kibidango 既婚・独身・不倫など様々なシチュエーションで恋愛に溺れたり憧れたり欲したりしている男女の機微を描いた短編集。


『ランチタイムをあなたと』の主人公・矢口は妻子がいるオヤジだ。
会社の近くの飲み屋で友人と飲んでいる時に知り合った広美と二年に渡り不倫関係を続けてきた。
一ヶ月前、突然「結婚するの」と告げられ困惑したものの、そろそろ潮時かもしれないという気持ちもあったので受け入れる。
広美は若く、洗練された女である。
まさか矢口が口説いてなびくとは思っていなかった。
一回の関係を持っただけで終わると思ったが、広美から連絡が入り度々会っているうちに交際がスタートし今に至っていた。
公認会計士の男との結婚を控え、最後にランチをしようと約束する二人。
約束の交差点で見た広美は、会社の制服を着たOLの広美だった。
矢口は勝手に広美を都会の遊んでいる娘と思っていたが、そうではないことが最後のランチでわかる。
そしてサヨナラを告げる時、矢口は広美の背中をみてたまらない気持ちになるのだった。


不倫する男女、浮気される妻、若い女に翻弄される男や年上の起業家に目がくらむ若い女など、著者が得意とするジャンルの物語が10編収録されている。
紹介した物語以外にも、上玉の結婚相手を見つけた若い女が結婚式の予約に訪れたホテルでの担当者は過去に不倫に講じていた時のフロントマンで様々な思いが走馬灯のように蘇り困惑する姿を描く『笑う男』など、大人の恋愛をテーマにした恋愛小説ばかりで楽しめる。
大手中古書店なら100円で買えると思うので、興味を持った方は読んでみて欲しい。
最近の新作は「・・・」なものが多いが、昔のこういった恋愛短編はワザがあり面白い。


新刊を読むのに飽きたり、忙しくて本屋へ行けてなかったりして、本棚を漁って手にしたのが本書だった。
10年前くらいに手にして読んだっきりだったが、今の年齢の方が物語の意味や面白さがわかる気がした。
昔の本を引っ張り出し読み返すのが楽しい行為だということを少し忘れていた。
次に読む本は決まっているのだが、今後また忘れた頃に本棚を漁ってみようと思った。


<祥伝社 1995年>


林 真理子
男と女のキビ団子


林 真理子
男と女のキビ団子

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shortcut 遠距離恋愛をする男女が出会い、心の隙間を埋めたり、本音を話したりする時間を淡々と描く短編集。


『やさしさ』は彼氏が遠くににいる矢野が主人公。
友人が経営するカフェの一周年記念パーティーの帰り道をちょっと気になる片野くんと歩いている。
片野くんは自転車に乗ってきていたが、矢野が歩くと言ったら一緒に途中まで歩いてくれると言う。
片野くんは映画を作りたい男で、矢野は映画部だった女だ。
映画についての熱い思いや、なんてことない会話が延々と夜の大通りで続く。
片野くんと付き合いたいとか好かれたいとか思っているんでもないが、片野くんともっと話したいと思っていた矢野はこの時間を楽しみ愛しいと思っていた。
途中、東京に居る恋人から1日1回の電話があった。
今日のこと、今のことをさらっと話電話を切る矢野。
恋人のことが頭を過ぎり、この先どうするのかを思い巡らせる。
その横で片野は東京に住む恋人の話をしたりする。
そんな夜の翌日、矢野は移動の電車の中で仕事が終わったら恋人に電話して思っていることを話そうと決めた。


以前読んだ『フルタイムライフ』と同じ様に、主人公の日常が淡々と綴られる。
主人公が居る場所や背景がくっきり浮かぶ。
主人公のせつない想いや小さな触れ合いや交流がすっと心に入ってくる。
若者らしい台詞やシチュエーションに忘れていた気持ちを思い出すようなところがある。
面白いとか最高だとかはっきりした感想は抱かないものの、読みやすく心に広がる何かがある本だ。
関西訛りがいい味を出している。
20代向けの1冊かもしれない。


<河出書房新社 2004年>


柴崎 友香
ショートカット

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friday-paris 女性ファッション誌で連載されていた人気エッセイをまとめたものが本書で、TBSのアナウンサーを退職後に渡ったパリでの日常、友との出会い、小さな旅などが詰め込まれている。

