☆ピルを飲むとAMHが減ります | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

「AMHは残りの卵子数」を推測する指標とされていますが、正確に言うと「AMHは現在供給されている卵子の数」を示しています。供給量は様々な要因によって変化します。ピル使用によってAMHは低下することが知られていますが、本論文は、ピルでAMHがどの程度低下するかを、一般の女性と癌治療後の女性で調査したものです。

Fertil Steril 2014; 102: 774(米国)
要約:癌治療後の女性126名と同年齢の一般女性123名(平均年齢25.5歳)について、平均2.15年間追跡調査しました。なお、妊娠中、授乳中、慢性疾患、PCOS、POI(早発閉経)の方は除外しました。ピルを使用していない方と比べ、ピルを使用している方のAMHは、癌治療後の女性で0.79倍、一般女性で0.45倍に有意に低下しました。同様に、胞状卵胞数(AFC)は、癌治療後の女性も一般女性も0.80倍に有意に低下していました。同一人物での比較を行うと、ピルを使用していない時と比べ、ピルを使用している時のAMHは、癌治療後の女性で0.83倍、一般女性で0.65倍に有意に低下しました。同様に、AFCは、癌治療後の女性も一般女性も0.89倍に有意に低下していました。

解説:AMHの増減は下記のようになっています。
低下する場合:ピル使用中、ビタミンD低下、男性ホルモン低下、黄体後期、25歳以上
増加する場合:FSH/hMG製剤使用、ビタミンD増加、男性ホルモン増加、月経~卵胞期、25歳未満

ピルを休薬することなく連続的に使用すると、AMHが9週間で半減するという論文を以前ご紹介しました(2013.4.22「☆ホルモン剤(ピル)の使い方でAMHが半減?」)。本論文は、癌治療後の女性も一般の女性もピル使用により、AMHやAFCが5~8割に低下することを示しています。ピルにより、AMHは半分程度には低下するものだという認識を持つことが大切だと考えます。ピルの使用を中止すれば、AMHは徐々に回復します。これは、FSHの低下が卵胞の供給をストップさせるからであり、前周期のピルやロング法は、AMHが低下した方や高齢の方に望ましくない理由でもあります。

下記の記事を参照してください。
2013.10.8「☆1年以内のAMHであれば卵巣の反応を予測できる」
2013.9.18「Q&A77 ☆AMHが増えました♡」

ピル/FSH/hMG
2013.4.22「☆ホルモン剤(ピル)の使い方でAMHが半減?」
2013.5.14「☆体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その1」
2013.5.21「☆☆ピル(OC)のメリット」
2013.6.25「ターナー症候群の妊娠」

ビタミンD
2012.10.19「AMHとビタミンDの関係 その1」
2012.10.20「AMHとビタミンDの関係 その2」
2012.10.22「AMHとビタミンDの関係 その3」
2012.11.2「ビタミンDの必要量は?」

男性ホルモン
2012.11.4「男性ホルモンは女性にも必要? その1」
2012.11.5「男性ホルモンは女性にも必要? その2」
2013.5.4「☆女性の男性ホルモン低下は卵巣予備能低下と関連」

生理周期
2013.6.30「生理周期によってAMHは変化します」

年齢
2013.6.16「☆☆☆AMHは年齢とともに低下しません⁈」

また、このようなケースも稀にあります。
2013.6.4「間違ってAMHが高く出る場合があります」