彫刻家 笠原 鉄明さん 第6回~制作の思い 作品「黄金伝説」「蒼い筐」~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の笠原 鉄明さんです。

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

笠原 鉄明さん(ポートレイト)


前回登場の渡辺 忍さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 渡辺 忍さん  

第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  第6回   

 

彫刻家 笠原 鉄明さん  

 第1回  ~ 共鳴できるものを探ってみたい~
第2回 ~自分の原風景からテーマを探る~
第3回 ~ 作品制作の想い、人と人の狭間について ~作品「蒼い月」~
第4回  ~素材と制作の思い 作品「記憶のはざまに」~

第5回 ~素材と制作の想い 木の扱い方について~
第6回~制作の思い 作品「黄金伝説」「蒼い筐」~

第7回〜生きている感触の中で〜

 

 

 

第6回の今日は、手や顔をたくさん彫られた作品について、
作品制作の想いなど、作家の想いからの読み解きを、お願いしてお話頂きました。

 

どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-黄金伝説Ⅱ

黄金伝説Ⅱ
H140cm×W100cm×D95cm
樟(クス)・ステンレス・アクリル彩色・金箔
2002年

 


 

アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-頭上の月
頭上の月
H130cm×W235cm×D128cm
樟(クス)・アクリル彩色
2003年


 

アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-水に浮かぶ月

水に浮かぶ月
H180cm×W235cm×D80cm
樟(クス)・アクリル彩色
2004年


 

 

アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-蒼い筐

蒼い筐
H115cm×W115cm×D115cm
樟(クス)・アクリル彩色
2010年


 

日下
これまでのお話で、笠原さんの作品では、明と暗では、
暗の方からの表現になることが多いということでした。

 

作家さんは、本来は色々なモノ、コトは作品から感じとってほしいと
考えていらっしゃると想うのですが、
笠原さんは、本当にとても独創的な作品を作っていらっしゃるので,
これから美術を楽しんで行きたいという方に向けて、
ぜひ作品の読み解きをお聴かせ頂けたらと想うのですが
お願いできますでしょうか。

 

私は、手がたくさん出てくる作品が興味深かったです。
2002年頃から2004年の作品はかなりの数の手を表現されていますが
題名も内容も少しずつ変化しているのかなと感じました。

 


笠原 鉄明さん
この頃はいろいろな事があって、とても悩んだりしていて、
なんとかしたい、なんとかしてほしいという思いがありました。

 

みんなさまざまな思いで悩みながら、一生懸命生きてるわけですよね。
なんだかうまくいかない、いろいろな思いもありながら
とにかく今この場で一生懸命生きている、
そういう事を伝えたいということで手を作ってみました。

 

だから手がもっと、この倍でも、3倍でもあったら面白いなと思って。

 

これも最初の頃は、人体をたくさん作ったらおもしろいだろうなと思っていましたが、
手の表情で伝わるものもありますよね。

 

そういう人間があえいでいるようなもの、伝わるものをかたちにしたらこうなるのかなと。
希望であったり、絶望であったり、いろんな思いを感じながら、
生きているのかな、「生きてみようよ」というような感じです。

 


日下
そういう想いはとっても強く伝わって来る作品ですね。

 


笠原 鉄明さん
「水に浮かぶ月」なんかもそうなんですけど
それを自分の思いと重ねながら作りました。
自分の中でもいろんな多様な思考があったり、
いろんな思い、ものの捉え方、考え方をしているわけですよね。
一人の人間だって、これだけ多様化しているんだよという複雑さみたいなものを、
一つの世界に入れこんで作れたら面白いなと。

 

そしてそれでもなにか必死になって生きているというような、
そういう自分の心に照らしながら、見せられたらいいなと思いまして。

 

「青い筐(はこ)」が何もない空間に一つだけ置いてあるわけです。
六面体のどこの面にも顔が見えるということなんです。

 

この顔は一人の人間で、同じ顔でも眼を閉じたのも開けたのもありますが、
一つの世界だけじゃなく、いろんな思いがあって生きているという感じを
出して見れたらいいなと思って、作ってみたんですが。

 


日下
とっても深く強いイメージだと想います。
お話くださって、ありがとうございます。

 

