「よかったさがし」

ふっと幸せな気持ちにしてくれる「よかった」はまわりにたくさん転がっている。
それを見落とさない感性を養うために日々感じ、考え、学ぶことを怠ってはいけない。
その日がどうなるかは自分次第。

トランプ氏が第45 代アメリカ合衆国大統領に就任した翌日の1 月21 日、アメリカ各地で大規模なウィメンズマーチ(女性の行進)がおこなわれた。マイノリティや女性を蔑視する発言を繰り返してきたトランプ大統領に抗議の声を届けようという目的だ。その波は国外にも広がり、主催者の推定では世界80 カ国・670 カ所で470 万人を超える参加者が路上に繰り出したと言われる。

 

私もフィラデルフィアのマーチに参加した。50 万人が参加したとされるワシントンDC には及ばないが、フィラデルフィアのマーチにも当初の見込みを大きく上回る5 万人が参加した。あとからニュースで見てみると、街の中心部のローガン広場から映画『ロッキー』で有名な階段のあるフィラデルフィア美術館までの1.6 キロが人で埋め尽くされていた。

 

ベンジャミンフランクリンパークウェイが人で一杯になった。正面がフィラデルフィア美術館。

 

マーチを終えて一息ついたところで「どうだった?」と日本の友人からのメッセージ。私は迷わず「楽しかった!」と答えた。そう、とっても楽しかったのだ。そして元気になった。

 

マーチには私のように学校や職場の仲間と参加している人もいれば、子連れやカップルもいた。若い人も多かった。参加している人の多くが自作のプラカードを持参していた。「Love Trumps Hate(愛は憎しみをこえる)」のような定番のものもあれば、60 年代のウーマン・リブ運動に参加していた女性の「まだ『これ』に反対しないといけないなんて信じられない!」などといったものもあった。主催者の演説の中で印象に残ったのは、1911 年に女性の参政権を求めるアメリカで最初の屋外集会がおこなわれたのも、ここフィラデルフィアだったということだ。かつての女性の勇気を無駄にしてはいけないとみなが感じたであろう。

 

 

トランプ大統領の誕生は、「気に入らない人たちは排除して自分たちのことだけを考えていれば国は再び強くなれるのだ」という主張が、少なくとも国民の多数に支持されたという意味で衝撃をもたらした。しかし、その主張への不支持を自分たちの言葉と行動できちんと示そうとしている人たちがいることが証明された。

 

今回アメリカのいたるところでマーチがおこなわれたように、まずは街や州のレベルで政治的な対話の場をきちんとつくっていくことが、トランプ大統領を生み出してしまったこの国の現状と向き合うということなのだと思う。今回のマーチはそのはじまりに過ぎない。

 

声をあげても意味がないという人もいる。そのような人には言いたい。「声を届けるための必要条件は声を上げることなのだ」と。

 

大学の仲間やスタッフと。学部の教授の姿も見かけた。

 

(SAITAMAねっとわーく3月号 PDF版はこちらから)

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待ちに待った冬休み。グランドサークルを訪れた。グランドキャニオンに加えてモニュメントバレーやアンテロープキャニオン、デスバレーなど、この国の広大さと自然の織り成す美しさを心ゆくまで楽しんだ。ツアーの発着地のラスベガスは街全体がテーマパークのような場所。私でさえもちょっぴり浮かれた気分になり、カジノでルーレットに挑戦してみた。

 

アンテロープキャニオン

 

旅の終盤、『地球の歩き方・ラスベガス』に小さく「核実験博物館」なるものが紹介されているのを見つけた。すっかり忘れていた! 1951 年から1992 年にかけて計928 回もの核実験が行われたネバダ核実験場(NTS) は、ラスベガスのあるこのネバダ州に位置するのだ。

 

夜も眠ることのないラスベガスの街

 

迷わず足を運んだ博物館は非常に面白かった。きらびやかなラスベガスの繁栄の背景のひとつにNTS の繁栄があることを実感した。1950 年代からNTS には莫大なお金が費やされ、それに伴う経済効果はラスベガスに発展と人口増加をもたらした。観光効果も大きかった。大気圏内での核実験が許されていた1962 年以前は実験のたびにラスベガスまで揺れが伝わり市内からもキノコ雲を見ることができた。これがアトラクションとなり観光客を呼んだ。キノコ雲をあしらったおみやげも大量に売られていたとか。

 

ギフトショップでみつけたポストカード。左はミス原爆コンテストの様子。

 

