スペインのクラシック音楽(ロマン派・国民楽派)について色々思っていた事 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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スペインのクラシック音楽については、以前から色々と思う事があって、

それについて今回書いてみようと思います。


まず、19世紀のスペインのクラシック音楽については、

アルベニスが登場する辺りまでは不毛だった、ないし、停滞していた、

みたいな話を何かで見た様な記憶があります。


もしかしたら記憶違いなのかも知れませんが、

もし記憶が正しければ、その文章を書いた人は、

只知らなかっただけという事になります。

少なくとも、「アリアーガがもし長生きしていたら、

スペインクラシック音楽界を大きく発展させたかも知れない」

みたいなニュアンスだった様な気がします。


19世紀、ないし、19~20世紀に活躍したスペインの作曲家で

まともに知られているのは、

・フアン・クリソストモ・ハコボ・アントニオ・デ・アリアーガ・イ・バルソーラ

Juan Crisóstomo Jacobo Antonio de Arriaga y Balzola(1806-1826)

・パブロ・マルティン・メリトン・デ・サラサーテ・イ・ナバスクエス

Pablo Martín Melitón de Sarasate y Navascuéz(1844-1908)

・イサーク・マヌエル・フランシスコ・アルベニス・イ・パスクアル

Isaac Manuel Francisco Albéniz y Pascual(1860-1909)

・エンリケ・フェルナンデス・アルボス

Enrique Fernandez Arbos(1863-1939)

・エンリク・グラナドス・イ・カンピニャ(エンリケ・グラナドス・イ・カンピニャ)

Enric Granados i Campiña(Enrique Granados y Campiña)(1867-1916)

くらいでしょうね(印象主義的傾向の作曲家やギター曲の作曲家は除く)。




で、その代わり、

外国人による『スペイン国民楽派的な作品』が有名だったりします。

・ミハイル・イヴァーノヴィチ・グリンカ

Михаил Иванович Глинка(1804-1857)

スペイン序曲第1番『ホタ・アラゴネーサ』(1845)

Испанская увертюра №1 “Арагонская хота”

スペイン序曲第2番『マドリードの夏の夜の思い出』(1848/1851)

Испанская увертюра №2 “Воспоминания о летней ночи в Мадриде”

・ヴィクトール・アントワーヌ・エドゥアール・ラロ

Victor Antoine Édouard Lalo(1823-1892)

『スペイン交響曲』(1874)

Symphonie espagnole

・ジョルジュ・ビゼー

Georges Bizet(1838-1875)

歌劇『カルメン』(1875)

Opéra “Carmen”

・アレクスィ=エマニュエル・シャブリエ

Alexis-Emmanuel Chabrier(1841-1894)

狂詩曲『スペイン』(1883)

España, rapsodie pour orchestre

・ニコライ・アンドレイェヴィチ・リムスキー=コルサコフ

Николай Андреевич Римский-Корсаков(1844-1908)

『スペイン奇想曲』(1887)

Каприччио на испанские темы

※19世紀限定




そこでふと疑問に思ったのは、

ロマン派時代のスペインの作曲家の数が、

こんなに少ないわけが無い筈、というものでした。

で、後日、後述する様に、その“直感”が正しい事を知りました。




スペインには、歌劇の一種である『サルスエラ』(zarzuela)があり、

調べてみると、19世紀にも数多くその作曲家がいますけど、

クラシック音楽的にはどう見られているのだろうか?

吹奏楽の作曲家みたいに、

ちょっと距離を置いた様な扱われ方をしている気が

するのですが・・・(気のせい?)。

素人の私には、学問的にはよく分からないので。

民族的なメロディも使用されたりしているので、

一種の国民楽派と呼べそうな気もするんですが。




スペインのクラシック音楽史についてよく調べている人なら、

・フェリペ・ペドレル(フェリプ・ペドレイ・イ・サバテー)

Felipe Pedrell(Felip Pedrell i Sabaté)(1841-1922)

の名は最低限知っている筈です。

彼は、「スペイン国民音楽の父」と呼ばれている作曲家です。

しかし、最初疑問に思ったのは、

グラナドスやマヌエル・デ・ファリャ(Manuel de Falla)

等といった有名作曲家を育てた事や、

音楽理論家・学者としてはよく知られているらしい事は分かったものの、

肝心の作品については?だったのです。

フィンランドの作曲家、マッティン・ヴェゲリウス(Martin Wegelius)と、

何だか立ち位置が似ていると思ったのです。

彼はジャン・シベリウスの教師として知られていますが、

何という曲を書いたのか、イマイチ分からなかったりします。

そういう感じでした。

話を戻します。

インターネットをやり始めてから、Wikipediaで

歌劇『ピレネーの人々』(1891)

Ópera “Els Pireneus”

等、作品が色々紹介されているのを知りました。

でも、CD化状況についてはよく分かりませんでした。

ところがその後、

『辺境・周縁のクラシック音楽1イベリア・ベネルクス編』(青弓社)

という書籍に、ペドレルについての詳細な解説が出ているのを

やっと見つけました。




今から10年程前ですが、NHKの『名曲アルバム』という番組で、

・マヌエル・ペネーリャ・モレノ

Manuel Penella Moreno(1880-1939)

