ご訪問ありがとうございます。
子猫が外に、肩が寂しくなったので、ノラさんを乗っけてみた、重かった、彼の体重は5kgだということを忘れていた。
んで逃げられた、寂しい、寒い、旦那がいうのだ、「情が移るからだめ!」、助けられてからずーと膝や肩、頭にいたのに・・・・

Kierkegaard
その前の話 その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7 その8

私が見たあの炎は何だったの、赤い、赤い炎、燃える緑色・・・

キョーコは、彼らの中で一番体が弱いのだ。

日光を十分に浴びないと、体が弱ってしまうのだ。

ワンボックスに乗り込んで、蓮の腕の中でキョーコは青ざめた顔で目を閉じている。

白くほっそりとした体、今は黒となった長い髪が、弱弱しく蓮に巻き付いている。

「キョーコ、大丈夫?」

「蓮、だ、大丈夫、心配しないで」

蓮の呼びかけを受けて、キョーコの白い手が蓮の頬に触れる、冷たいと蓮は思った。

彼は自分の両の掌で彼女の冷たい手を優しく包み込み、息を吹きかける、でも、彼女の手は徐々に冷えて行く。

研究室でキョーコは、力を放出しすぎたのだ。

「キョーコ、大丈夫か、もう少しだけ我慢してくれ」

尚は、制限速度ぎりぎりまで車のスピードを上げる、車は首都高を抜け、フェリー乗り場に、予約済みだったのでスムーズに乗船できた。

「キョーコ、目を覚まして」

甲板の潮風を受け、空からお日様の光が二人を包んでいる。

キョーコの瞼がゆっくりと開けられ、目の前に海が、越冬にきたゆりかもめが飛んでいる。

「海、初めて見た」

「そうなの?」

「私たちは、追われているから、どこにも行ったことがないの、きれい、あ、これが汐の匂い」

「本当だ、キョーコの髪から汐の匂いがする」

蓮は、長い髪をそっと自分の口元に寄せて口づける、キョーコの好きな柔らかで甘やかな微笑を向けるのだ。

ブランケットに二人はくるまり、陽が落ちるまで、優しい言葉を交わして、そっと抱き合い、飽きることなく海を見つめるのだ。

「お母さんは、生きている・・・」

「僕も一緒だから、安心して」

海に沈む夕日を見つめた後、蓮はキョーコを抱き上げ、尚たちの待つ一等客室へ向かった。

続く その10  へ