草石のガチンコネット小説 -4ページ目

終わる世界 第13話

その後僕は本を読んで、そんなこんなで静かになったと思ったら、
田中さんは気が付いたら横になって眠っていた。
寝顔もまるで子供でとてもかわいらしく見えた。
僕も若干早いが眠ることにしよう。
田中さんにタオルケットをかぶせて電気を消した。

おやすみなさい。



翌朝、田中さんよりも僕が早く起きることになった。
少しぼーっとしていると続いて田中さんも目を覚ました。
「おはようございます」
「んん、おはよう」
田中さんは寝ぼけているのか一点を見つめて動かない。
僕はその時間はもう終わったので、
コーヒーが飲みたくなったので近くの自販機に行くことにした。
「田中さんなんかいる?飲み物。食べ物はもう少ししたらどっか食べに行こう」
「はい、あたしはココアが飲みたいです。」
「あいよ、委細承知」
そんなこんなで外に出ようと部屋の扉を開けると
ホスト風の男が立っていた。
「なにか、御用ですか?」
ああ、昨日死にかけていた人だ。
うーん、見たところ全く別状がない。
ホスト風な男は全くもって胡散臭い笑顔を作ってこう言った。
「先日騒ぎを起こしてしまって、少なからずご迷惑が及んだかと思いましたので、つまらないものですがよろしかったらと思いまして。」
と、伊勢丹の紙袋を手渡すと、丁寧にお辞儀をして部屋に戻っていった。
大丈夫なんですか?とたずねたいところであったが、
そんな暇もなくツカツカと彼は部屋に戻っていってしまったので、
会話をそれ以上続けることは出来なかった。
そして、扉の内側から田中さんが
「どうかしたんですかぁ?」
なんて話しかけてきた。
「ううん、昨日話していた人が、丁寧に」
「ああー!!それネンリンヤのバームクーヘン!!いいなぁいいなぁ!」
なにこれ、そんな有名なんだ。
「んん、飲み物買ってきたら二人で食べよう。」
そういって改めて部屋をあとにした。
自販機といってもこのあたりにはないので、
なんだかんだみどりやの近くまで行かなくてはいけない。
そう思ってアパートを出るところで、
チリンチリン音がなっっていることに気が付いた。
変だな?
いくら歩いても音が離れていかない?
足元?
あっ!!
僕のオールスターのスニーカーの靴紐に鈴が付いている!
アパートの前で気が付いた。
すると、アパートの一階のほうで扉が開く音がした。
というか、目の前で開いている。
「ふっふっふっ、悪いがサカズキ君、ちょいと鈴をつけさせてもらったよ」
川村さんは黒いメイド服に身を包みキメ顔で言った。

終わる世界 第12話

「つまり、マッドハウス、ガイナックス、シャフト、あと京アニなんかは絶対に常識的に呼吸的に知識として持っていないと話にならんよ。
わかるかな?」
川村さんはそれはもう水を得た魚のように話を進めている。
それを聞いて田中さんは「ほう」「なるほど」なんて
とてもいい相槌をしている。
川村さんのオタク度によくついていっているな、なんて思いながら僕はラジオをつける。
「しかし、この町にも四神がいたなんて驚きだな。
四神なんて素敵じゃないか…ふふ…
四神なんていったらふしぎ遊戯や、アベノ橋魔法☆商店街を思い出すよ、
どちらも大好きだ」
どちらも全然話が違うけどな。
「サカズキ君サカズキ君、今日はあたしはそろそろ失礼するさね。
そろそろ部屋に戻らなくてはいけない。
何故ならば、少し眠くなったことが一点と、
地球上の引力を考えてしまいたくなった点が二点目、
そして極めつけはあれだ、サカズキ君の部屋にはテレビがない。
その三点であたしの行動は今決定された。
とは言っても寂しくなったり、若い女の子と二人でなんだか
変な気持ちになってしまったならあたしの部屋に来るといい。
二人まとめてお相手しよう。
言っておくがあたしはバイだ。
両刀だ。
宮本武蔵よろしくの二刀流なのだよ。
では、良い夜を…」
パタン。
扉が閉まった。
代わりになんだかとてつもない扉を開いてしまった気がしないでもない。
「かっこいい…」
田中さんが目をきらきらさせて言っている。
おいおい、両刀なんて意味わかってんのか?
「まるで、愛知の星、諸星みたいですね!」
「無理に作者でつなげようとか気を使わなくていいよ!
バガボンドでいこうよっ!」
レベルたけぇよ。
そうしているうちにBAY FMが十時の時報を告げた。

終わる世界 第11話

浴衣に着替えて風呂から出るとマッサージチェアに座って牛乳を飲んでいる田中さんがいた。
そのマッサージチェア気持ちいいのかな?20円だし…
人はより大きな代償を払うことを美徳とする場合が多くて
大変な思いをすればするほどそうやって手に入れたものを大事にするそうだ。
つまり今僕が思っていることはその逆。
20円しか賭けていないのに気持ちいい訳がない。
という固定概念。
そして、あの男と鉢合わせるのも嫌なので、
まぁ、あの男はこちらの時間を合わせるように
「あと20分は入って、脱衣所で10分は涼んでいくから、
ゆっくりしていってね」
なんて言っていたが、なんかもう落ち着かないので
僕は田中さんの牛乳が飲み終わるのを待って、
それから銭湯をあとにした。
帰り道は、田中さんの周りで起きている最近の流行なんかを教えてもらいながら
(田中さん曰く次に来るのは手作りミサンガがくるらしいが、多分夕方にやっている、舘ひろしのドラマの影響だろう)
そんなこんで、アパートに着いた。
僕の部屋に戻ると、ドアノブに鈴がぶら下がっている。
僕が扉を開けると当然その鈴は鳴る。
そして、一階のほうで扉が開くような音がした。
なんだこのRPGによくありがちな流れ。
一階か?一階に行かなきゃいけないのか?
フラグがたったのか?
もちろんそんな必要はなく、階段を昇ってくる音がする。
ぎしぎし。ぎしぎし。
川村さんだ。
昇りきったところで、そこから一番奥にあたる僕の部屋にめがけながら歩いて話しかけてくる。
「やあやあ、サカズキ君。私がなぜ君たちの帰宅がわかったか
わかるかな?」
いや、
二人で話しながらきたし、川村さんの部屋の前も通ったし、
そもそも階段を昇る音でわかるだろうし、
それにこの鈴…
「万が一のために悪いが鈴を付けさせてもらったよ」
川村さんはキメ顔で言った。
外していた僕の手の中で鈴がチリンと鳴った。