終わる世界 第11話 | 草石のガチンコネット小説

終わる世界 第11話

浴衣に着替えて風呂から出るとマッサージチェアに座って牛乳を飲んでいる田中さんがいた。
そのマッサージチェア気持ちいいのかな?20円だし…
人はより大きな代償を払うことを美徳とする場合が多くて
大変な思いをすればするほどそうやって手に入れたものを大事にするそうだ。
つまり今僕が思っていることはその逆。
20円しか賭けていないのに気持ちいい訳がない。
という固定概念。
そして、あの男と鉢合わせるのも嫌なので、
まぁ、あの男はこちらの時間を合わせるように
「あと20分は入って、脱衣所で10分は涼んでいくから、
ゆっくりしていってね」
なんて言っていたが、なんかもう落ち着かないので
僕は田中さんの牛乳が飲み終わるのを待って、
それから銭湯をあとにした。
帰り道は、田中さんの周りで起きている最近の流行なんかを教えてもらいながら
(田中さん曰く次に来るのは手作りミサンガがくるらしいが、多分夕方にやっている、舘ひろしのドラマの影響だろう)
そんなこんで、アパートに着いた。
僕の部屋に戻ると、ドアノブに鈴がぶら下がっている。
僕が扉を開けると当然その鈴は鳴る。
そして、一階のほうで扉が開くような音がした。
なんだこのRPGによくありがちな流れ。
一階か?一階に行かなきゃいけないのか?
フラグがたったのか?
もちろんそんな必要はなく、階段を昇ってくる音がする。
ぎしぎし。ぎしぎし。
川村さんだ。
昇りきったところで、そこから一番奥にあたる僕の部屋にめがけながら歩いて話しかけてくる。
「やあやあ、サカズキ君。私がなぜ君たちの帰宅がわかったか
わかるかな?」
いや、
二人で話しながらきたし、川村さんの部屋の前も通ったし、
そもそも階段を昇る音でわかるだろうし、
それにこの鈴…
「万が一のために悪いが鈴を付けさせてもらったよ」
川村さんはキメ顔で言った。
外していた僕の手の中で鈴がチリンと鳴った。