akkojidaimariko 80年代・バブルの時代に有り余る金と力を持つ男と知り合い、次々と虜にして伝説となった女「アッコ」。
自由奔放にバブルの東京を生きる女たちと、若くて美しい女に翻弄される男たちを描く。
伝説の女性「アッコ」の現在と当時を振り返る長編小説。
ちなみに、この「アッコ」という女性は実在する人物だそうだ。


主人公・厚子は40歳。
別居中の夫・五十嵐との間には俊太という息子が一人いる。
下馬の実家で両親と息子と暮らしながら、夜の街へもカムバックした厚子。
その厚子は、昔「アッコ」と呼ばれ週刊誌を賑わせた伝説の女だったのだ。
バブルの時代、名の通った短大に通いながら美しい友達と一緒に夜の街を練り歩いた。
男はいくらでも寄ってきたし、自分のお金なんて使わないで遊ぶこともできた。
美しい厚子の周りには惜しみなく金を遣える男が溢れていた。
有名大在学中の彼氏・高志が居ながら、先輩の母親・邦子の愛人だった地上げ王・早川といつのまにか愛人関係を結んでしまった厚子。
邦子の嫌がらせの一環で週刊誌に厚子と早川のことを売られてしまい、厚子は一躍時の人となる。
悪女、魔性の女などと好き勝手に書かれ、親からも見離された状態になってしまう。
厚子は早川と暮らし始めるが、周りの女たちのように海外へ行ってあれこれとブランド品を買ってもらう訳でもなく、都心の高級マンションを買い与えられる訳でもなく、付き合う前とは一転しお金を遣われない日々が続いていた。
自分だけが損をしていると感じはじめ、この生活は何かが違うと別離する。
昔付き合っていた高志と会ってみたり、遊び仲間だった女友達と過ごしたりするものの、世の中のバブル景気の波に乗れていないことに口惜しくなる。
もっと楽しみたい、もっと得をしたいと思う厚子の前に現れたのは西麻布の有名イタリアンレストランの御曹司・五十嵐だった。
妻も子もある五十嵐との交際に二の足を踏んでいたものの、早川とは違い羽振りのいい五十嵐に嵌ってしまい「1年の期限付きで付き合う」ことにする。
憧れていたファーストクラスで行く海外旅行、高級ホテルでの暮らしなどを経験するものの、物足りない気持ちになる厚子。
また高志と付き合いはじめるが五十嵐にバレてしまう。
そして、厚子は五十嵐の子を妊娠していることに気付き結婚することになる。
こっそり暮らしていたのに、妻の策略か世間にまた騒がれることとなる厚子。
それでも息子を産み、今に至っている。
女性作家からその当時の話を聞きたいと取材を受け、対応し回想する形で物語りは進んでいく。
厚子の幸せとは何なのか。
厚子は女としてどうやって生きていくのかを描く。


最初から最後まで著者らしい物語だった。
最後の締めくくり方も著者らしいなぁと思った。
『ロストワールド』でも描いていたが、バブルの時代を生き抜いた女性の現在というのが、著者は好きなのかもしれない。
『ロストワールド』とはまた違うタイプの女性が主人公で舞台も違っているが読み比べるのも楽しいだろう。
ただ、著者のストーリー展開など全てが物足りなく、もう少し深い作品を読みたいなというのが正直なところ。
以前の名作たちと比べて、浅い気がする。



<新潮社 2005年>


林 真理子
アッコちゃんの時代