夢見るトレイシー / トレイシー・ウルマン
YOU BROKE MY HEART IN 17 PLACES / TRACEY ULLMAN
①BREAKAWAY ブレイクアウェイ
②LONG LIVE LOVE 愛はいつまでも
③SHATTERED 誓いのブロークン・ハート
④OH WHAT A NIGHT 今夜は最高!
⑤(LIFE IS A ROCK) BUT THE RADIO ROLLED ME ラジオでロックン・ロール
⑥MOVE OVER DARLING そっと抱きしめて
⑦BOBBY'S GIRL ボビーに首ったけ
⑧THEY DON'T KNOW 夢みるトレイシー
⑨(I'M ALWAYS TOUCHED BY YOUR) PRESENCE DEAR 浮気な彼氏
⑩YOU BROKE MY HEART IN 17 PLACES 街角ハートブレイク
⑪I CLOSE MY EYES AND COUNT TO TEN 瞳を閉じてワン・トゥ・スリー
⑫DANCING IN THE DARK ダンシング・イン・ザ・ダーク (ボーナス・トラック)
⑬B-SIDE Bサイド (ボーナス・トラック)
⑭MOVE OVER DARLING (EXTENDED VERSION) そっと抱きしめて (エクステンデッド・ヴァージョン)(ボーナス・トラック)
⑮MY GUY マイ・ガイ (ボーナス・トラック)
⑯THINKING OF RUNNING AWAY シンキング・オブ・ランニング・アウェイ (ボーナス・トラック)
本日紹介するのは、1983年のトレイシー・ウルマンのアルバム「夢見るトレイシー」です。
彼女の本業は女優なのですが、残念ながら女優としての彼女は観たことありません。
最近では「アリー・マイ・ラブ」なんかにも出演してるそうなんですが、観てないし全く興味なし、です。
このアルバムが、彼女の歌手としてのデビュー・アルバムになります。
これが実に(・∀・)イイ!!
ほとんどが、オールディーズのヒット曲のカヴァーなのですが、とってもキュートでガーリーなポップスを聴かせてくれます。
中でもお薦めは、おニャン子クラブ(爆)の「セーラー服を脱がさないで」(爆)の元歌wである①、
シングル・ヒットした⑧、アルバムタイトルの⑩です。
また、⑤は60~70年代のヒット曲のタイトルやアーティスト名を機関銃のように早口で並べ立てて面白いです。
もうね、こうしたゴキゲンなポップナンバーを前にアルバム・コンセプトがどうのとか、時代がどうのとか、歌詞がどうのとかを語ること自体無意味に思えてくるくらい、手放しで楽しめるアルバムです。
最近では、彼女のベスト・アルバムがいろんなレーベルから出ており、そちらのほうが収録曲が多くて曲単価が安くてお得です。
なお、この収録曲目は、最近発売された紙ジャケ・リマスター・リイシューのものを参照しています。
I CLOSE MY EYES AND COUNT TO TEN
IT'S THE WAY YOU MAKE ME FEEL
THE MOMENT I AM CLOSE TO YOU
IT'S A FEELING SO UNREAL
THE POUNDING I FEEL IN MY HEART
THE HOPING THAT WE'LL NEVER PART
I CAN'T BELIEVE THIS IS REALLY HAPPENING TO ME
I CLOSE MY EYES AND COUNT TO TEN
AND WHEN I OPEN THEM YOU'RE STILL THERE
ナイロン・カーテン / ビリー・ジョエル
THE NYLON CURTAIN / BILLY JOEL
①ALLENTOWN アレンタウン
②LAURA ローラ
③PRESSURE プレッシャー
④GOODNIGHT SAIGON グッドナイト・サイゴン ~英雄達の鎮魂歌(レクイエム)
⑤SHE'S RIGHT ON TIME シーズ・ライト・オン・タイム
⑥A ROOM OF OUR OWN ふたりだけのルーム
⑦SURPRISES サプライズ
⑧SCANDINAVIAN SKIES スカンジナヴィアン・スカイ
⑨WHERE'S THE ORCHESTRA ? オーケストラは何処へ?