海外へ留学している人のエッセイや、海外生活者のエッセイが好きである。
だからずっと、本書を読みたいと思っていたのだが、タイミングが合わず今になってしまった雨の降る日、1日で読み終えたのだが、とても面白かった。

モノクロの写真が各ページに少しあるのだが、素敵な写真だ。
その写真と、著者の真っ直ぐな文章がミックスされてすらすらと読み進めることができる。
パリで美術を学んでいる合間の小さな日常。
それが面白いし、ステキである。
蚤の市での失敗談、美味しいデザート、サーカスとフランス、マルシェでの買い物話、友達とのあれやこれや、パリでの生活の不便さと憤りのページもあれば、パリで暮らしてよかったと思っている著者の気持ちが溢れるページもある。

『決断に迷いはなかった』から『そして、今-あとがきにかえて』までは著者の結婚、パリで根を張って暮らしていくんだという決意、将来などが描かれていて年齢の近い同じ女性として共感したり尊敬したり憧れたりする言葉がたくさん詰まっていた。
もっとパリでの生活の日記的なエッセイかと思っていたが、グルメやエンタメよりも日常的な話が多かった。
旅行気分を味わう、という気持ちで読むと物足りないかもしれない。
しかし、同年代の女性の単身「遊学」~海外での結婚までの記録だと思って読むと面白く楽しめると思う。
女性向けの1冊。

まだまだやれる、楽しいことはまだまだあるぞ、と思える本だ。
そして、遊学って素晴らしいと思った。
悪く言われることもある遊学だが、無駄は無いんだなぁと感じた。
いいなぁ、と憧れていた遊学への熱が少し戻ってきてしまった。


<小学館 2003年>


雨宮 塔子
金曜日のパリ

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私は本を読む場合に拘ることがいくつかあります。

1つ目は灯り。
蛍光灯の灯りはオレンジっぽいウォーム系にしています。

蛍光灯の白っぽい灯りの方が読みやすいのですが、雰囲気が暖かい蛍光灯のが好きです。


2つ目は椅子です。
ソファーやベッドでも読むし、カフェでも読むし電車でも読むんですが、あまり柔らかすぎない背中の高い椅子が私にはあっているようです。


3つ目は香りです。
お風呂で読む時もベッドで読む時もそうなのですが、好きな香りがしている中で読むと集中力もアップするようでページが進みます。
お風呂でお気に入りのバスソルトを使った湯船に浸かりながら読むのは至福の時です。
また、好きな香りのシャンプーで洗った髪の香りがある中でベッドに入る眠る前にする読書は最高です。

ちなみに、シャンプーはハーバルエッセンスを使っています。
ハーバルエッセンスも3種類あるんですが、黄色い色のものを好んで使っています。
私には合っているようです。
ハーバルエッセンスがまた新しくなったようなので、皆さん使ってみてはどうでしょう?


皆さんの読書の拘りはなんですか?

私は上の3つです。

読書の秋です。
好きなところで、好きな場所で、好きな香りに包まれて、この秋も読書していきたいです。

odepan 恵まれた暮らしをする専業主婦が、夫との暮らしに嫌気がさして昔の仲間と遊びはじめる。
トラブルやハプニング、ゲームの数々に酔いしれ、自分の結婚生活を悔やみ新しい世界へ足を伸ばしていく姿を描く長編小説。


主人公は裕福な環境で育った真織。
母親に背いて新しい自分とは全く違う世界で生きてきた男と結婚し、専業主婦として娘二人を育てひとだんらくしていた真織のもとへ届く昔の仲間たちからの手紙。
そこには、〝オデパンに参加して欲しい〟と記されていた。
〝オデパン〟、それは親の脛をかじると言う言葉を略したもの。
父の会社の傘下にあるグループ会社の子弟が集い自然と出来た遊ぶ会の名称だった。
〝オデパン〟の終身裁判長とされている真織にメンバーから相談が舞い込む。
日々の生活に退屈し、もやもやしていた真織の心には忘れようとしていた昔の思い出が一気に広がりはじめる。
真織は数十年ぶりに仲間たちのもとへ参じることにした。
心の通わない夫との退屈な暮らしを変えたい。
真織は再び〝オデパン〟に出入りすることで刺激を受け、新しい愛と冒険へと旅立っていく姿が描かれている。