という作曲家の代表作

歌劇『山猫』(1917)

Ópera “El gato montés”

を代表する『パソドブレ』(Pasodoble)が取り上げられていました。

http://www.youtube.com/watch?v=qQwWvw3uTJM

全く知らなかった作曲家ですが、

メロディが典型的なスペイン情緒溢れるもので、

無名なのはおかしいと思ったのは言うまでもありません。

グラモフォンからCDが出ていましたが、現在は残念ながら廃盤。

【Gramophon 2GH2435776】




肝心の、19世紀の、ないし、ロマン派、或いは、

国民楽派の無名スペイン作曲家

について以前調べてみた事があるのですが、

限界があって中々見つけられませんでした。

見つけられたものは、サルスエラの作曲家が多かったです。

管弦楽作品が好きなので、そういうのでCDはどんなものが出ているか、

或いは現在も手に入るCDはどれなのか調べてみた所、

やはりサルスエラの一部を取り上げたもののオムニバスが多かったです。

その手の作曲家の中でも、

・ルペルト・チャピ

Ruperto Chapí(1851-1909)

は、よく扱われている方だと思います。

彼だけを取り扱ったCDが、複数出ています。

当時のスペインの作曲家にしては珍しく

交響曲ニ短調(1880)

Sinfonía en Re menor

(※2012年7月20日現在、

Wikipedia日本語版では“ニ長調”と出ていますが、

“ニ短調”の誤りです。単に“Re”と大文字で書かれていて、

長調とも短調とも書かれていない場合が多いため、

そこから長調と勘違いしたのだと思われます。

メジャーコードは大文字で、

マイナーコードは小文字で書かれる場合が多い。)

を書いており、

以下の桃色に示す2枚のCDに共に収録されています。

【NAXOS 8.572195】

【1CM0176】

その他、

・フェデリコ・チュエカ

Federico Chueca(1846-1908)

・トマス・ブレトン

Tomás Bretón(1850-1923)

・アマデオ・ビベス(アマゼウ・ビバズ・イ・ローチ)

Amadeo Vives(Amadeu Vives i Roig)(1871-1932)

・ホセ・セラーノ

José Serrano (1873-1941)

・パブロ・ルナ

Pablo Luna(1879-1942)

・レベリアノ・ソウトゥリョ

Reveriano Soutullo(1880?,1884?-1932)

・フェデリコ・モレーノ・トローバ

Federico Moreno Torroba(1891-1982)

等も見つけました(以上は、全てCD化されている)。


前出の『辺境・周縁・・・』には、

上記に示したもの以外にも数多くの作曲家が紹介されていて、

よくぞここまで見つけられた!!と思わず感嘆してしまいました。

しかも、数がハンパではありません!!

実は、只埋もれていただけで、キラリと光る作曲家が無数にいたわけです。

長くなったので、取り敢えずここまでにします。

今回は大雑把な俯瞰という事なので、

後日個別に詳細に紹介したいと思います。




【追記】

・「グラナドス」の表記修正。

・この論文の核心部分について書き落としていたので、

文中にやや大きめの赤茶色の文字でそれを追記。

・マルティン・ヴェゲリウス → マッティン・ヴェゲリウス

名前からしてスウェーデン系と思われます。

「Martin」は、スウェーデン語で「マッティン」という発音になるようです。

・「アマデオ・ビベス」のカタルーニャ語名の日本語表記について。

アマデウ・ビベス・イ・ローチ → アマゼウ・ビバズ・イ・ローチ

Wikipedia英語版頁に、名前の発音表が出ています。

Amadeu Vives i Roig - Wikipedia, English

[əməˈðew ˈβiβəz i rɔʧ]だそうです。

カタルーニャ語の「s」は母音で挟まれると音が濁り「z」となるそうです。

つまり、「i Roig」を後続させなければ、「s」は濁りません。

カタルーニャ語の「d」は母音で挟まれると摩擦音になるそうです。

「ə」(シュワー)は曖昧母音で正確な日本語表記は不可能ですが、

便宜上「ア」とするのが通例であるため、そうしました。

「β]は、「b」の摩擦音で、敢えて言えば、「ブ」と「ヴ」の中間の様な発音?

つまり、「ヴィヴェス」と「ビベス」の両方の表記が見られますが、

どちらでも良いと思われます。

最初、「Vives」と「i」をリエゾンさせ「ビバズィ」としようとしましたが、

実際にリエゾンするのかどうかが不明な上、

発音よりも表記をやや重視し、また、

ペドレルのWikipedia日本語版頁に於けるカタルーニャ語名

「Pedrell i → ペドレイ・イ」

に倣い、「ビバズ・イ」としました。

いずれにしても、こういった煩雑さを避け、

表記重視の「アマデウ・ビベズ・イ・ローチ」

か、カスティーリャ語(標準スペイン語)由来の

「アマデオ・ビベス」を使用するのが無難と思われます。

カタルーニャ語 - Wikiepdia, 日本語

フェリペ・ペドレル - Wikipedia, 日本語




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