本日紹介するのは、1982年のビリー・ジョエルのアルバム「ナイロン・カーテン」です。
アメリカのポップ・シーンにおいて、70年代後半から80年代前半というのは、ビリー・ジョエルの時代でした。
ストーリー性のある優れた詩を、AOR(死語w)を機軸としたポップなわかりやすいフォーマットでピアノを弾きながら歌う彼は、まさに「ピアノの詩人」でした。
「オネスティ」「ストレンジャー」「ピアノ・マン」「ニュー・ヨークの想い」など、彼を知らない人も、一度は彼の曲を聴いたことがあると思います。
人気・実力共に絶頂期にあった1982年にリリースされたのがこの問題作「ナイロン・カーテン」でした。
収録曲は、社会問題にスポットを当てたヘヴィなものや、内省的な歌詞が多く見られ、ラヴソングは影を潜めています。
当時の多くのファンが戸惑ったと思います。
アーティストが社会問題を扱うと、ファンは必ず戸惑うのですw
「ナイロン・カーテン」とは、透けて見える透明のカーテンです。
経済的に豊かな人は、カーテンをかけるけど、貧しい人はカーテンすら買うことが出来ないからオープンな暮らしだけれども心は豊かだ、だから経済的に豊かになってもナイロンのカーテンをかけるくらいのオープンで心豊かな人間になるべきだ、という意味がタイトルにはこめられている、とビリー・ジョエルの大ファンだった当時の友達はアツく語ってました。
今では彼の部屋にはナイロン・カーテンがかけられているのでしょうか。
また、アルバム・ジャケットに描かれている駐車場つき一戸建ての同じ家が並ぶイラストというのは、豊かになった個性のない社会を表しているのかもしれません。
①は廃れていく工業都市を歌っています。
景気の悪い現実が歌われ、
「この町で暮らすのはますます困難になっていく でも僕らはここアレンタウンに住んでいる」
という歌詞で締めくくられます。
それでも希望を持って頑張ろう、という意味なのか、諦めて耐えるしかない、という意味なのか、わかりかねますが、おそらく後者のほうだと思います。
ヘヴィな歌ですが、メロディが良く、しかも淡々と歌われているので悲痛さを感じさせません。
③は精神的に未熟な人物を歌っていますが、それは何かを暗喩しているようです。
「顔に傷ひとつない君は、プレッシャーには勝てない」
「君の人生はタイム・マガジンだ 僕も読んでるよ」
などと意味深ですが、ノリのいいキャッチーな曲なので、歌詞の内容を理解しなくても楽しめます。
④は間違いなくこのアルバムのハイライトです。
タイトルから分かるようにこれはベトナム戦争の歌です。
75年の戦争終結以降、アメリカ人の多くが、この忌まわしい戦争を一日も早く忘れたい、と考えていました。
ベトナム戦争を総括するとか、戦争責任を追及する、といった声は上がりませんでした。
そんなみんなが忘れたいと思っていたベトナム戦争のツケを一身に浴びることになったのがベトナム帰還兵で、マスコミが関心を集めたのが、彼らの社会復帰の問題でした。
そのことがアメリカにベトナム戦争は忘れたくても忘れられない、ということを自覚させるのです。
70年代後半から80年代中頃にかけて、ベトナム戦争(及びベトナム帰還兵)に関する映画や曲が作られるようになりましたが、この曲もそうした流れがあったからこそ生まれた曲なのかも知れません。
イントロのヘリコプターの音は、まるで映画「地獄の黙示録」のオープニングようです。
「誰が間違っていたのか? 誰が正しかったのか? 戦いの真っ只中ではそんなことは関係ない」
「僕らはみんな一緒に死んでいくのだ」
生々しく刺激的で絶望的なこの曲は、ヘリコプターの音がフェードアウトして終わります。
ヘリコプターは、待っていた彼らを救出するのではなく、死体搬送のものだったのです。
このアルバムの日本盤にはビリー・ジョエル本人によるアルバム収録曲に対するコメントが記載されてますが、とりわけこの曲のコメントは長文です。
アルバムは静かでムーディーな⑨で幕を閉じます。
「カーテンコールの後でカーテンは誰もいない客席の前に降りてくる」
その他、このアルバムにはビートルズを彷彿させるような②や⑦⑧があります。
ビリー・ジョエル自身が「このアルバムは僕にとってのサージェント・ペパー だ」と言ってるように、曲作りにおいてビートルズを意識していたのかも知れません。
或いは、社会的内容の問題作、という自覚がそうしたことを言わせたのかもわかりません。
ここにはサージェント・ペパーのような難解さはありません。
