100love 年収200万のSF小説の翻訳とライターを生業とする男と、その4倍の年収のエリート銀行員の女がひょんなことから知り合い結婚するが、その結婚生活は決して穏やかな幸せに包まれてはいなかった。
フリーライターで収入は低いがきちんと家事をこなし身の回りを整えて暮らす男。
仕事をバリバリやり豪華なマンションに暮らし流行のスーツを着こなすが仕事以外のことは出来ない女。
NHKでドラマ化もされた、一見不釣合いな二人の山あり谷ありな結婚・出産・子育て生活を男性の視点で描く長編小説。


主人公・真一はしがないフリーライターだ。
好きなSF小説の翻訳で生計を立てたいが、それだけでは食っていけないのでビジネス関連誌でライターのようなこともしている。
或る日請け負った仕事は信託銀行でバリバリ働く女性のインタビューというものだった。
気乗りしないまま向かったそこで出会った梨香子は、ちょっと年上の才色兼備を兼ね揃えた女性だった。
飛行機の話で盛り上がってしまい、とんとん拍子でセスナデートをし、結婚に至る。
決してカッコいいとは言えないルックスで周りの女性ライター達から「三低」と呼ばれている真一が、なぜこんな美人でキャリアウーマンな梨香子と結婚したのか、真一自信もあまりのスピード婚に驚いていた。
一緒に暮らし始めて知ったのは、梨香子に家事能力が一切ないことだった。
掃除・洗濯・料理など、普通ならば女性が結婚したらするであろう家事一切を放棄し、仕事に邁進している。
結局自宅で仕事をし、時間の余裕がある真一が家事をこなすことになってしまう。
何の労いもない上に、仕事で苛々すれば当たり散らされ、責めれば逆上し、残業だ出張だと落ち着かない梨香子にとうとう我慢の限界を感じた真一は離婚を申し出ようとする。
しかし、気付けば妊娠4ヶ月。
離婚どころではなく、落ち着かない日々が続く。
梨香子は結局臨月まで産休を取らずに仕事に没頭する。
自宅で2人過ごすものの、噛み合わない。
梨香子の周りには選ばれし男が揃い、真一は不安を覚える。
合間に仕事をこなしながら、自分を保ち家庭を守り夫婦関係を築く努力をする真一。
しかし、その努力空しく喧嘩、苛立ち、我慢、家事…
その連続に離婚を考えまくる真一だったが、生まれた子供は自分そっくりの赤ちゃんでまたしても気持ちに変化が生じる。

未婚ライターたちからの非難や嫉妬や叱責、既婚者の男だちの助言やアドバイスなどリアルで読んでいてウムウムと頷いてしまうことが沢山あった。
また、結婚してから知る相手の一面に辟易する瞬間や、男はやはり女が家事をして家庭を守るものだとどこかで思っていることやそれが望ましいのだと信じて止まないことなども生々しく、結婚生活を送る私には琴線に触れるものがあった。
真一が綴る結婚・出産にまつわるメルマガの下りは男性の本音を垣間見ることができ面白かった。
一人がいいと思えるのは、二人だからである。
一人より二人がいいよ、ということを改めて教えてくれる1冊


<朝日文庫 2003年>

篠田 節子
百年の恋 (文庫本)



篠田 節子
百年の恋 (単行本)