年のこと。中国とイギリスの間でおこったアロー戦争を取材することが主な目的でした。日本に来るまでの数年間は、彼にとって修行のような意味合いもありました。本章では、「イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ」に掲載された挿絵と、同時代の水彩画を紹介します。

Ⅱ 港ヨコハマ

1861年、和暦にすれば文久元年、ワーグマンは初来日を果たします。開国間もない日本の様子を伝えることが来日当初の主な仕事でした。その後「ジャパン・パンチ」の発行を主としながら、およそ30年間日本で暮らしました。本章では、「イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ」に掲載された挿絵や日本で描いた油彩画、水彩画、そして「ジャパン・パンチ」を紹介します。

Ⅲ 海を越えた技術、海を越えた弟子たち

ワーグマンは、当時の日本の絵画の動向に大きな影響を与えました。ひとつは、本格的な西洋絵画技術を伝えたことです。彼の弟子として五姓田義松、高橋由一が有名です。もうひとつは、いわゆるマンガです。「ジャパン・パンチ」の表現は近世以来の風刺画の展開に新たな刺激を与え、「ポンチ絵」として多くの追従者が生まれました。本章では、弟子たちの作品やポンチ絵などの関連作を紹介します。



Ⅰ 航海―ロンドン発 紅海経由 香港・広東行




Ⅱ 港ヨコハマ


Ⅲ 海を越えた技術、海を越えた弟子たち



「ワーグマンが見た海―洋の東西を結んだ画家―」展

2011年は、日本の文明開化に大きな影響を与えた英国人報道画家、チャールズ・ワーグマンCharles Wirgman(1832-91)が来日してちょうど150年目にあたります。この節目を記念して、彼が見た世界と幕末明治の日本の姿、そして彼が日本に伝え広がった様々な技術や思想を、関連する作品や資料なども交えながらご紹介したいと思います。1832年、イギリスに生まれたワーグマンは、25歳の時、同国で発行されていた新聞『イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ』の外国特派員となります。地中海、紅海を経て、当時の中国に赴き、アロー戦争を取材し、多くの絵を同紙に掲載しました。その後、1861年、文久元年、開国間もない当時の日本を欧州へ紹介すべく来日しました。横浜に住まいを定め、同紙に挿絵や記事を提供するほか、風刺誌『ジャパン・パンチ』を発刊し、報道画家として活躍しました。また、慶応元年(1865)には近代日本洋画界の先駆けとなった五姓田義松が、そして翌年には高橋由一が入門し、彼らに西洋絵画技術を伝えたことでも知られます。その意味では、まさに近代日本美術史の幕開けの年でもあります。本特別展では、今回の準備段階で新たに発見されたワーグマンの作と考えられる作例を初公開いたします。それらは多くが幕末明治の日本を描いたものであると考えられ、貴重な記録でもあります。報道画家・ジャーナリストとしての厳しい一面、ユーモアあふれる漫画家としての一面、あるいは指導者など多様な側面をもつワーグマンは、幕末明治という変革の時代ならではの存在でしょう。ワーグマンの多面的な活動を通して、胎動する近代日本を感じて頂きたいと思います。

「神奈川県立歴史博物館」ホームページ


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チャールズ・ワーグマン来日150周年記念

「ワーグマンが見た海―洋の東西を結んだ画家―」展

図録

編集・発行:

神奈川県立歴史博物館




とんとん・にっき-yoko1 「ワーグマンが見た海」展

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