普通の生活を送る者には想像もつかない集まりが〝オデパン〟だ。
最初から最後までリアリティに欠けると思ったのは、私が本当に庶民だからだろう。
「こんな世界もあるのかな」と思うものの、主人公を含め登場する人物の9割に共感・共鳴はできない。
主人公が夫へ不満を抱く理由も、私にとっては現実的ではない理由で納得がいかない。
鼻つまみ者の女への仕打ちなど面白いくだりもあるにはあるが、こんな設定でなくてもなぁと思うし。

読んで頂ければわかるが、遊ぶ会と表現されている〝オデパン〟の遊び方は尋常ではない。
高級ホテル、京都の豪邸・・・会場も遊び方もパーティーの内容もドレスコードも、そして〝オデパン〟の面々の暮らしっぷりも、全て想像しようにも出来ないくらいに無縁の世界なのだ。
著者が昔書いていたコバルト文庫を幼い頃に読んでいた時に思ったのと同じ感じなのだ。
これは自分とは関係無い世界の物語だ、と思うばかり。
読み続けても〝オデパン〟に染まれないままだった。
今流行りのセレブな世界なのかもしれないが、全く憧れは抱けなかった。
「有閑倶楽部」の大人版という感じがしないでもないが、あれは学生だったしマンガだから楽しかったんだなぁ、きっと。

続けて著者の近々の作品を読んだが暫く手にしないかもしれない。


<文藝春秋 2004年>


藤本 ひとみ
オデパン

kimiasu 第十八回山本周五郎賞を受賞した作品。
リストラを企業の人事部から以来され実施する会社に勤める男が出会う、様々なリストラ候補生たち。
様々な人間とのドラマが生まれるその酷な仕事と恋愛を織り交ぜた娯楽小説。


主人公・真介は33歳。

日本ヒューマンリアクトという会社の会社員だ。
企業の人員削減を手伝っていると言えば柔らかく聞こえるが、要はクビ切り候補の社員と面談し、早期退職を促すのが仕事だ。
本当に会社に不利益を及ぼしているオッサンもいれば、役立っているものの他部署とのバランスの為にクビ候補になる女もいるし、会社が統合されたことで負け組になってしまった人もいる。
様々な企業へ行き面接を行う日々。
その中で気の強いタイプの女・陽子と出会う。
かなり強引に攻めて、陽子と付き合い始めた。
気の合う彼女が出来ようと、毎日仕事がある。
恋に溺れる暇はない。
時には残酷に、時には紳士的に、面接をこなしていく。
偶然出会った同級生との面談など、神経をすり減らす業務も少なくない。
しかし、こんな仕事にやりがいを見出している自分もいる。
そんな真介の日常に恋やビジネスを絡めて描く。


想像したよりも恋愛寄りだったり、性描写が多かったりしてちょっと拍子抜けした部分もあるが、トータルしたら合格点。
面白い小説だった。
このご時世、よく耳にするもののその実状を知らない「リストラ」のリアルな世界を垣間見ることが出来るし、働く者への問いかけのようなくだりもある。
耳が痛い部分もあるし、自分に自信を持てる部分もあるし、衿を正して明日から真面目に仕事に取り組もうと思わせてくれる部分もある。
ビジネス7割、恋愛3割。
真介が主人公だが、恋人の陽子やリストラ対象者たちの側からの章もあり飽きることなく読むことができる。
これから就職する人、サラリーマン、OL、転職を考える人、仕事にやりがいを見出せない人などが読むと現状を改めて見直し何か答えが見えてくるかもしれない1冊。


<新潮社 2005年>


垣根 涼介
君たちに明日はない

raimugi 『ライ麦畑でつかまえて』の主人公・コールフィールド君が好きな著者。
小説の中でコールフィールド君が歩いたニューヨークを、コールフィールド君を思いながら歩き綴ったエッセイ+イラスト集。


行きの飛行機、JFKからのイエローキャブ、横断歩道での歩き方、文具店でのあれこれ、ホットドック売りのプエルトリカンのオヤジ、五番街からソーホーまで歩き回って感じたこと、思ったことを語りまくる。
時々コールフィールド君に話し掛けたり、思いにふけったりしながらの旅行記は面白い。
海外旅行に慣れていない著者の素直な視点がいいところを突いていて、エッセイがイキイキとしている。


