彫刻家 笠原 鉄明さん 第1回目  ~ 共鳴できるものを探ってみたい~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の笠原 鉄明さんです。

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

笠原 鉄明さん(ポートレイト)


前回登場の渡辺 忍さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 渡辺 忍さん  

第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  第6回   

 

 

彫刻家 笠原鉄明さん

 第1回  ~ 共鳴できるものを探ってみたい~
第2回 ~自分の原風景からテーマを探る~
第3回 ~ 作品制作の想い、人と人の狭間について ~作品「蒼い月」~
第4回  ~素材と制作の思い 作品「記憶のはざまに」~

第5回 ~素材と制作の想い 木の扱い方について~
第6回~制作の思い 作品「黄金伝説」「蒼い筐」~

第7回〜生きている感触の中で〜

 

 

第1回の今日は、笠原 鉄明さんが彫刻の制作を始めたきっかけについて
お話をお聴かせ頂きました。

富山県ご出身の笠原 鉄明さんが
どんな風に彫刻を志し、東京に出てきて師と出会われたのかをお話下さいました。

どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


************************


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
伝説の森
H195cm×W320cm×D140cm
樟(クス)・アクリル彩色・金箔
1990年

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-晴れた日

晴れた日
H160cm×W215cm×D130cm
樟(クス)・アクリル彩色
1994年

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-記憶のはざまに

記憶のはざまに
H180cm(5体)
樟(クス)・鉄・銅線・真鍮線・アクリル彩色
1999年

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-記憶の1

記憶のはざまに

(5体のうちの1点)

 

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-楽園へ
楽園へ
H120cm(6体)
樟(クス)・アクリル彩色
2001年

 

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-楽園へ1

楽園へ

(6体のうちの2点)

 



日下
制作をはじめたきっかけについてお聴かせ頂けますでしょうか。

 


笠原 鉄明さん
僕は、初めは彫刻家を目指していたわけではないんです。

富山県には木彫工芸の盛んな井波町がありまして、
今は南砺市となっているんですが。

 


日下
あの井波欄間で有名な。

 


笠原 鉄明さん
はい。そうです。
欄間とか、社寺彫刻、あるいはお祭りの時に使う山車の彫刻を作るのが、
今でも盛んな町なんです。

 

そこが近くでもあり、すごく興味があって、
最初の頃は木彫り職人になろうと思っていたんですよ。

 

そこには、いろんな工房がたくさんあるんですけども、
基本として5年間の修行期間を工房で木彫を学び、
10年ぐらいしてから自分でお店を持つという形だったんですね。

 

そこで工房に入門したのですが、しばらく修行しているうちに
やっぱりもう少し本格的に彫刻を勉強してみたいと思いました。
そして、5年の修行が終わり、二十歳になったので東京に出て来ました。

 

太平洋美術学校で彫刻の基礎を学び、
彫刻とは何なのかという本質的なものをさぐりたいと思っていました。

 


日下
笠原さんが通われた太平洋美術学校というのは、明治時代に
作家さんたちが立ちあげた随分由緒ある学校だったのですね。

 


笠原 鉄明さん
はい、昔はそうだったんです。
今は学校ではなくて研究所というかたちになっていて、
絵画や彫刻の指導をしています。

 

そこに2、3年いたんですが
その頃自分の中で彫刻がわからなくなり、悩んでいました。
その時に国画会の鈴木実先生にお会いして、
先生のアトリエに個人的に弟子として通わせて頂いたんです。
その1年後位から国画会に出品し始めて、今日にいたっています。

 


日下
ああ、そうでしたか~。
彫刻に進まれることについて、ご家族の方々はいかがでしたでしょうか。

 


笠原 鉄明さん
いや、彫刻をやること自体反対でしたね。
田舎にいるときは実家が近かったので、家族は安心できたと思います。
でもまだ若いんだし、これからまだ何かやれるかもしれない、
本当に彫刻家になりたい、ということで上京しました。

 

東京に出てくること自体、あまり賛成してもらえなくて・・・。
でも最後には、応援して下さる方もいて、東京に出てくることが出来ました。

 


日下
私は、そんな風に東京に出てくるということを自分では経験していないので
笠原さんはすごい決心と行動をされて素晴らしいと想いました。


 

