odepan 恵まれた暮らしをする専業主婦が、夫との暮らしに嫌気がさして昔の仲間と遊びはじめる。
トラブルやハプニング、ゲームの数々に酔いしれ、自分の結婚生活を悔やみ新しい世界へ足を伸ばしていく姿を描く長編小説。


主人公は裕福な環境で育った真織。
母親に背いて新しい自分とは全く違う世界で生きてきた男と結婚し、専業主婦として娘二人を育てひとだんらくしていた真織のもとへ届く昔の仲間たちからの手紙。
そこには、〝オデパンに参加して欲しい〟と記されていた。
〝オデパン〟、それは親の脛をかじると言う言葉を略したもの。
父の会社の傘下にあるグループ会社の子弟が集い自然と出来た遊ぶ会の名称だった。
〝オデパン〟の終身裁判長とされている真織にメンバーから相談が舞い込む。
日々の生活に退屈し、もやもやしていた真織の心には忘れようとしていた昔の思い出が一気に広がりはじめる。
真織は数十年ぶりに仲間たちのもとへ参じることにした。
心の通わない夫との退屈な暮らしを変えたい。
真織は再び〝オデパン〟に出入りすることで刺激を受け、新しい愛と冒険へと旅立っていく姿が描かれている。


普通の生活を送る者には想像もつかない集まりが〝オデパン〟だ。
最初から最後までリアリティに欠けると思ったのは、私が本当に庶民だからだろう。
「こんな世界もあるのかな」と思うものの、主人公を含め登場する人物の9割に共感・共鳴はできない。
主人公が夫へ不満を抱く理由も、私にとっては現実的ではない理由で納得がいかない。
鼻つまみ者の女への仕打ちなど面白いくだりもあるにはあるが、こんな設定でなくてもなぁと思うし。

読んで頂ければわかるが、遊ぶ会と表現されている〝オデパン〟の遊び方は尋常ではない。
高級ホテル、京都の豪邸・・・会場も遊び方もパーティーの内容もドレスコードも、そして〝オデパン〟の面々の暮らしっぷりも、全て想像しようにも出来ないくらいに無縁の世界なのだ。
著者が昔書いていたコバルト文庫を幼い頃に読んでいた時に思ったのと同じ感じなのだ。
これは自分とは関係無い世界の物語だ、と思うばかり。
読み続けても〝オデパン〟に染まれないままだった。
今流行りのセレブな世界なのかもしれないが、全く憧れは抱けなかった。
「有閑倶楽部」の大人版という感じがしないでもないが、あれは学生だったしマンガだから楽しかったんだなぁ、きっと。

続けて著者の近々の作品を読んだが暫く手にしないかもしれない。


<文藝春秋 2004年>


藤本 ひとみ
オデパン