『ニューヨークのホテル』でニューヨークのホテルの古さについて語っている。
それなりのグレードのホテルでも、広いが古く、決して豪華とは言いがたいのだ。
窓を開けたら隣のホテルの壁だったとか、そんなことはしょっちゅうである。
フロントの対応ものんびりとしていて、日本のホテルと比較したら苛々してしまうだけなのだが、どうしても比較してしまうものだ。
また、NYの水質の悪さも著者の書くとおり。
お金がありあまっていたら、マイケル・ジャクソンのようにエビアンを沸かしてお風呂に入るのがベストだろう。
私がNYへ旅行をした際に感じた様々なことを思い出させてくれた。


著者のイラストがいい味を出していて、エッセイに輝きを与える。
わかりやすいんだか、信じていいんだか、クスッと笑えるイラストでほのぼのしてくる。
NYにまた行きたいなぁと思わせてくれた1冊。
原田宗典ファン以外の人も楽しめると思う。
私もファンではないが、楽しめたので。


<朝日出版社 2000年>


原田 宗典
ハラダ発ライ麦畑経由ニューヨーク行

sayonarakotatu 若いカップル、独身女性、老人、同性愛カップルとその父親・・・
マンション、アパート、一軒家など、みんなどこかの家に暮らしている。
私が好んで読む小冊子「ウフ.」で連載されていた作品をまとめたもので、様々な居住環境の中で起こる日常の出来事を綴る短編集。


『ダイエットクィーン』は取り壊しが予定される築35年の古びたアパートが舞台。
郁美は泰司とそのアパートで同棲している。
アパートの住民はパキスタン出身のアジズ達や、隣の谷口家などだった。
或る日、郁美が泰司と喧嘩をしていた時のこと。
隣の谷口家の子供・マナが「居場所がないからここに来ていいか」と聞いてきた。
喧嘩の真っ最中に、マナはそう言って部屋にするりと入ってきた。
郁美が「なにかあったのか」と聞くと、「お母さんのところに男の人が来てるから」とさらりと答えた。
隣の家は夫婦ものだとばかり思っていたが、その夫婦に見える男女が本当に夫婦かどうかなど知らなかったので驚いた。
思い出してみると、週に二度程大きな声を上げている事があったので同情し、マナの来訪を受け入れた。
マナはそれから時々やってきては時間を潰していった。
郁美はバイトとダンスの練習で忙しく殆ど家に居ないが、泰司は何もしないでゴロゴロしているのである。
泰司一人が居る家に、マナは訪れ泰司と話をしたりラーメンを食べたりしていた。
とうとうアパートが取り壊されることが決まり、アジズがカレーを振舞ってくれることになった。
そこには当然マナも居たが、なぜかマナの母親もやってきたのだ。
アパートの住人が沢山集いカレーを食べる。
そしてその後、数日の間にみんなこのアパートを去りバラバラと散っていくのだ。
小学生のマナと関わり始めた数ヶ月の間、マナはどんどん成長していった。
郁美はマナの引っ越していく姿を見送る時、訳のわからない胸騒ぎに襲われたけれど、マナを黙って見送った。


他にも、レズビアンのカップルがいつものように帰宅すると父親が居て驚く『ハッピー・アニバーサリー』、独身女性が久々の恋愛で舞い上がる様を描く『さようなら、コタツ』など淡々とした日常の中に見え隠れするせつなさや悲しさ、喜びなどを描いた7作品が詰まっている。
物語の前にあるまえがきが面白く、著者がこの短編集を作るに至った経緯や思いがわかる。
読みやすく、インパクトは無いが心に広がる不思議なふんわりとした感覚が心地よい1冊。


