shortcut 遠距離恋愛をする男女が出会い、心の隙間を埋めたり、本音を話したりする時間を淡々と描く短編集。


『やさしさ』は彼氏が遠くににいる矢野が主人公。
友人が経営するカフェの一周年記念パーティーの帰り道をちょっと気になる片野くんと歩いている。
片野くんは自転車に乗ってきていたが、矢野が歩くと言ったら一緒に途中まで歩いてくれると言う。
片野くんは映画を作りたい男で、矢野は映画部だった女だ。
映画についての熱い思いや、なんてことない会話が延々と夜の大通りで続く。
片野くんと付き合いたいとか好かれたいとか思っているんでもないが、片野くんともっと話したいと思っていた矢野はこの時間を楽しみ愛しいと思っていた。
途中、東京に居る恋人から1日1回の電話があった。
今日のこと、今のことをさらっと話電話を切る矢野。
恋人のことが頭を過ぎり、この先どうするのかを思い巡らせる。
その横で片野は東京に住む恋人の話をしたりする。
そんな夜の翌日、矢野は移動の電車の中で仕事が終わったら恋人に電話して思っていることを話そうと決めた。


以前読んだ『フルタイムライフ』と同じ様に、主人公の日常が淡々と綴られる。
主人公が居る場所や背景がくっきり浮かぶ。
主人公のせつない想いや小さな触れ合いや交流がすっと心に入ってくる。
若者らしい台詞やシチュエーションに忘れていた気持ちを思い出すようなところがある。
面白いとか最高だとかはっきりした感想は抱かないものの、読みやすく心に広がる何かがある本だ。
関西訛りがいい味を出している。
20代向けの1冊かもしれない。


<河出書房新社 2004年>


柴崎 友香
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