ヤーゼプス・ヴィートルス(Jāzeps Vītols)(2)ラトヴィアの作曲家 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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Jāzeps Vītols

(画像はWikipediaより)


やっと取り上げました。

マーケットプレイスシリーズ第5弾!!

ラトヴィア国民楽派を代表する作曲家、

ヴィートルスの唯一の管弦楽作品集CDです。


私がネットでその存在を知った時には既に廃盤で、

Amazonのマーケットプレイスでないと購入不可状態でした。

クレジットカードでのネット購入には抵抗があったため、

暫くは買えませんでしたが、

ギフト券やカード等でも購入が出来る様になったため、

買う事が出来ました。


でも、ジャケットのデザインを見てみた所、

新しく作り直したのではないか?

と疑惑を持ってしまう様なデザインでした。

元々は『Marco Polo』からリリースされていたのですが、それが、

マルコ・ポーロと『NAXOS』が合体した様なデザインなのです。

「ナクソスから新しく復刻したんじゃないの?」と思ってしまいました。

CDにも『NAXOS』って出ていますし。

しかも、解説文が出ていない!!

元は出ていたのかも知れません。


メーカーは違いますが、

『Sterling』のCDで半年以上待たされてやっと届いたCDが、

如何にもコピーか何かで新しく作り直されたのではないか?

と思わせる物でした。

疑惑止まりですけど。

それでは、早速レビューと行きます。




ヴィートルス管弦楽作品集

Jāzeps Vītols Orchestral Works

全体的な印象としては、名人芸的巧みさによる管弦楽技術や、

ロシアの作曲家が書いたのではないか?

と思わせる雰囲気を感じました。

ロシア的印象ですが、ぺテルブルク音楽院で

リムスキー=コルサコフに学んだからではないか?

と思いましたが、Wikipediaによれば、

「師リムスキー=コルサコフの影響が否定できない」と出ています。

ヤーセプス・ヴィートリス - Wikipedia

また、ラトヴィアは1918年までロシア領だったという事も、

念頭に入れておく必要性があるかも知れません。


劇的序曲(1895)

Dramatiskā uvertīra simfoniskam orķestrim, op.2

最初聴いた時、

「ロシアの作曲家が書いた劇的な管弦楽作品っぽいな」

と思いました。

その理由は、前述の様に、

リムスキー=コルサコフからの影響があると思います。

前期の作品でもありますから、その影響は特に強かったと思います。


ラトヴィア民謡による幻想曲 - ヴァイオリンと管弦楽の為の(1908-1910)

Fantāzija par latviešu tautasdziesmu vijolei un orķestrim op.42

題名から、明らかにラトヴィア国民楽派的と分かる作品。

ヴァイオリン協奏曲の形式を採った、全3楽章の曲。

最初聴いた時、偉そうにも

「もっと際立った特徴を持った民謡を選んで欲しかった」

と思いました。

贅沢ですね(笑)。

第3楽章も当然ラトヴィア民謡なのでしょうけど、

ちょっとロシア民謡っぽい雰囲気を感じました。

まあ、ラトヴィア民謡に未だ精通していなかったからというのもあります。


でも、構成力はしっかりしている上に、管弦楽技術も巧みで、

ヴァイオリン独奏パートもそれなりに技巧性があるので、

聴き応えはあります。

特徴的なメロディは全く無いわけでは無く、例えば、

第1楽章の第2主題である感傷的メロディがとても印象的でした。


何度も聴いていく内にその魅力が分かっていく

『するめ』の様な曲かも知れません。


残念だったのは、何という民謡が用いられているのか不明なところ。

前述の様に、解説文が出ていないのです。

元は出ていたのではないか?と思います。

何という民謡なのかが分かれば、YouTubeでそのタイトルを検索して、

原曲がどうなのか聴いてみる愉しさがあります。


この曲はYouTubeに出ていませんが(今の所)、

この曲をBGMとして用いたアニメーションなら出ていました。

ラトヴィア神話に基づいた

『クルバッツのバラード』(Balāde Par Kurbadu)です。

以前にも弊ブログで紹介済みです。

クルバッツのバラード(Balāde Par Kurbadu)ラトヴィアのアニメーション

でも、そのアニメーションも、現在は削除されています。


交響詩『スプリーディーティス』(1907)

Simfoniskā poēma “Sprīdītis” op.37

劇的なメロディが、

巧みな構成力と管弦楽技術によって紡がれている曲で、

冒頭等に現われる悲歌(エレジー)風な感傷的メロディや、

途中に現われる行進曲風メロディ等が特に印象的ですが、

超絶技巧的とも言える素早く細かい音形には、

彼の技術的巧みさ感じ取る事ができるでしょう。

十数分の曲ですが、内容がとても濃く感じました。


『スプリーディーティス』というのは、

詩人で作家のアンナ・ブリガデレ(Anna Brigadere)

によって19世紀に書かれた冒険物語で、貧しい少年が、

森の中で不思議な体験をするという内容らしいです。

地元ラトヴィアでは、実写映画やアニメーションにもなっています。

Letonika.lv. Literatūras bibliotēka. Brigadere Anna

音楽からも内容が察せられる様な気にさせられる曲だと思いました。


Wikipediaラトヴィア語版頁では

『交響的舞曲』(Simfonisks dzejojums)と出ていますが、

他の言語の頁では『交響詩』と紹介されています。

よって、弊ブログでも交響詩として紹介します。


交響組曲『宝石』(1924)

Simfoniskā svīta “Dārgakmeņi”

5曲の比較的短い曲からなる組曲。

宝石を音楽で表現するという難題に挑み、

ものの見事に成功していると思います。

①アメジスト(Ametists)

上品さと優雅さ、雄大さに溢れた雰囲気です。

フルートによる伴奏が、如何にも“宝石”といった感じ?

