生クリーム《ラベルの表記・動物性と植物性の違い・脂肪分別用途・選び方》 | 型にはまったお菓子なお茶の時間

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主に日々のお茶のお供を記録しているブログです。
レシピの配合はあくまでも「個人的な作りやすさ」と「私好みの味に合わせたもの」になっていますので、レシピそのものよりも、作業する際の理由やポイント自体がお役に立てましたら嬉しく思います!

お菓子作りに欠かせない材料のひとつである生クリーム。
クリームには、大きく分けると動物性・植物性の2種類がありますが、植物性のものを「生クリーム」と呼ぶことはできません。

また、レシピによって脂肪分の指定があったり、風味の上で動物性のものを使うようにとの表記も多く見かけますが、植物性に必ずしもメリットがないというわけではなく、また逆に動物性だからどんな脂肪分のものを使っても美味しくできると言うわけでもありません。

どちらにもメリット・デメリットはあって、大事なのは作りたいお菓子や自分に合った使い方や選び方。
と言うことで今回は以前から考えていた、クリームに関する表記についてや、動物性と植物性の違い、脂肪分についてなどまとめてみました。
お菓子作りをしていると必ず通る疑問のひとつなので、ご存知の方も大半だとは思いますが、クリームについてふと疑問に思った時などにお役に立てれば嬉しく思います。
かなりの長文なので、気になる部分だけどうぞ。

●材料や生地の作り方に関してこれまでに書いた記事はこちら
 砂糖 ~甘さと食感を左右する~
 小麦粉について ~ふるう・こす・休ませる・さっくりと混ぜる・お菓子に薄力粉を使う理由~
 オーブン使いこなし
 卵の役割《起泡性・気泡の安定性・乳化作用・殻の色・選び方・メレンゲについて》
 
クッキーにおける卵の役割&卵黄・卵白・全卵で作った場合の比較
 バターなど固形油脂の性質・お菓子作りに無塩バターを使う理由



↑クリームを使ったお菓子いろいろ


【市販のクリームの表記について】

《生クリームとは》
 生クリームとは、生乳や牛乳を分離して取り出した“乳脂肪”のみを原料として、乳脂肪分が18%以上のもので、なおかつ植物性脂肪・乳化剤・安定剤などの添加物を加えていないもの、とされています。

 18%以下のものや、植物性のもので作られたクリームは「生クリーム」と言う名前では販売できないため、それらのパッケージには「ホイップ」「フレッシュ」などという単語が入った名前で表記されているものをよく見かけると思います。
 それらは名称としては生クリームではなく、「乳又は乳製品を主要原料とする食品」とラベルには表記してあります。


《「乳又は乳製品を主要原料とする食品」の種類》
 その「乳又は乳製品を主要原料とする食品」には3つの種類に分けられます。

●乳脂肪のもの(動物性脂肪)
 乳脂肪に乳化剤や安定剤などを加えて、分離しにくくしたり、保形性をよくしたもの。
 添加物が入っているので「生クリーム」と呼ぶことはできないのですが、生クリームと味はほぼ変わりません。

●混合脂肪のもの(乳脂肪+植物性脂肪)
 乳脂肪の一部を植物性におきかえられたもので、コンパウンド(混合の意)クリームとも呼ばれます。
 (植物性油脂= ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、なたね油など)。
 動物性のものよりも価格を抑えることができたり、保存性がよくなったり、植物性のみのものよりも風味がよくなったりと、動物性と植物性の長所が補われています。

●植物性脂肪のみのもの(植物性脂肪)
 乳脂肪をすべて植物性脂肪におきかえたもの。
 乳脂肪のものに比べ、軽くさっぱりした味です。
 植物性脂肪だけのものであっても、乳成分が加えられているので「乳又は乳製品を主要原料とする食品」と言う表示になります。


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【動物性脂肪と植物性脂肪の違い】
 表記については先の通りですが、ここからは具体的に、動物性脂肪のと植物性脂肪のクリームは何がどう違うのかについてご紹介します。

《動物性のクリーム》
 牛乳を原料とした乳脂肪でできていて、濃厚でコクがある味わいです。
 風味と口どけがよく、舌の上ですっと溶けます。
 植物性のものと比べて、また高脂肪であるほどに時間をかけずに泡立ちやすい傾向にあります。

 ただし賞味期限が短く(添加物なしの場合)、分離しやすい(特に高脂肪のもの)のも特徴です。
 泡立てすぎたり、デコレーションで何度も塗りなおしたりして触りすぎると、分離してボソボソとした食感になりやすいので、泡立ての見極めは慎重に、また何度も塗りなおさないのがポイントです。
 またクリームの色はやや黄色がかっています。


《植物性のクリーム》
 植物性油を添加物で加工し、動物性の生クリームに似せたものです。
 色は白く、コク・風味には欠けますが、軽くてあっさりしているので、牛乳が苦手で動物性の生クリームもそんなに好きではないという方の中には、植物性のクリームなら乳臭さがないので食べられるという方もいらっしゃいます。
 ただやはり植物油が原料なので、舌にべたつきが残る場合があります。

