当院で実施のオプション検査について、患者さまのみならず生殖医療専門医の皆様からお問い合わせが多数ございますので、まとめておきます。
まず、文字通りオプション検査はあくまでもオプションですので、メインキャストにはなり得ません。驚かれるかもしれませんが、ヒトの着床に関してはほとんど何も明らかにされていませんので、世界中で色々な先生が様々な取り組みを「試験的」に行っているのが現状です。したがって、何も取り入れていないクリニックが大多数です。この場合には、同じことの繰り返しになります。不育検査を取り入れているクリニックはごくわずかありますが、不育検査はそもそも着床障害の検査ではありません(後述)。なお、当院では下記の検査を行っています。リプロダクションクリニック東京の開院前には、東京でこれらの検査を全て行うことができる施設はありませんでしたので、関東地方からリプロダクションクリニック大阪に来院された方が数百組ございました。これらの方は、過去に5〜20回の体外受精反復不成功の経験をお持ちでしたが、当院のオプション検査を全て行い、全てに対策を施した上で次の移植に臨んだところ、高い成功率を示しています。本検査及び治療に否定的な医師もおられますが、医学的根拠が最近出てきたもので、かつ十分に有意義な成果を上げているものと考えています。なお、初回移植前にオプション検査を行っても妊娠率は増加しません。あくまでも複数回不成功の方のためのオプション検査ですので、ご了承ください。
銅亜鉛検査:女性の採血検査、いつでも可能
25ヒドロキシビタミンD検査:女性の採血検査、いつでも可能
不育検査:女性の採血検査、3連休の前日の検査不可(食後2時間以上かつ出血していない時に可能)
慢性子宮内膜炎検査:生理終了後排卵までの内膜採取検査(CD138免疫染色検査)
子宮収縮検査:排卵後1週間の超音波検査(3分間のエコー動画検査)
さて、不育症とは流産(あるいは化学流産)を繰り返すことですので、不妊症とは程遠いと考えるのが普通ですが、驚くべきことに、不妊と不育の境界は極めて近いものがあります。下図では、排卵、着床、判定日、胎嚢確認と1週ずつ線を引いてあります。胎嚢確認後に胎児発育が見られないのが流産、判定日以降に胎嚢が確認できないのが化学流産、この二つが「現在の不育症」になります。しかし、着床した瞬間から母体と胎児の血液交換が行われますので、本来は着床からが妊娠のスタートになりますが、着床の時に出てくる物質がまだ見つかっていませんので、着床したかどうか検査できないのが現状です。近い将来、その物質が見つかることは想像に難くないですから、その時には判定日は着床日になります。そうすると、下図の青い線のようになります(2w0d〜3w0d)。着床し順調に成長した場合には現在の判定日にも判定(+)が出ます。着床しなかった場合にはずっと(ー)のままです。一方、着床して途中まで育ち成長が止まった場合には、途中まで増加しその後低下します(青い線が上がってから下がる)。この場合は、途中まで発育しその後発育が停止していますので「不育」ですが、現在は「不妊」に分類されてしまっています。これらの方を助けられるのが「不育検査・治療」です。従って、不育は着床障害の検査・治療ではなく、着床後早期の部分をカバーする検査・治療になります。なお、コンピュータのシミュレーションでは、およそ30%の方がこの部分(2w0d〜3w0d)でダメになっていると計算されています。
不育の対策を取った場合の良いところは、2w0d〜3w0dの部分のみならず化学流産(3w0d〜4w0d)や流産(5w0d〜)も防げることです。リプロダクションクリニックは東京大阪ともに年齢制限をしていませんので、40歳以上の方が多数通院されておりますが、クリニック全体の流産率は低くなっています。その最大の理由が、不育対策を早めに行っていることだと考えています。また、不育の治療で頻繁に使用されるヘパリンには着床促進作用がある可能性が報告されていますので、妊娠率も高くなっております。
☆☆☆ ここで、最も重要なポイントは「基準値をどこにとるか(陽性と陰性のカットオフライン)」です。つまり、内科的基準値ではなく妊娠を目指す方の基準値で判断する必要があります。私たちは不妊症の方の妊娠率を最も高くできる基準値と対策をご提案させていただいております。例えば、流産を繰り返す方には妊娠判定日からの治療で間に合いますが、化学流産や判定陰性が続く方には妊娠判定日からの治療では遅すぎます。上記の2w0d〜3w0dの部分での対応策は、移植日から薬剤を開始しなければ間に合いません。このように薬剤の開始時期は、純粋な不育症の方と不妊症の方では異なってきます。
これまでになかなか成果が出ておられない方は、是非ともオプション検査を全て受け、全ての対策を取った上で胚移植を行うことをお勧めいたします。なお、ビタミンD検査では「25-OHビタミンD」採血が必要です(通常特注検査になります)。1,25-(OH)2ビタミンD、ビタミンD分画、ビタミンD2、ビタミンD3とは異なりますのでご注意ください)。
オプション検査については、下記の記事を参照してください。
2016.4.17「☆正常胚が着床しないのは何故? その2」
2016.2.7「☆☆妊娠治療の盲点①「原因」と「リスク因子」の違い」
2015.11.7「☆☆妊娠判定陰性の時の考え方:オプション検査の是非」
銅亜鉛については、下記の記事を参照してください。
2013.11.25「銅が妊娠を妨げる効果は絶大」
2013.11.7「☆亜鉛と不育とプロテインS その1」
慢性子宮内膜炎検査については、下記の記事を参照してください。
2016.5.27「慢性子宮内膜炎と全身の炎症は無関係」
2015.5.21「☆慢性子宮内膜炎と異常子宮収縮の関連」
2014.12.8「☆慢性子宮内膜炎と着床障害」
子宮収縮検査については、下記の記事を参照してください。
2017.4.3「月経周期での子宮収縮の変化」
2017.4.4「人工授精における望ましい子宮収縮」
ビタミンDについては、下記の記事を参照してください。
2017.3.20「ビタミンD製剤は、不育症治療に有用?」
2016.12.8「☆ビタミンDの卵胞発育促進作用」
2016.12.5「☆不育症とビタミンDの関係」
2016.12.4「☆ビタミンD製剤はいつ服用すればよいか」
2016.3.31「妊娠中のビタミンD大量投与」
2014.10.26「☆ビタミンD不足だと妊娠率が低下する」
2014.4.7「☆ビタミンD不足で着床障害になる?」
2014.3.17「☆ビタミンD欠乏は不育症のリスク因子です」
2013.2.5「白人ではビタミンD濃度が高いと体外受精の妊娠率がよい」
2012.12.10「ビタミンDの効用 妊娠•授乳編」
2012.12.8「☆ビタミンDの効用 女性編」