一方、手の作品で「黄金伝説」というものは千手観音みたいですが
人間の方から求めていこうとしているようにも・・・。

 


笠原 鉄明さん
人間の方からなんとか助けてもらいたいと(笑)、
向こうから助けてもらうんじゃなくて。
もうこちらから精いっぱい手を差し伸べたいという。

 

これはね「黄金伝説」(おうごんでんせつ)ではなく
「黄金伝説」(こがねでんせつ)と言うです。

 


日下
あっ、「黄金伝説」(こがねでんせつ)というんですか。

 


笠原 鉄明さん
以前沖縄の島のドキュメント番組で、
そこに住んでいるおばあちゃんが話していたんですけれども西方浄土なんです。

太陽が海に沈むわずかの間、空と海面が黄金に輝きます。

 

その時に、願いごとや感謝の気持ちを伝えると叶うという伝説があるんですね。
その話がすごく気にいっていて、
「黄金伝説」(こがねでんせつ)って付けたんですけども。

 

人間ってだれもが幸せになりたいと思うんですね。
必死になっていると思うんです。

 

それをその伝説と重ねて、
よし、これで手をいっぱい作ってみようと思いました。

 

本数から言うと一本の手が一人の人間だと考えると、47、48本だったかな、
そういうものをつくってみたら説得力があるんじゃないかなと思い作ったのですが。

 


日下
ええ。48本というのは「頭上の月」でしょうか。

 


笠原 鉄明さん
ええ、本数が47か8か・・・。そのぐらいです。

 

昔から日本人は自分の心を映す鏡として月をよくたとえにしています。
そういう気持ちもあって。
そのイメージを重ねて作って見たんですけれども。

 


日下
ああ~、素晴らしいですね~(感動)
すごいですよね。これだけの手を作られるのは凄い・・・。

 


笠原 鉄明さん
そうですね、これ結構かかりましたね。
さすがにしばらく手は作りたくなくて(笑)

 

直径55センチぐらい、長さ2メーターぐらいの丸太を2本半位使いました。

 


日下
うわぁ~、そうですか~。

 


笠原 鉄明さん
出来るだけ木を貼りあわせないで、
一本の木で一つの手を曲がるにしろなんにしろ、使ってやってみたんです。

 

結構材木も本数もかかりましたし時間もかかり過ぎたので、
これはやはり思い入れが強い作品になりました。

 


日下
そういう、笠原さんがかけたエネルギーの分だけ
伝えるエネルギーも強い作品ですよね。

 


笠原 鉄明さん
そうだといいんですけれど。
なかなか上手くいかなくて。伝わりにくかったかも知れません。

 


日下
本当にエネルギッシュに、着実に制作していらっしゃるのですね。
素晴らしいと想います。
とっても貴重なお話をありがとうございました。

 

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-光さす彼方へ
光さす彼方へ
H223cm×W90cm×D90cm
樟(クス)・アクリル彩色
2011年

 

 

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今回、渡辺 忍さんのご紹介で
初めて、笠原 鉄明さんをさせて頂きました。

 

私は、以前、国画会展を見ていた時に笠原 鉄明さんの作品を拝見していました。
ご自身の肖像なのかな、と想像されるような人物像が
生活の一場面を切り取ったようなプレゼンテーションで印象に残っていました。

 

今回、お話をお聞かせ頂いて、それが笠原 鉄明さんの
自分がそこに介在したものがあるという捉え方をして制作をされたい
という想いから来ていたのだと分かりました。

 

笠原 鉄明さんは、本当に真摯な姿勢で制作をなさっていて
作品を作ったご自身のお気持ちと鑑賞者のお気持ちが
お互い接するものがあれば面白いな、と仰っていたのが
印象に残りました。

 

皆さまも笠原 鉄明さんの作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。


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◆笠原 鉄明さんの展覧会情報

 

◇笠原 鉄明さん 個展
  2014年9月15日(月)~20日(土)
 
GALERIE SOL 
 
 東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル6F

  笠原 鉄明さんHPの展覧会案内

 

 

◆笠原 鉄明さんの登場するWEBページ

 ◇国画会 
 

うしく現代美術展公式ホームページ

 (笠原 鉄明さんは第2,3回展にご出品されました。)

 

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