バターなど固形油脂の性質・お菓子作りに無塩バターを使う理由 | 型にはまったお菓子なお茶の時間

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主に日々のお茶のお供を記録しているブログです。
レシピの配合はあくまでも「個人的な作りやすさ」と「私好みの味に合わせたもの」になっていますので、レシピそのものよりも、作業する際の理由やポイント自体がお役に立てましたら嬉しく思います!

お菓子作りに欠かせない材料のひとつである、油脂。
動物性か植物性か、天然なのか加工物か、固形か液体かなど種類が様々です。
それぞれに少しずつ働きも異なり、味や風味、食感や作りやすさにも影響します。
今回は、なぜバターケーキが日持ちするとされるのか、バター分の多いクッキーがサクサクと美味しく焼きあがるのかなど、油脂の性質と、バターを始めとしたお菓子作りに広く使われる代表的な固形油脂の種類をご紹介します。

これまで砂糖・卵・小麦粉について載せてきましたが、それらと合わせて、こんなにも複雑な化学変化が起こることで美味しいお菓子が出来上がっているなんて、仕組みがわかっても不思議ですよね。
もちろんそんなこと考えなくてもお菓子は作れますし、楽しい気分で作ったお菓子は美味しく感じます♪
このカテゴリは、更に美味しいお菓子を焼きたくて、迷った時や疑問に感じた時、お役に立てると嬉しいです。

●クッキーにおける卵の役割&卵黄・全卵・卵白それぞれで作った場合の比較はこちら
 http://ameblo.jp/lovable-kitchen/entry-11889920258.html

●材料や生地の作り方に関してこれまでに書いた記事はこちら
 砂糖 ~甘さと食感を左右する~
 小麦粉について ~ふるう・こす・休ませる・さっくりと混ぜる・お菓子に薄力粉を使う理由~
 オーブン使いこなし
 卵の役割《起泡性・気泡の安定性・乳化作用・殻の色・選び方・メレンゲについて》
 
クッキーにおける卵の役割&卵黄・卵白・全卵で作った場合の比較


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◆ショートニング性…さくさくとさせる
 ショートニングと言う言葉は、“サクサク”や“ぽろぽろ”という食感を表す意味での英語形容詞“short”が語源。
 ショートニング性とは、油脂がグルテンの組織形成を阻害して、もろい食感にさせる働きのことです。
 例えば固形油脂の配合量が多いクッキーは、グルテンが結合しにくいのでサクサクとした食感になり、配合量が少ない場合は強い歯応えに。

 特に油脂の中でも「ラード」や、ラードの代替品である「ショートニング」は、ショートニング性の機能が高いのでサクサクした食感を高めるためにクッキーなどに配合されることがあります。
 ラードの代替品である「ショートニング」なんて、もうショートニング性がありますよと見ただけでわかる直球のネーミングですよね!


◆クリーミング性…気泡を抱き込んできめ細かくふっくらさせる
 糖類と混ぜ合わせた時に、小さい気泡を抱き込むことができるので、きめ細かくふっくら膨らむ働きのこと。
 例えば、バターケーキのバターをよく練る工程では細かい気泡をたくさん抱きこむほど、焼いたときによく膨らみます。
 またバタークリームも、気泡を抱き込むほどにふわっとなめらかで軽い口当たりに。
 その際、バターは20度前後が最も気泡を抱き込みやすくなります。


◆展延性…柔軟に変形する
 展延性(てんえんせい)とは、素材が破断せずに柔軟に変形する働きのこと。
 例えばバターを何十何百の層にする《折込パイ生地》の場合、小麦粉で作った生地にバターがしみこまない状態で作業ができますよね。
 その場合バターを溶かさないために生地・手・部屋などを冷やすなど、温度管理が必要にはなりますが、温度管理がうまくできれば、バターは自在に薄く伸びて生地の間に入り層になってくれます。
 練りこみパイ生地も、最近はオリーブオイルなどの液体油脂で作る方法がたくさんありますが、折込パイ生地はバター(固形油脂)でないと作ることはできません。


◆安定性…保存性が高い
 よく「パウンドケーキはバターの割合が多いので、保存性が高まる」などと言われますが、それはバターがほとんど水分を含まないからです。
 水分が多いほど菌が繁殖しやすいため、シフォンケーキや生クリームのケーキなどは当日や翌日までには消費しないといけませんよね。
 そしてバターやマーガリンは水分が15%前後は含まれますが、ラードやショートニングは脂質100%・水分0%。
 そういうことからバターだけでなく日持ちのためにラードやショートニングなどが配合されることもあります。
 クッキーやパウンドケーキ、マドレーヌなど、固形油脂が多く配合されている焼き菓子が、常温で比較的長期保存可能なのはそういう訳があるのです。
 (保存期間は、砂糖など他の材料とのバランスもあります)


《お菓子に使われる主な固形油脂の種類》
 バターやラードの代替品として作られているマーガリンやショートニングについては成分に危険性が指摘されることもありますが、それは別の機会に説明するとしまして、ここではそれぞれどんなものなのかを、簡単に紹介します。

●バター
 …牛乳の脂肪分からできている動物性固形油脂。
  風味・機能ともに製菓向き。

●マーガリン
 …植物油脂から作られるバターの代替品。 
  植物油脂から作られ、安価。
  バターに比べて柔らかい。

●ラード
 …豚の皮下脂肪。
  融点が低いので口どけがよく、冷めても柔らかさがある。
  ショートニング性が高い。

●ショートニング
 …ラードの代替品で、植物油脂から作られた常温で固形の加工油脂。
  水分がなく酸敗しにくいので安定性が高く、焼き菓子に加えると保存性が高まる。
  無味無臭。

●カカオバター
 …カカオ豆から取れる油脂で、温度変化に敏感。
  100%脂質。


《お菓子作りに無塩バターを使う理由》
 有塩バターと無塩バターの違いは、塩味がついているかいないかと言うことなので、お菓子作りに使うと何よりもまず塩味が強くなるからと言うことがあげられます。
 でも塩味が加わるだけでなく、それによって同じ配合でも甘さの感じ方が変わってしまいます(対比効果:例えばあんこの甘さを引き立たせるためにぜんざいに塩をひとつまみいれるような感じ)
 そして塩にはグルテンの働きを高める性質もあり、粘り気を出すグルテンを形成し、膨らみにくくする働きもあるんです。
 それはバターの量が多いほどに影響してきます。
 そういうことから、無塩バターが使われることが多いのです。


《おまけ・先週の話》
 今、全国的にバター不足。
 先週は仕事で発注した4分の1程度しか届かず、とても困りました。
 代用として違うメーカーのものが届いたのですが、これがまたいつものバターで作った生地と比較して乳の風味が強くクッキーがだれやすかったので、仕事で使うのはやめて私が自宅用に買い取り。
 私が作るお菓子用にはいまいちと言うだけなので、決してそのメーカーのバターがだめなわけではなく、料理や自宅で作るケーキなどには美味しく使っています。
 ひとくくりにバターと言っても、風味や使い安さはそれぞれなので、自分や作りたいお菓子に合ったバターを色々と探してみるのもおすすめです。