 

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-黄金伝説Ⅱ

黄金伝説Ⅱ
H140cm×W100cm×D95cm
樟(クス)・ステンレス・アクリル彩色・金箔
2002年

 

 

 

日下
御弟子に入られた鈴木実さんは、山形県出身の彫刻家でいらしゃいますよね。
私もかつて国画会や晩年の山形美術館での展覧会で拝見していました。
どのような感じの出会いだったのでしょうか。

 


笠原 鉄明さん
鈴木実先生が師事された桜井祐一さんという先生がいらっしゃるんですね。
大分前に亡くなられていますが。

太平洋美術学校に行っていた頃に、桜井先生を知っている方から
桜井先生のアトリエに行かないかと言われまして、
160センチ位の石膏の人体の作品を持って批評していただきに行きました。

 


日下
すごいですね!

 


笠原 鉄明さん
そしたら、桜井先生から「私の弟子に鈴木実がいるんだけども
木彫をやっているので、行ってみないかね。」という話から始まって、
最初はお手伝いをしながら、「先生ご指導をお願いします」ということで
鈴木実先生のアトリエに通いという形で毎日、下仕事しながら勉強させて頂きました。

 


日下
鈴木実さんはとても真摯な作品を作られる方ですよね。

 


笠原 鉄明さん
ええ、やっぱり最初にアトリエにうかがった時に強烈な印象が在りましたね。
それまでに僕が見ていた作品にはない強さ、人間的な匂い、存在感がある作品でした。

 

「わー、この作家は一体なんなんだろう」というような、怖さみたいなものが
最初はありましたね。

 

その頃は、東京には出て来たんですけれど、
やっぱり彫刻を通して表現する意味みたいなものとか、
彫刻ってどういうふうに進めていいのかよくわからなくなっていました。
富山に帰った方がいいのかなと悩んでいたんです。

 

丁度その頃に、そういうお話があって、
よし、じゃあ作家の方に会ってお話してみたいという気持ちもあったものですから
余計に衝撃でした。彫刻家として生きておられるわけですから。

 


日下
その強烈な印象というのを
詳しくお聴かせいただけますでしょうか。

 


笠原 鉄明さん
いや~、作品が物凄く強い、存在感がある。
何かを語りかけてくれるような作風だったんです。
今まで見たことのない、彫刻から一歩踏み出したような作品だと感じました。
背景にあるものの鋭さや、何かえぐられるような人間の孤独感を感じました。


それで、先生のところに4年半程いて勉強させていただきました。
その後、先生の元を少し離れ、先生の小品などお手伝いながら、自分の作品を作っていました。

 


日下
ああ~、そうでいらしたんですか~。

 


笠原 鉄明さん
はい。彫刻って何だろうという疑問がいつも湧いていた時期でしたが、
先生のお話を伺ったり、いろいろな作品や人との出会いの中で自分を見つめることができ、
すごく勉強させて頂きました。

 


日下
素晴らしいですね。
今日はここまでお聴かせ頂いて、ありがとうございました。

 

 

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-月に遊ぶ

月に遊ぶ
H205cm×W50cm×D90cm
榎(エノキ)・アクリル彩色
2013年

 

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今回、渡辺 忍さんのご紹介で
初めて、笠原 鉄明さんをさせて頂きました。

 

私は、以前、国画会展を見ていた時に笠原 鉄明さんの作品を拝見していました。
ご自身の肖像なのかな、と想像されるような人物像が
生活の一場面を切り取ったようなプレゼンテーションで印象に残っていました。

 

今回、お話をお聞かせ頂いて、それが笠原 鉄明さんの
自分がそこに介在したものがあるという捉え方をして制作をされたい
という想いから来ていたのだと分かりました。

 

笠原 鉄明さんは、本当に真摯な姿勢で制作をなさっていて
作品を作ったご自身のお気持ちと鑑賞者のお気持ちが
お互い接するものがあれば面白いな、と仰っていたのが
印象に残りました。

 

皆さまも笠原 鉄明さんの作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。


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◆笠原 鉄明さんの展覧会情報

 

◇国画会彫刻部の秋季展
2013年 10 月29日(火 )~11月6日(水)
  9:30~17:30 (入場は17:00まで)

