雲の階段 第5話 「偽りの結婚式・・・母の涙に決死の心肺蘇生」 | 日々のダダ漏れ

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日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

雲の階段

第5話
偽りの結婚式・・・
母の涙に決死の心肺蘇生


人は、一度きりの人生の中で、
肉体的に、生まれ変わることは、不可能だ。
過去の自分も、今の自分も、自分は、自分
でしかない。たとえ、偽物でも。
俺の人生は、今、ここにしかない。

空気を入れ替えるように、人の人生も、
変わることがあるのだとしたら。
これが、そのときだったのだろう。

覚悟は、していたはずだった。
今、ここにいるのは、
過去の自分が選んだ、自分なのだ。

あの頃も、ああいう連中が、
よく遊びにきていた。
ああいう連中を見るたび、虫唾が走った。

生きていた・・・
そのとき、俺は、心の片隅で、
確かに思ったのだ。
どうせなら、死んでいてくれたら。

**********

三郎) もう一度、
    考え直した方がいいかもしれないね。
亜希子) 何を?
三郎) 僕たちの結婚。
    君は・・・僕のことどんな人間だと思ってる?
亜希子) どんなって。
三郎) いや、考えなくてもいい。
    君には到底想像もでき・・・
亜希子) ねえ、どうして?
三郎) だから考えなくていいって。
亜希子) どうしてそんなこと言うの?
    人間の本性なんて、誰にもわからないわ。
    たとえ親子でも、夫婦でも、兄弟も友達も。
    あたしのまわりはみんな仮面をつけて生き
    てる。人間なんてそんなもんだって、子供
    の頃から、
あたしにはわかってた。
    でも、あなたは違った。
だって、あの島で会
    ったあなたには、嘘が
見えなかったから。
    そう思わせてくれたから。
三郎) 亜希子さん、僕は、僕は・・・
亜希子) それは! それは、今、あたしが聴かな
     きゃいけないことですか? 知らなくては
     いけないことですか? 
あなたに会えなか
     ったら・・・あたしは死んでた。
お願い。
     お願いします。一人にしないでください。
     あたしを一人にしないでください。
     怖いの。怖いんです。

雲の階段(5)

**********

三郎) 僕はもう、あの島には、帰りません。
    あの島には、僕の居場所はもう・・・
    ないですから。


雲の階段(5)

高岡) 結婚するつもりなの? あのご令嬢と。
    どうすんだ? 結婚した後、君が無資格医
    だってバレたら。ただじゃすまないぞ。
三郎) それは、バレなければ、いいんです。

**********

三郎) 人生が、変わるんだ。
    でも、そのためには、母さんにも、乗り越え
    てもらわなきゃいけないことが、ある。
向こ
    うの家族も、俺のこと、医者だと思ってる。
喜美枝) まさか。
三郎) そういうことだから。
喜美枝) え?
三郎) 騙すつもりなんかなかったんだ。
喜美枝) 騙すつもりってどういうこと?
三郎) なりゆきでさ。
喜美枝) ダメよ。そんな道理、通るわけがない。
三郎) 誰に何か言われても、息子とはずっと
    れて暮らしてたから、よくわからない、
よく
    知らないって、それで通してくれればいい
    からさ。
それでいいから!
    美琴島っていう、医者不足の、過疎の島で、
    で、診療所の医療事務をしてた。でもそこ
    で、所長に見込まれて、外来の診察をした
    り、オペの手伝いをするようになって、島で
    は、若先生なんて、呼ばれるまでになれた。
    人のために、なれたんだ。こんな俺でもさ、
    人を助けられるんだよ。

**********

喜美枝) ずーっと、考えてた。あんたに、一体何
     を言えばいいのか。
はあ・・・もう後戻り、
     できないんだろ?
三郎) 絶対、母さんに、迷惑は・・・
喜美枝) あんたはニセ医者だ。だったら、絶対に
     人を死なせちゃダメだ。人殺しにはなるな。
     もし、もしも、そういう事に巻き込まれたら、
     どんなに無様でもいい。逃げ出しなさい。
     逃げてきなさい。母さんが、守ってやる。

雲の階段(5)

**********

雲の階段(5)

その時はまだ、わからなかった。
彼女が何を考え、
そして、何について考えるのを、
やめてしまったのか。


**********

実に、不思議な男だと思う。なんだろう、彼の女を
惹きつける魅力というか魔力は。原作は知らない
けれど、たぶん、長谷川博己のもつ、何かがそう
思わせるのだろうと思う。いわゆる、ダメな男にも
見えない。弱くもみえない。ズルくもみえない。女
たらしにもみえない。そう、彼は無味無臭なのだ。
男の匂いがしない。少女漫画の中の男性のよう。
生身の男性の生生しさを感じないというか、それ
ゆえに、女が彼を勝手に庇護するというか、守り
たくなってしまう。女が勝手に甘やかし、守りたい
と思わせる男性なのだと思う。「三郎」という男は。

母は、「どんなに無様でもいい。逃げ出しなさい。
逃げてきなさい。母さんが、守ってあげる」と言う。
そう、そんな風に、女に愛される、愛されてしまう
男なんだよね、彼は。話は相変わらず滅茶苦茶
でも、「三郎」という不思議な男には、リアリティが
あって、やっぱり目が離せないのでありました。



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