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Kierkegaard


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星の宇宙(うみ)を船に乗って漕ぎ出そう、
目指す先は、・・・

「尚兄さん?」
「キョーコ、体、大丈夫か?」
「うん、さっきよりずいぶん楽に、・・・」
「無理するな、お前は俺たちより弱いんだから」

蓮の腕の中にすっぽり収まるキョーコが、尚の問いにコクンと頷く。

「お前が小さい頃にみた炎は、博士が温室を焼いたんだ。俺たちを狩る狩人が現れたから」
「あの人たちみたいな?」
「そうだ、俺たちはこの地球(ほし)にとっては、危険な存在だから」
「どうして?」
「異分子だからだ」
「異分子?」
「バタフライエフェクトのように、植物の世界に波紋を広げ、それは人への脅威になる」
「わからない、わからない、お母さんは燃えてしまったの」
「体は焼き尽くされた・・・」
「ひ、ひどい、ひどい、ひどい」
「落ち着け、キョーコ!母さんは生きてるっていったろう」
「どこにいるの」
「連れて行くって言ったろう?兄ちゃんがこれまで、キョーコに嘘ついたことがあるか?」
「ううん」
「母さんは、休眠した状態で、俺たちが生まれた場所で、帰りを待っているんだ」
「生まれた場所って、あの場所ではないの?」
「違う、海がきれいで、古い大きな木があって、ヒトが踏み入れない聖域にいる」
「聖域?」
「今晩はぐっすり眠るんだ」

キョーコを抱いて、隣の客室に蓮は向かった。
波の音が子守唄で、月の光はキョーコに日の光ほどでなくても力を与える。
白い白い月が浮かんでいたそんな夜だった。

二人は抱き合い、朝を待つ、お日様の光を。
影が重なる、月夜に浮かび上がる白い肌、長い髪の毛が揺れる、手が、唇が重なる、想いもまた重なる。
「蓮、蓮ー」
「キョーコ」

T大学生物工学部・・研究室

「教授、どうするんですか?」
「彼らの行き先など検討がついている、至急、ここへ連絡を」
「ここは、どういうことなんですか、教授」

狩人は、獲物を見つけたら決してあきらめない。
追い詰め、屠るのだ。

続く その11