  ※初日は13:00~17:30、 最終日は入場は13:30まで、14:00閉会

 

 休館日 11月5日(火)  入場料 無料

  東京都美術館 です。

  先にご登場下さった原 透さん、渡辺 忍さん も出品されます。

 

◇笠原 鉄明さん 個展
  2014年9月15日(月)~20日(土)
 GALERIE SOL 
 
 東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル6F

  笠原 鉄明さんHPの展覧会案内

 

◆笠原 鉄明さんの登場するWEBページ

 ◇国画会 
 

うしく現代美術展公式ホームページ

 (笠原 鉄明さんは第2,3回展にご出品されました。)

 

◆笠原鉄明さんの略歴 

■個 展
1990年 「個展 -伝説の森-」 ギャラリーなつか (東京・銀座)
1999年 「小品個展」 日本橋高島屋彫刻コーナー (東京・日本橋)
1999年 「個展 -記憶のはざまで-」 ギャラリー青羅 (東京・銀座)
2003年 「個展 -記憶のはざまに-」 GALLERY inos(東京・目黒)
2006年 「個展 -蒼い月-」 ガレリア・グラフィカ bis (東京・銀座)
2008年 「個展 -彼方の雲-」GALERIE SOL(東京・銀座)

■グループ展・団体展等
1977年 「国展」以後毎年出品 2006年まで東京都美術館(東京・上野)2007年から国立新美術館(東京・六本木)
1990年~1992年 「昭和会」招待出品 日動画廊(東京・銀座)
1994年 「第6回現代日本具象彫刻展」 千葉県立美術館(千葉県千葉市)
1995年 「’95富山の美術」 富山県立近代美術館(富山県富山市)
1997年 「可視化の構造-11の空間」 富山県立近代美術館(富山県富山市)
1997年 「第1回ユーモア陶彫展」 セラトピア土岐(岐阜県土岐市)
1999年 「いなみ国際木彫キャンプ’99」 富山県井波町(現南砺市)
2000年 「文化庁買上優秀美術作品披露展」 日本芸術院会館 (東京・上野)
2000年 「那須野が原国際彫刻シンポジウムin大田原2000」(栃木県大田原市) 
2002年 「つくば彫刻展2002」 茨城県つくば美術館 (茨城県つくば市)
2002年 東日本-彫刻 39の造形美」 東京ステーションギャラリー (東京・東京駅)
2004年 「安達博文 笠原鉄明 開光市 3人展」 美術サロンゆたか (石川県金沢市)
2005年 「第4回現代茨城作家美術展」 茨城県近代美術館 (茨城県水戸市)
2006年 「収蔵品展021:素材と表現」 東京オペラシティアートギャラリー (東京・西新宿)
2009年 Life展 #4 GALERIE SOL (東京・銀座)
2011年 明日への希望昭和会受賞作家選抜展 笠間日動美術館(茨城県笠間市)
2012年 三次元→二次元 #2彫刻家によるドローイング GALERIE SOL (東京・銀座)
2013年 スパーク 文化庁買上優秀美術作品展 高崎市タワー美術館(群馬県高崎市)

■受賞等
1992年 「第27回昭和会」日動美術財団賞受賞
1993年 「第67回国展」会員推挙
1994年 「6回現代日本具象彫刻展」優秀賞受賞 
1997年 「第1回ユーモア陶彫展」奨励賞受賞

■その他
1953 年 富山県利賀村(現南砺市)生まれ
1968~1973 年 二代目南部白雲に師事 欄間社寺彫刻を学ぶ
1973年 井波町立木彫工芸高等職業訓練校(現南砺市)卒業
1973~1977年 太平洋美術学校修学
1977~2002年 鈴木実に師事
2008~2011年 愛知県立芸術大学非常勤講師
2010~2012年 女子美術大学非常勤講師 
2010年 天彦五男詩全集に彫刻作品写真掲載

■美術館及びパブリックコレクション等
文化庁・千葉県立美術館・富山県立近代美術館・笠間日動美術館・富山県南砺市・岐阜県土岐市・
東京オペラシティアートギャラリー(寺田コレクション)

■現在 国画会会員 日本美術家連盟会員


 

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学び場美術館登場作家リストⅡ

 

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