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Kierkegaard

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その10

朝陽が波間にきらめく、ウミネコ?本当にネコの鳴き声みたい、波の音が耳に心地よい。

キョーコの瞼がふるふると震えゆっくりと開けられる、目の前に映るのは暖かい広い蓮の胸だ。

トクン、トクン、これは心臓の音、わたしは狩人に追われているけど、蓮が守ってくれる。

そして私も蓮を守りたい。

「ん、キョーコ、目が覚めたの」

「お、おはようございます、蓮」

「おはよう、キョーコ」

互いの唇が重なる、窓から差し込む柔らかで暖かな陽の光をあびキョーコの髪が柔らかに揺れ、二人を包み込む。

「少しは、元気になったみたいだね」

「うん」

「着替えてごはんよりも、甲板でに出て陽の光を浴びよう」

「ありがとう蓮」

それは平和で束の間の休息の時間だったのかもしれない。
波の音、ウミネコの鳴き声、陽の光、二人を包む美しい世界・・・

「キョーコ、もうすぐ着くから準備しろ」

「あ、お兄ちゃん、もう着くの?」

「あと1時間ぐらいで港に着く、それから飛行機と船を乗り継いで夕方までには大丈夫だろう」

「そんなに遠いところにお母さんがいるの?」

「ああ、そうじゃないとお母さんを守れない、それに俺たちも」

フェリーが港に着く、だが、彼らを待ち受けたのは狩人の集団だった。

「教授そろそろフェリーが港に着きます」

「そうか、手筈の方はどうなっている」

「ゲートの方に配置しています、おそらく車で移動するでしょうし」

「乗降客の出口すべてに配置しろ、失敗は許されないんだ」

「わかりました、ですが、人数がそこまでは、」

「アレは、わしの追い求めてきたすべてだ、金で間に合うなら何とかするんだ」

「はい」

フェリーが港に接岸する、キョーコは何故か不安に襲われ体を震わす。

「どうしたの?」

「悪い予感がするの、怖い」

「大丈夫だから」

蓮は、キョーコを抱きしめる、不安が消えるように、だが、蓮にも感が伝えるのだ、用心しろと。

蓮は尚と奏恵に相談する、二手に分かれ下船する手筈をとる、用心に越したことはない。

下船まで時間は僅かだ、狩人は手ぐすね引いて待っている、獲物を・・・

続く  その12  へ

(追記)
絵のサイズを修正ともくじと各話の1話のリンクを修正しました。
本当に申し訳ありませんでした。
雪に埋もれて反省してきます。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。