展示では、NTS は民主主義と自由を守るためにあるというメッセージがきわめてスマートに貫かれていた。核兵器が第二次世界大戦の終結をもたらし、冷戦時代には抑止力として「Hot War(武力衝突)」を回避し共産主義の脅威から民主主義を救ったというところまでは予想通りだった。しかしそこからさらにNTS が核兵器の近代化に果たした役割についての展示が続く。核兵器の近代化は破壊力を高めるだけだと思われがちだが、従来の「重くて汚染度の高い」核兵器に対して「小型でよりクリーンな」核兵器が開発できるようになったとの説明があった。反核運動についてもきちんととりあげ、しかしそこですかさず「核兵器に関しては賛否両論あるがその両方を表現する自由を守るためにも核兵器が必要なのだ」と語るNTS 関係者のインタビューが流れる。放射線のリスクについては、核実験がもたらした環境汚染と人体への影響を踏まえてNTS での活動が本当に必要だったのかと問いかける識者の意見が紹介されたあとに「科学の前進にリスクはつきものだ」とのコメントがあった。NTS では核兵器以外にもテロ対策に関わる訓練や航空宇宙学に関する実験が多く行われてきた。終盤の展示はそれらを紹介し、最後のパネルは「冷戦時代と同じように、NTS はアメリカ国民の安全と安心を守るために今後も邁進していく」と締めくくられていた。

 

館内には史料に加えて模型やミニシアターなどがあり、小さいなりに展示の工夫がなされていた。

 

核は自由と民主主義のために必要不可欠。このメッセージとどのように向き合うのかが試されていると感じた。

 

 

(SAITAMAねっとわーく2月号 PDF版はこちらから)

 

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とある月曜日、いつものように登校してまずは事務のコートニーに挨拶をと思ったが彼女の姿が見当たらない。用事で外出かしらと思い午後にもう1 度彼女のデスクを覗いてみたがやはりいない。次の日も同じだった。コートニーが連続欠勤するなど滅多にない。教授に聞いてみると「陪審員として招集されて裁判所通いだよ」と言われた。結局彼女が戻ってきたのは翌週の火曜日。丸々6日間不在だった。


身近な人が陪審員になるのはアメリカに来て初めてのことだった。コートニーが仕事に復帰したその日、給湯室で彼女をつかまえて思わず質問攻めにしてしまった。なんとコートニー、陪審員はこれで3 回目だと言う。今回は殺人の罪に問われた被告人をめぐる刑事裁判で、12 人の陪審員のうち1 人だけ違う意見だったために裁判が長引いたらしい。アメリカでは陪審の有罪・無罪の評決には全員の一致が必要となる。今回は結局最後まで全員の意見が一致せず評決不成立(hung jury)となったという。この場合基本的には新たな陪審員が選ばれて、陪審をやり直すことになる。

 

陪審員は投票登録をしている、または運転免許を持つ18 歳以上のアメリカ人の中からランダムに選ばれる。陪審員候補者団に選ばれると郵便で案内が送られてきて裁判所で予備尋問を受ける。簡単な適性検査のようなもので、その結果「今回は結構です」となる場合もあるがそれはそれで陪審員としての役目を1 日果たしたことになるらしい。一度陪審員を務めると、その裁判にかかった時間に応じて2 日以内であれば1 年、3 日以上であれば3 年間陪審員としての義務が免責される。ちなみにコートニーは陪審員候補者団として召集されて陪審員に選ばれなかったことがないらしい。しかも30 代前半ですでに3 回陪審員をやっているコートニーってもしかしてすごいのでは?


「でも6 日も仕事を空けるってやっぱり大変だよね」と尋ねると陪審員に選ばれた従業員に対する雇用主の義務についても教えてくれた。フィラデルフィア裁判所の管轄区では陪審を理由にした解雇は違法とされている。しかし、その間の給料を支払う義務はない。ペンシルベニア大学は職員が陪審員を務める際にはその間の給料も満額で支払うそうだが、雇用主によっては無給休暇扱いにするところもあるとか。陪審員には裁判所から最初の3 日間は1 日あたり9 ドル、4 日目以降は25 ドルが支払われるが、経済的な理由で陪審員候補団として召集されても延期を要請する人は少なくないようだ。

 

コートニーは今回の裁判が評決不成立となってしまったことに少なからず失望していたが、「でも投票できる権利がある以上、きちんと陪審員の務めを果たすことは大事だと私は思っている」と言い切っていた。

 

科学技術史学部の事務室。コートニーはここで働いている。

 

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ドナルド・トランプが次期大統領に決まった。今回の選挙では、結果を左右すると言われていたフロリダ、オハイオ、ウィスコンシン、ペンシルベニアなどの州がことごとく共和党に傾き、結果は各種世論調査や専門家の予測を裏切るものとなった。


選挙翌日、キャンパスに漂う悲愴感には何とも言えないものがあった。明らかに一睡もしていない学生や教授が絶望の表情を浮かべ数秒毎に溜息をついていた。「夢であってほしい…」とあちこちから聞こえてきた。リベラル色の強いペンシルベニア大学関係者にとっては、トランプの当選、しかもペンシルベニア州が貢献しての勝利とは、まったく想定外のダブルパンチだったようだ。多くの人が感じていたのは、わが国さえよければという排他的な政策を掲げ、人権や多様性を平気で無視するような人格の持ち主をここまで多くの国民が支持したということに対する落胆と怒りであろう。

