バッチフラワーレメディーの不思議さ | kyupinの日記 気が向けば更新

バッチフラワーレメディーの不思議さ

精神科サプリメントの「バッチフラワーレメディー」は、その作用が目視ないし実感できるケースが少なからずあり、元々何も入っていないことを含め、極めて奇妙な「水」と思われる。

今回、劇的に作用を及ぼした患者さんについて紹介したい。

ある高齢の女性患者さんは認知症も合併し、身体疾患のため他科の病院に入院になると、著しく悪化していた。終日大声を出し、いわゆる認知症のBPSDが活発になるのである。そのきっかけは環境の変化である。

認知症のBPSDの意味については、メマリーの記事を参照。以下再掲。

アルツハイマー型認知症の臨床所見のうち、家族が介護に困るような症状をBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)という。これは、徘徊し勝手に家を出ていくとか、家族への暴力・暴言、不潔行為(便弄りなど。いつのまにかポケットに自分の便を入れている人すらいる)、介護の拒絶などを言う。

これらは行動面の異常行動である。また、精神面の所見もBPSDは含む。これらは、盗られた妄想や幻覚・幻視、不安、抑うつ、睡眠障害、せん妄などである。

BPSDが酷い認知症を持つ家族は、家庭で介護しようとすると、昼間も一時も目が離せないし、夜も一睡もできない事態になる。やはり認知症の治療薬は非常に重要である。(治療しないと家族が体を壊す)。

BPSDという用語はアルツハイマーだけでなく、いわゆる前方型認知症や脳血管性認知症など、認知症全般に使われている。


その高齢の患者さんは、ある時、家族が住む県の特別擁護老人ホームに入所のため転居した。ところが、入所中、どうしようもないほど悪化したらしい。その後、家族から電話があり、こちらに再入院したいと希望されたのである。

僕は楽観的に考えており、転院を承諾し再入院させた。

ところが、一時もじっとしておらず、絶え間なく大声があるし、夜も全くと言って良いほど眠らない。しかも前医から、それなりの鎮静的な処方がなされていた。

入院数日後のこと。その日、僕は当直をしていた。ところが、彼女はまだ良くなっていなかったのである(僕は転院すると自然に良くなると考えていた)。

僕は、彼女にレスキューレメディースリープエイドを与えてみた。

すると、驚くようなことが起こった。2階に上がって巡回していると、すぐに看護師さんから呼ばれ、その患者さんがどうしようもなく興奮しているという。結局、スリープエイドで著しく賦活させてしまったのである。夜勤の看護師さんから、

「スリープエイドは眠りを助けるのではないですか?」と言われる始末。これは失敗と思ったが、これほどまで病像が変わるのも不思議な話である。何も入っていないのに。

レメディ的には、
ある種の特異反応(この場合、好転反応)と言えた。

彼女の顔を見ると、その眼は異様に輝いているものの、自分の眼と視線がぴったり合っている。なんとなくだが、今日はともかく明日には良くなるような気がした。

彼女は翌日から、霧が晴れたように清明になった。夜間もアモバンの半錠程度で熟眠できるようになったのである。

このような極端な悪化から快方に向かうパターンはこのブログでもしばしば出てくる。

あれはバンジージャンプのようなもので、いったんゴムが伸びきるから、また戻ってこられるような気が非常にする。(謎、しかも意味不明)

彼女に限れば、そのメカニズムがレメディの手を借りて、2日くらいの短いパターンで生じたと言えた。

プチ寛解メカニズムである。(これも謎)

バッチフラワーレメディーは、一般に不安障害の人に補助的に使い、その結果、ごく少量ベンゾジアゼピンだけ(つまりSSRIなどは中止する)で済むようになれば理想である。

実は、これは結構うまくいく。例えばこのような変化が起こる。

ジェイゾロフト 25mg
ワイパックス  3mg
  ↓
リボトリール 0.25mg
レスキューレメディースプレー(1日2~3回)


ジェイゾロフト 25mg
ドグマチール  100mg
ソラナックス 0.8mg
  ↓
メイラックス 1mg
レスキューレメディースプレー


ソラナックス 1.2mg
デパス    1.5mg
  ↓
リボトリール 0.5mg
レスキューレメディースプレー


などである。普通、不安障害の人にはレスキューレメディー以外では、ホワイトチェストナットを使うこともあるが、スプレーがあるレスキューレメディーの方が好ましい。その理由だが、これらを使いたくなるレベルの人は働いている人が多く、トイレなどでさっと使えるスプレー式は便利だから。

かつて、レスキューレメディーは極端に重い人はあまり意味がないと思っていた。一般にはそうである。しかし、最初に挙げた高齢の女性のように、あのタイプの精神所見にも嘘みたいに効くことがあるのである。

イギリスでは、バッチフラワーレメディーは救急隊員が患者さん用に準備していると聞いたことがある。その理由は、交通事故などで血だらけになり、興奮状態にある人を鎮静するため。つまり意識が保たれている大怪我の人に対し、興奮状態による体力消耗などのマイナスを抑えるために投与するのである(さすが、イギリス人!。イギリス人は基本的に向精神薬が嫌い。)。

この使い方は、上記の患者さんへの手法に少しだけ似ている。

また、ある時期は無効でも、全般が改善して来るとレメディーの効果が実感できるようになる人もいる。これは寛解の方向に進むことで、このレベルの温和な作用でもチューニングが合ってくるのかもしれない。

西洋医学を主体に治療する自分のようなタイプの精神科医が、レメディーも使うのは、おそらくだが、究極の対症療法家だからと思っている。

参考
デパケンRで髪の毛が抜ける副作用
失声とレスキューレメディー
レスキューレメディーとデパケンR⑥
デプロメールとレスキューレメディ&PMS
バッチフラワーの副作用について
森を見て治療を進める
サプリメントの離脱のためにサプリメントを使う