 また手で立てると疲れてくるくらい、動物性脂肪のものに比べて泡立ての時間はかかるのですが、そのおかげでボソボソになりにくく、デコレーションしやすいところはメリットです
 動物性のような風味がないうえ、添加物が入っていることで敬遠されがちですが、その添加物のおかげで保形性に優れているため、動物性のものと違い、きれいな形を保ったまま保存できるというメリットもあります。(それでもデコレーションケーキは当日消費が原則ですが)

 乳成分が入っているものと入っていないものとありますが、入っていない場合は乳製品にアレルギーがある人でも食べることができます。


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【クリームの選び方について】
 よく“動物性のものを使うように”との注意書きをされているレシピがたくさんありますが、必ずしも動物性のものが、植物性のものよりもすべてにおいて優れていると言うわけではありません。
 もちろん、そう表記してある「そのレシピを作った人の味」にするならば、動物性のものを使うことで同じ味に近づけることはできます。
 
 ただお菓子にもよるのですが、何に使うか、作る人や食べる人がどこまでこだわったり作業に慣れているか、風味が好みかなどでも、ちょっと選び方が違ってきます。
 なので、私のレシピでも、ブログに載せている生クリームを使うレシピのもので動物性であることを指定しているのは、自家製のバターを作る時くらいです。

 またケーキ屋さんでも、動物性でも安定剤入りのものを使われていたり、コンパウンド(動物性・植物性混合)クリームを使用しているところは数多くあります。
 それは、ただでさえ動物性脂肪は温度変化に弱いのに、お客さんがどういう状態で持ち帰って、どれくらいの温度の冷蔵庫でどう保管されるかがわからないからです。
 “買ってきた当日に消費するように”との表記があっても、数日は大丈夫だと保存されていることも意外と多くあります。

 もちろん、クリームには動物性のみしか使っていないと言うお店や、ケーキもたくさんありますし、そう言った場合は商品名にあえて「純生クリームの○○」などと打ち出してあるものもあったりと、どのような配合のクリームをどう使っているかは、お店や人、スイーツの種類によってもまちまちです。
 デコレーション専用として時間がたってもだれにくいような安定剤が配合されたも動物性クリームもありますし、動物性の添加物も不使用の生クリームのみを使ってもデコレーションしたクリームの形が保たれるように、生クリームに微量のゼラチンを加えて形が崩れないようにしてあると言うレシピもあります。(ここらへんはあまり書くと長くなるのでこれくらいで…)

 それらを踏まえて、自分が作りたいスイーツにはどのようなクリームを使うのかというのは、技術や好みに合わせて、また何を優先させたいのかなどで変わって来ます。
 私の場合、例えばデコレーションケーキを作ったあとに持ち運ぶ予定がある時には、少し時間がたっても形が崩れにくく、なめらかにしあがる(結構触りすぎがちなんです…)混合ものを使うことも多くあります
 最初から混ざっているものもありますし、自分で混ぜて作ることも出来ます。

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【脂肪分・クリームを扱うポイント】
 考え方やレシピによって詳細は変わって来ますが、クリームは、乳脂肪分の割合によってもある程度用途があります。

●20~30%の低脂肪のものは、飲み物の風味を損なわないのでコーヒーや紅茶に入れるのに向いています。

●35%以上の軽めの食感に仕上がるものはプリンやムース作り、約40~50%以上のクリームはホイップやデコレーションに向いています。
 (また、35~50%のものは泡立てずにシチューやスープなどに加えるとまろやかで濃厚なコクが加わります。)

 脂肪分が高いほど分離しやすい傾向にあるので、使う時に購入し、保存は必ず冷蔵で、期限以内に使い切るのが美味しいお菓子を作るポイントになります。
 また、泡立てる際によく氷水にボウルの底を当てながら泡立てたりしますが、それは油分の粒子を安定させて気泡を抱き込みやすくするためなので、クリームはもちろん、泡立てる器具も冷たくしておくと良いですね。
 器具の水分は、しっかりと拭き取って使います。

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《おまけ…油脂加工食品》
 スーパーのデコレーションや生クリームコーナーには、泡立て不要の絞るだけになっているクリーム(状のもの)が販売されていますよね。
 その名称は「油脂加工食品」となっていて、商品名やラベルにクリームと言う表記はありません。
 作り方としては植物性油脂と水に乳化剤を加えてクリーム状にしたものに、着色料・香料で色と香りをつけられています。

 ポーションタイプの常温で保存できるような、「コーヒーフレッシュ」と呼ばれるコーヒー用ミルクもほとんどは「油脂加工食品」となっており、同じ作り方です。
 コーヒーフレッシュを稀に少量の生クリームの代用として使われる方もいらっしゃいますが、クリームではなく油ですので、かけて食べるだけのものなら代用できても、泡立てたりお菓子の材料として使うのには向きません。