②エメラルド(Smaragds)

優雅でほのぼのしたワルツといった感じ?

③真珠(Pērle)

エメラルドとは対照的で、躍動感に溢れています。

ちょこまかとした雰囲気が、如何にも“真珠”といった感じ?

④ルビー(Rubīns)

風雲急を告げているかの様な、緊張感のある、

素早い動きの躍動感に溢れた、

中東か中央アジア辺りを髣髴とさせる舞曲といった感じ?

⑤ダイヤモンド(Dimants)

舞踏会に於ける優雅なワルツといった感じ?

やはり『宝石』というと『上流階級』というイメージがあるので、

『舞踏会』→『ワルツ』と連想してしまうというのはあります。

全体を締める意味合いがある様で、

『アメジストの主題』も再び出てきます。

表情の幅が広く豊かな上、他の曲に比べて演奏時間も長いです。


交響的バラード『秋の歌』(1928)

Simfoniskā balāde “Rudens dziesma”

秋というと通常、

枯葉が散るとなどといった寂しい印象だと思いますけど、

この曲は、そのイメージを裏切ります。

まず嵐が舞っているかの様な、

劇的で畳み掛ける様な音形が出てきて度肝を抜かれます。

ちょっとヒーローサウンドっぽくてカッコいい?

落ち着いたメロディになっても、暗い感じではなく、

どちらかというと明るい感じ。

悲劇的な、緊張感のあるインパクトの強い表情も見せます。

それらが、巧みな管弦楽技術で紡がれています。

この曲も、スプリーディーティスと同様、内容が濃いと感じました。


ラトヴィアの秋がどういうものなのか、知りたくなりました。

日本とは大きく異なるのでしょうか?


Marco POLO 8.223756


ヤーゼプス・ヴィートルス管弦楽作品集

Jāzeps Vītols Orchestral Works

演奏:ラトヴィア国立交響楽団(Latvijas Nacionālais simfoniskais orķestris)

指揮:ドミトリー・ヤブロンスキー(Дмитрий Яблонский)

【MARCO POLO 8.223756】1995年


【追伸】

話はちょっとズレますが、

ラトヴィアで初めて交響曲を書いたのが

ヴィートルスなわけですけど、どういうわけか、

今の所未だCD化されていないのです。

これはとても不思議に思いました。

地元のローカルレーベルですら出ていないようです。

恐らくですが、LPなら出ているのかも知れません。

YouTubeに出ているので、お聴きする事をお薦めします。

http://www.youtube.com/watch?v=3vLEHGI-HBY


まあ初期作品なので、ロシア国民楽派的要素が強いですが。

マリス・ヤンソンスは、

そのクラシック音楽界に於ける強い政治力でもって、

何とかしないのでしょうか?




【追記】2012.6.20

文意を変えない程度に文章を修正。


『MARCO POLO』と『NAXOS』が合体した様なジャケットデザインや、

解説文の無い事等については、

コメント欄にてもにりくちなしさんより説明があります。


『ラトヴィア民謡による幻想曲』に使用されている民謡も、

コメント欄にてもにりくちなしさんより教えていただきました。

大変感謝しております!!

以下列記

・第一楽章

『私は山に行った』

Apkārt kalnu gāju

『闇夜、緑の草』

Tumša nakte, zaļa zāle

・第二楽章

『まもなく太陽の神の御許に』

Ej, saulīte, drīz pie Dieva

・第三楽章

『見て、二人の気取った馬乗りを』

Redz, kur jāja div' bajāri

『Gani dzina, govis māva』

※内容に「羊飼い」が含まれているのは分かりますが、

より正確な意味は不明。


【修正】2012.6.22

東洋的舞曲 → 中東か中央アジア辺りを彷彿とさせる舞曲

実は、最初に文章を書いていた当初から、

中東か中央アジア風だと思っていて、

その様に書こうと思っていたものの、言葉が思いつかなかったので、

「東洋的」と書いてしまいました。


【追記】2016.2.23

ヴィートルスの肖像写真を追加。 




【関連エントリー】

デイム・エセル・メアリ・スマイス(Dame Ethel Mary Smyth)

http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11266709845.html

ペーテリス・バリソンス(Pēteris Barisons)

http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11250154118.html

モンゴルのクラシック音楽について調べてみた

センビーン・ゴンチグソムラー(Сэмбийн Гончигсумлаа)

ビレギーン・ダムディンスレン(Билэгийн Дамдинсүрэн)

http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11253790664.html

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http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11245224491.html

アドルフ・ビアラン(Adolphe Biarent)

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スヴェインビョルン・スヴェインビョルンソン(Sveinbjörn Sveinbjörnsson)(2)

http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11231154198.html

マイナークラシック音楽紹介記事アドレス保管庫(7)

http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11231990982.html