彫刻家 岡村 光哲さん 第3回 ~金属の魅力はその「曖昧さ」にあります~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の岡村 光哲さんです。


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

岡村 光哲さん



前回登場の笠原 鉄明さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 笠原 鉄明さん 第1回  第2回  第3回  第4回  第5回   第6回  第7回



岡村 光哲さん    第1回  ~ジャコメッティの作品と、ヘンリー・ムーアとの出会い~
第2回 ~今、生きている現代を感じることが原動力~ 


第3回の今日は、制作や素材について、

岡村 光哲さんが鉄とステンレスに出会われたきっかけ/についてお聴かせ下さいました。

また、金属の魅力はその「曖昧さ」にあるということと、

作品「森の空白」が生まれたきっかけについてもお話してくださいました。


どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-wave
wave
2012年




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-sikkoku (2012)
漆黒の扉  
軟鉄 w 2000㎜
2010年以降




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-linedance

linedance
軟鉄  w 500㎜
2010年以降に制作



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-記憶ーb
記憶ーb  
ステンレス、 w2000㎜  
2005年



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-森の空白
森の空白  
ステンレス w1600㎜
1997年


「森の空白」
『無限に広がる宇宙の中で私達は地球という小さな箱の中で生まれ死に、
 そして新しい生命となる。そんな輪廻の中で、私は自分自身の存在を確かめようと
 遠い記憶をたどろうとしている。』

「作品は内側から見る世界と外から見る世界を表現したのでしょう。」
                       (岡村 光哲さんの言葉 )





日下
制作や素材についての思いということでお聴かせ頂きたいのですが、
美術を学ばれて金属を素材に選ばれたきっかけというのは何かおありだったのでしょうか?



岡村 光哲さん
私の場合はだいたい今、鉄とステンレスですけれども
一番最初に笠原さんと一緒にいたころ、塑像の粘土で制作する仕事というのはすごく好きで、
かたちを作る上で僕にぴったり来た素材だったんですけどもね。



日下
ああ、そうでしたか~。



岡村 光哲さん

ええ、その時は具象の彫刻だったんですけど、
そのうち段々「何で人体を作るのか?」という疑問から始まって来て、
それで段々、人体が崩れて抽象みたいなかたちになっていきました。


その時にちょうどその制作をしていた仕事場が東京の下町にあったんですけども、
周りがみんな金属加工の工場が多かったんです。


それで毎日毎日、家からアトリエまで通うところで作業を見ていると、
やはり金属というものを使いたいという気持ちが現れて、
最初はまあ、見様見真似で溶接の仕事を自分の制作の中に取り入れたんですね。

その時は具象と半具象の間みたいな感じで。


僕は石をやったこともあるんですけども、
若い頃、友達に連れて行ってもらって石切場を見たときに
自然の中に石がある存在感がすごく強く大き過ぎて、
僕なんかとてもじゃないけどこれに立ち向かうことは出来ないなと・・・。



日下
そうですね。採石場とかは凄く圧倒される風景ですよね。



岡村 光哲さん

それで石は僕にはかなわないなと思って、
金属の場合だと一応人の手によって加工された素材なので、
溶かす、くっつける、削る そういうものが自由に出来て、
だけど制作は石とか木とかに比べると、
言葉がちょっとおかしいかもしれないけど曖昧なところがある。


いくらでも自由に出来ることが、やっぱり自分の中で非常に性に合うというか、
ぴったり来るところがあったんですよね。



日下
そうですか。
私のイメージだと、金属というのはそれなりの道具を使わないと
誰でもが簡単に加工出来る訳ではないと思うので、
木や石に比べてかなり強い意図や意志がないと選ばない素材のような気がするのですが。



岡村 光哲さん

ああ、普通そう言いますけど、僕の中に一番なんか素直に
気持ちとしては曖昧さというか、すごく柱みたいなところがあって、



日下
曖昧さですか・・・。


岡村 光哲さん
僕は結構、作品の写真でも、割ときちっと作っているところがあるんですけど、(笑)



日下

はい!かなりきっちりしていらっしゃるのでそこはどうされているのか・・・。
私には鉄の素材での制作イメージが分からないので。



岡村 光哲さん
そこが曖昧なんですよね。
実をいうとね、曖昧の反動でそういう風になっちゃうのかなと。


自分の中で小さい時から想うんだけど、非常にぼうっとしてね、勉強もしない、
いつもぼうっとして夢想にふけっているような人間みたいだったから・・・。


その金属が素材だから、最近は直線的なものだから凄く多いので、
でもその中に必ずあの、柔らかい部分も入れているんですよ。



日下
はい、ありますね。
凄く素敵な対比ですよね。



岡村 光哲さん

その辺が仕上げ方として、ピシッとしたものになっているんだけど、
僕の中では裏腹に凄く曖昧なところが多いですよね。


その抽象の中で、あの「森の空白」というのがちょっと変わった作品になるんですけど
あの時が、形を作る上での凄く転機みたいなのがあって。



日下
そうですか。



岡村 光哲さん
でもあれも偶然というか、
作っていた作品の切れ端がいっぱいアトリエの前にたまっていましてね。
それをどうにかして表現したいなと思って、最初に作り始めたのがあのかたちだったんですね。


でもあのかたちはあれ以上、なんと言うか、進展するのが・・・。
ああいう凄く良い作品が自分の中で出来てしまったもんだから、
それ以上もそれ以下も継続していくのが凄く辛くなって
また抽象的な作品になりましたよね。



日下
はい。



岡村 光哲さん
で、なるべく金属しか出来ない表現の仕方を今でもそう思ってしてはいますけど。
石では表現出来ない、金属でしか表現出来ないものを

表現しないといけないと考えていますけどね。


日下
はい。本当に独特なというか、石をやっている者ものからすると
どんな風に制作されているのか想像がつかない感じがあります。



岡村 光哲さん
石は石自体がもう、ありますもんね。



日下
はい、なんと言いますか。
私が岡村 光哲さんの作品に感じたことは、木とか石とかだとある意味生々しい、
作家そのものの手から出てくる痕跡がすごく残せる素材でもありますけれども,
岡村さんの作品はそうではない、すごく洗練された、
手の痕跡を消しているような洗練された、
突き抜けた感じがあるなと想いました。




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-revolution-a(2012
revolution-a
軟鉄  h 500㎜
2010年以降に制作




※・・・次回は、素材の扱い方、制作手法についてのお話をお届けします。
どうぞお楽しみに。


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今回、笠原 鉄明さんのご紹介で、

初めて岡村 光哲さんのお話をお聴かせ頂きました。


私自身は金属の素材を扱った経験が極端に少ないので、
岡村 光哲さんの制作手法、素材など様々なことについて未知(無知)の状態で
インタビューさせて頂くこととなりました。


私が感動したことは、これらの様々な緊張感あるかたちを、
岡村 光哲さんはご自身の溶接技術で制作していらっしゃることでした。


また、テーマという言葉が先行してしまうことよりも
現実を見る力、ものを見る力、感じる心とか驚きなどを大切に制作に取り組んでいらっしゃるという
お話に、静かだけれども強い作家の意志を感じました。


私自身の制作を省みる言葉を頂いたようで、とってもよい刺激を頂きました。
岡村 光哲さん、ありがとうございました!


みなさまもぜひ、岡村 光哲さんの彫刻作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。・


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岡村 光哲さんのホームページ

◆岡村 光哲さんの登場するWEBページ

 ◇自由美術協会 

 http://jiyubijutsu.org/memberittai.html
 
 ◇ギャラリー KINGYO



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