「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。
後からジワジワ来る暗さ
★★★★
(2014年/アメリカ/135分/Foxcatcher)
【 監督 】
ベネット・ミラー
【 出演 】
スティーブ・カレル
チャニング・テイタム
マーク・ラファロ
バネッサ・レッドグレーブ
シエナ・ミラー
アンソニー・マイケル・ホール
ガイ・ボイド
デイブ・ベネット
【あらすじ】
レスリングのオリンピック金メダリストでありながら、同じ金メダリストの兄デイヴの陰に隠れ苦しい生活を送っているマーク。
マークはある日、デュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンから、ソウル・オリンピックの金メダル獲得を目指したレスリングチーム“フォックスキャッチャー”の結成に誘われ、現状を打破すべくその誘いに乗る。
デュポンにすっかり心酔したマークだったが、互いの考え方のずれから次第に関係が歪み始め、デイヴがチームに合流したとき、予想だにしない事態へと発展していく―
【コメント】
さて、この時期になるとエンタメを騒がせるのが「米アカデミー賞」なわけで、映画の宣伝文句にもありとあらゆる作品に“アカデミー賞最有力!”の文字が飾られるわけです。毎度のことながら乱用はいかがなものかと僕は感じているのですが、まあ確かに惹かれる文句ではあります。僕は基本的に賞レースに登場するような小難しい作品よりも頭空っぽにしてスカッとする作品が好きなので、この手の作品はちょいと気合が必要なわけです。
そんな中、「文句なしのアカデミー賞候補!」と大きく宣伝したのが本作『フォックスキャッチャー』であります。正直、本作の題材となっているレスリングについては基礎知識がないもので楽しめるかどうかは賭けだったんですが、趣旨としてはスポーツ系ではないと分かっていたので、賞の最有力とあらばヨシ観てみようと足を運んだ次第です。
ちなみに、本作は作品賞じゃないのよね。
陰鬱、冷淡、緊迫。いやいや、ジワジワ来ます、これ。
先に言ったとおりレスリングを題材としているものの決して主軸の部分ではなく、実際に起こった殺人事件の顛末を非常に客観的に、淡々と、暗く冷たい目線で描かれています。とにかく全編通して感じる空気の冷たさや鬱々とした雰囲気に怖さを感じずにはいられません。まさに僕好みの雰囲気。
そして、やっぱり凄いのは役者勢。さすが数々の賞を受賞しているだけある存在感です。特にスティーブ・カレル。まるでカリスマや教祖を体現したかのような恐怖を感じさせる圧倒的な存在感が実に凄い!この人『ゲット・スマート』なんかに出てたコメディアンなんですけどね。コメディアンどころか笑いひとつ許さないようなキャラ、よくぞここまで化けられるかというくらいの変貌ぶり。
兄ちゃん役のマーク・ラファロも良かったんですが、僕は弟役のチャニング・テイタムに演技賞を与えたいなと。彼が演じる、青春をレスリング一筋で生きてきました、レスリング以外何も知りません、もちろん童貞です的な垢抜けないキャラクターがとにかくグッときましたね。
さてさて、そんな冷たくて暗い感じの本作でしたが、やっぱりポイントになる部分はラストの殺人事件シーンでしょうね。スティーブ・カレル演じるデュポンがなぜ兄のデイヴを射殺する必要があったのか?俺のチームに欲しい欲しい!と思ってやっとこさ手に入れたデイヴだったのに。この場面にデュポンの真の姿が隠されていると思いますね。
デュポン自身、精神疾患を患っていたという話がありますが、本作を観ればなんとなくデイヴに銃口を向けたのか理由が分かります。チームのカリスマコーチとして、母に認めてもらいたくてやっていたこと、それが皮肉にもデイヴの存在によって薄れてしまい、マークの心も離れ再び兄デイヴとの絆を取り戻し、気が付けば孤独の縁に立たされていたデュポン。金持ちのボンボン息子が欲しかったものは、チームでもデイヴでもなく、皆から慕われる存在だったのかも知れないですね。
【2015年度 Myランキング】(2/21時点)
本作は、本年度のベスト10中1位(暫定)にランクイン。
アカデミー賞の季節ですな。
(ベスト)… ★★★☆以上が基準
1位:フォックスキャッチャー ★★★★
2位:マッハ!無限大 ★★★☆
3位:ミュータント・タートルズ ★★★☆
4位:
5位:
6位:
7位:
8位:
9位:
10位:
次点:
(ワースト)… ★★☆以下が基準
1位:デッドハング ★★
2位:ジョーカー・ゲーム ★★☆
3位:96時間 レクイエム ★★☆
<その他ランク外一覧>
シン・シティ 復讐の女神神様はバリにいるバンクーバーの朝日激戦 ハート・オブ・ファイトビッグ・アイズREC/レック4 ワールドエンドANNIE アニー
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