 

そのような中、私がアシスタントを務める授業で教授は学部生の目をまっすぐに見てこう言い放った。「昨晩から今日にかけて起きたことを受け入れるのは非常に苦しい。けれどもこの国はこれまでも憎しみや分裂を乗り越えてきた。これほど恵まれた場所で教育を受けているあなたたちにはこの危機を原動力にして、前に進む責務がある。政治に関わり、政策を変えなさい。活動家になって、社会を変えなさい。」

 

私は今回初めて大統領選を国内から見届ける経験をしたわけだが、教授や学生がためらわずに自分の意思を表明する文化に改めて驚いた。選挙の結果がどうあろうと、いいと思うことをいいと言い、悪いと思うことを悪いと言えることは大事だ。教育の場で選挙のことを話題にすることさえ「自由を脅かす」とされる日本とは違う。これまで市民が長い闘いの末に勝ち取ってきたさまざまな権利が再び剥奪されることがないよう、守るべき価値をきちんと主張しなければいけないという危機感がある。

 

しかし課題もある。社会の分断が今回の選挙結果を招いたと多くの人が嘆く。しかしその裏には「『私たち』の価値観をなぜ『彼ら』は理解してくれないのか」という本音がちらついているようにも感じる。この選挙からリベラルインテリ層が学ぶべきは「傾聴」なのかもしれない。選挙キャンペーン中、トランプ支持者の声に真剣に耳を傾けたクリントン支持者がどれだけいただろうか。「あの人たちは何も分かっていない」と一蹴してこなかっただろうか。この国のどこにひずみが生じているのか、異なる意見にも寄り添うことが今一番求められているのかもしれない。

 

選挙後に図書館前の広場に張り出された大きな紙。政策分野ごとにこうあってほしいという学生の声がどんどん書かれていった。

 


(SAITAMAねっとわーく12月号 PDF版はこちらから)

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今学期のはじめ、3つとらなければならない授業の3 つ目が決まらず悶々としていた。あまりとりたくない授業をとって毎週の課題が「こなさなければいけないもの」になってしまう受動的な学びのサイクルに陥るのも嫌だった。そこで思いついたのが「インディペンデントスタディ」をやること。


インディペンデントスタディとは、自分が深めたいテーマがあり、その分野の授業がどの学部にも見つからないときに、担当の教授さえみつかれば自分で授業を組み立て、単位として認められる制度である。

 

折しも先学期「ジェンダーと科学」の授業でフェミニスト論にふれ、これらの考え方が浮き彫りにする社会のパワーバランスや知識の蓄積のプロセスに非常に関心を持った。できればそれを日本のフェミニズムの変遷、また欧米と日本のフェミニスト論の比較という切り口から学んでみたいと考えた。東アジアの研究をしている学部には加野彩子先生という日本と欧米のフェミニスト論に精通していらっしゃる先生がいることも知っていた。もしかしたらこれは妙案かもしれない…このアイディアを同じくペン大の大学院で美術史と音楽民俗学を学ぶ日本人の友人2 人に持ちかけた。友人たちはなんと「え、すみちゃんやるならいっしょにやりたい!」と乗り気。

 

さっそく加野先生に連絡し、担当教授を引き受けていただいた。こうして3 人でのインディペンデントスタディが実現することに。テーマは日本のフェミニスト論。欧米と日本のフェミニスト論の基本的な流れを押さえた上で、科学史、美術史、音楽民俗学の各分野においてジェンダー研究がどのような位置づけにあるのかを探っていく、学際性を意識したカリキュラムを加野先生と相談しながらつくった。まずは3 人でディスカッションし、それを加野先生と議論、そして毎回の成果をブログを通してアウトプットしていくという授業のスタイルも自分たちで決めた。

 

それから1 カ月強。主体的につくりあげる学びは楽しい。それぞれ違う分野の知識をもとに同じ文献に向き合うと、ひとりで文献を読むのとは違う刺激がある。日本語と英語の文献を自由に行き来しながらフェミニスト論に国境があるのかどうかなどを話し合うおもしろさ、言葉のちょっとしたニュアンスからくる違いをとことん追求できる喜びもある。いっしょに学べる仲間ができたこと、それを支えてくれる教授に出会えたことに感謝である。

 

図書館のグループスタディスペースを利用してディスカッションをおこなう。先週は最終成果物についての話し合い。

 

この授業についてはブログとツイッターで発信をしています。
ブログ: japanfeministdebates.wordpress.com
Twitter:@JPfemtheoryPenn

 

(SAITAMAねっとわーく11月号 PDF版はこちらから)

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