ビリー・ジョエルはアルバム毎にスタイルを変え、ファンを楽しませてくれるのですが、その中でもこのアルバムは特に毛色が違うように思います。
そんな鬼っ子アルバムですが、オレにとっては80年代の名作のひとつです。
グッドナイト・サイゴン ~英雄達の鎮魂歌(レクイエム)
パリス島で僕らは親友になった
そして収容所から同じ囚人として別れた
僕らはナイフのように研ぎ澄まされていた
命を投げ捨てるには僕らはあまりに若かった
僕らは景色を撮るカメラもなく
ハッシのパイプを回しドアーズのテープを聴いた
夜になるとあたりは真っ暗闇だった
僕らはまるで兄弟のようにお互いにすがりあった
そして母親たちに手紙を書くと約束した
僕らはみんな一緒に死んでいくのだ
トリニティ・セッション / カウボーイ・ジャンキーズ
THE TRINITY SESSION / COWBOY JUNKIES
①MINING FOR GOLD マイニング・フォー・ゴールド
②MISGUIDED ANGEL ミスガイデッド・エンジェル
③BLUE MOON REVISITED (Song for Elvis) ブルー・ムーン・リヴィジテッド (エルヴィスに捧ぐ)
④I DON'T GET IT アイ・ドント・ゲット・イット
⑤I'M SO LONESOME I COULD CRY 泣きたいほどの寂しさだ
⑥TO LOVE IS TO BURY トゥ・ラヴ・イズ・トゥ・ベリー
⑦200 MORE MILES 200 モア・マイルズ
⑧DREAMING MY DREAM WITH YOU 夢を夢見て
⑨WORKING ON A BUILDING ワーキング・オン・ア・ビルディング
⑩SWEET JANE スウィート・ジェーン
⑪POSTCARD BLUES ポストカード・ブルース
⑫WALKING AFTER MIDNIGHT ウォーキング・アフター・ミッドナイト
本日紹介するのは、1989年のカウボーイ・ジャンキーズのアルバム「トリニティ・セッション」です。
カナダ出身のこのバンドは、ヴォーカル(女性)・ギター・ベース・ドラム、の4人から成ります。
彼らは「ロック・バンド」の範疇に入ると思いますが、ここで聴けるサウンドはおそらく誰もロックとは呼ばないでしょう。
ここでの彼らの音楽は、カントリーやブルースの影響を受けた、というよりも、カントリーとブルースそのものです。とりわけカントリー色が強いです。
物憂げで叙情感たっぷりの哀愁溢れるアコースティックなスローナンバーばかりで、聴いていて何ともいえない気分になるアルバムです。
このアルバムは教会でライヴ録音されたものです。
といってもコンサートではなく、あくまで教会をアルバム録音の場所として使用したということで、当然、拍手や歓声などはありません。
ライヴ録音のせいか、歌や演奏の隙間の空間の静寂さが際立ち、かすかにかかるエコーが寂しげなこのアルバムの雰囲気を強調させているように聴こえます。
ちなみにその教会がトリニティという名前だったので、「トリニティ・セッション」です。
そのまんまです。
アルバムは、オリジナルの新曲と、カヴァー曲、そしてトラディショナル・ソングで構成されています。
また、曲によってはセッション・ミュージシャンによるアコーディオンやハーモニカ、スティール・ギターなどがフィーチャーされていて、それがより一層の哀感を誘う効果を出しています。
①はトラディショナル・ソングですが、ア・カペラです。
粉塵が肺にたまって命が尽きようとしている炭鉱夫の歌です。
のっけから寂しくなります。
③は、オリジナル曲に、エルヴィスの「ブルー・ムーン」が挿入されています。
間奏の寂しげなギターが心に残ります。
⑤は、偉大なるカントリーの「神様」ハンク・ウィリアムスのカヴァーです。
タイトル通り泣きたくなるほど寂しい名曲です。
⑩はヴェルヴェット・アンダーグラウンド(!)のカヴァーです。
このアルバムは、夜、一人でしんみりと聴くことをお奨めします。
癒される、とか、リラックスする、といった表現が陳腐に聞こえてしまうような、心からこみ上げてくる、そこはかとない味わい深さがこのアルバムにはあります。
泣きたいほどの寂しさだ
寂しい夜鷹の鳴き声が聞こえる
飛べそうもないくらい悲しい鳴き声
夜汽車の低い汽笛の音
寂しくて泣きたくなる
音もなく流れる星が紫色の夜空を一瞬照らす
あなたは今頃どこにいるのだろう
寂しくて泣きたくなる