☆1年以内のAMHであれば卵巣の反応を予測できる | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

残りの卵子の数は、誰しも知りたい情報であり、AMHを測定される方がかなり増えてきました。AMHを採血することによって、残りの卵子数を推測することが可能ですが、生殖医療においては、卵巣刺激をした場合の反応性を予測することもでき、どのような刺激がその方に適切であるかを事前に知ることが可能です。これは、体外受精を行う際に非常に大切なことで、やみくもに刺激する場合と異なり、初回の刺激から理想的な刺激ができますので、初回から妊娠の可能性を高くすることにつながります。本論文は、少なくとも過去1年以内のAMHであれば、高反応の方も低反応の方も、卵巣の反応性を予測できることを示しています。

Fertil Steril 2013; 100: 438(デンマーク)
要約:2年以上の不妊期間のある540名の女性の初回の体外受精/顕微授精において、アンタゴニスト法+FSH刺激で卵巣刺激を実施した場合の卵巣の反応性と刺激前に測定したAMH値を後方視的に検討しました。過去1年以内のAMH値は、採卵できた卵子数と正の相関を示し、AMH測定と採卵時期の間隔は採卵数に影響しませんでした。この結果は、高反応の方も低反応の方も同様であり、刺激する場合の大きな情報になります。

解説:AMH測定と採卵時期の間隔について調査した研究は、本論文が初めてのものです。経験的には、1年以内かなとは感じていましたが、改めてそれが間違いなかったと思う次第です。逆に言えば、1年毎にAMHを測定しておいた方がよいことを意味しているかもしれません。

さて、上記には「AMHは残りの卵子数」を推測すると書きましたが、正確に言うと「AMHは現在供給されている卵子の数」を示しています。供給量は様々な要因によって変化します。
低下する場合:ピル使用中、ビタミンD低下、男性ホルモン低下、黄体後期、25歳以上
増加する場合:FSH/hMG製剤使用、ビタミンD増加、男性ホルモン増加、月経中、25歳未満
詳細は、2013.9.18「Q&A77 ☆AMHが増えました♡」をご覧ください。