<マガジンハウス 2005年>


中島 京子
さようなら、コタツ

3domeshojiki 第8回坊っちゃん文学賞大賞受賞作『三度目の正直』を単行本化の為に加筆し出版した中編2話が収録された本。
三度目の正直』の主人公は幼なじみの男女の高校生。
男のような女の子・なな子とバンドに精を出す功平。
二人は幼稚園からずっと一緒の二人はある秘密を共有していた。
それはなな子が「女の子が好き」だと言うことだった。
功平はそれを知った幼い頃から、なな子のその秘密を守り二人で居る時も触れないようにしていた。
ガールフレンドやバンド仲間と過ごしていても、なな子から相談依頼のメールがくれば駆けつけてしまうのは「女の子が好き」という発言の衝撃が未だに心にあるからだった。
修学旅行等の行事を休むなな子。
女の子が居るとどぎまぎしてしまい不安定になるのでクラスメートともうまく会話が出来ない。
変わり者として過ごしてきたなな子の前に、普通に接してくる女生徒が登場しなな子が少しずつ変わってくる。
功平も気が気じゃない。
高校生の悩む姿、せつない思い、幼なじみとしてお互いを思いやる姿を綴る。

高校生が主人公の作品は最近避けていたのだが、友人に借りたので読んでみた。
同性愛やちょっと変わった高校生が主人公といった作品が昨今多いが、刺激が強いものが目立った気がする。
しかし本作は同性愛という難しい題材を扱いながらも、サラリとしていて変な読後感もなくよかった。
ただ、面白いか否かと言われると非常に微妙で「・・・・。」という感じなのだ。
男女の友情を描きながらも、心の中の状態で表現するならば男と男の友情に近いという複雑な設定だし、そういう作品を好むタイプでもないので可も無く不可も無くという印象でしかない。
同性愛にしてはサラリとしている物語だし、淡々としている部分が読みやすいのかもしれないが物足りなさが目立つ。
若い作家なので今後を期待したい。

<マガジンハウス 2004年>


浅井 柑
三度目の正直

FOXY / 宇佐美游

テーマ:

foxy 北海道から上京してきたモデル志望の女は、モデルクラブに騙されて一文無しになり途方に暮れる。
お金のために働きはじめた銀座のクラブは想像を絶する世界だった。
少しずつ銀座の女として地に足をつけていく過程と、頂点を前に崩れ出す経過を描く長編作品。


主人公・千華はモデルになりたくて北海道から上京した。
母親から貰ったなけなしのお金と自分の貯金をモデルクラブに預け、意気揚揚と東京生活をスタートさせた。
しかし、そのモデルクラブは詐欺集団でまんまとお金を騙し取られ残金は10万になってしまう。
背に腹はかえられないと時給のいい銀座のバニーガールの面接に向かうものの、夜の街の独特な雰囲気と刺々しい視線に負けてしまう千華。
偶然知り合った氏家の誘いにのり、『ゼビリア』というクラブで働き始める。
意地悪なホステス達の中で、ナンバーワンの繭子だけが千華の味方だった。
繭子の家に居候しながらのホステス修業が始まった。
予想より忙しいホステス生活に慣れた頃、まだ捨てていなかったモデルへの夢へ思いを馳せ、大手モデル事務所のスクールへ通うお金を用立てなければと考える。
繭子の指導の下、客からお金をせびり始める千華。
繭子と居れば、何をしていても怖くなかった。
千華は先の不安など全く感じないまま、繭子の客からご馳走されプレゼントされ、自分の客からも小金をせしめ、少しずつ銀座の女に染まっていく。
お金に目処がつきモデル事務所に入りオーディションを受け、いくつかのトラブルを乗り越えようやく大きな仕事にありつけた。
銀座からも足を洗い、繭子とも決別した千華。
このままきっと昇りつめたいと願う。

しかし、現実はそんなに甘くなく少しずつ足場が揺れはじめる。
独立した繭子、金をせしめた客・・・様々な事から追われる千華。
そして、千華は繭子の生き方を想い、自分の生き方を再考する。


銀座のホステスの経験もある著者が描く水商売の世界はドロドロしていて、ドラマで見るようなキレイゴトは全く含まれていなかった。
男と女の欲望がぶつかりあい、駆け引きを繰り返し、戦いがはびこる世界を描いている。
同僚ホステスからの嫌がらせ、裏切り、落とし込みなどが次々に起こる。
そんな中で、田舎者とバカにされていた主人公が銀座の女として独り立ちしていく姿は勇ましいというか痛々しいというか。
次々にトラブルが起き面白い展開があるので一気に読めるのだが、読んだ後に心に残るものは何1つない娯楽小説だった


<文芸春秋 2005年>


宇佐美 游
FOXY