リスパダールとジェネリック、雑感 | kyupinの日記 気が向けば更新

リスパダールとジェネリック、雑感

リスパダールは先発品と全く同じ品質のものを製造するのがやや難しいようである。これはリスパダールが脂溶性が低いことも関係しているような気がする。

過去ログ「リスパダールの脂溶性」から

リスパダールであるが、たくさんの抗精神病薬の中でも脂溶性が低い方に入る。このため血液脳関門を超えて脳内に移行しにくい特性を持っている(リスパダールの代謝物も脂溶性が低く同じ特性を持つ)。従って脳内で有効な濃度を得るためには、末梢血液中ではかなりの血中濃度を維持せねばならなくなる。

ジェネリックを作る際に、ほんの僅かな不純物(コーティングの素材など)のために、脳内に移行するリスパダールの量が微妙に異なっているのかもしれない。(他の薬に比べ、たぶん脂溶性が低いために影響が大きい)

ある病院では、あるジェネリックメーカーのリスペリドンを導入したが、効果があまりにも上がらないためにメーカーを変えたと言う話も聞いた。

元々、日本のジェネリックの基準は厳しいため、海外の巨大ジェネリックメーカーが日本で営業活動することが難しくなっている。海外のジェネリックは仕上げも雑だし、日本の厳しい基準だと到底パスしないようなものも売られているからである。(だから、既存の日本のジェネリックメーカーを買収する方が戦略的に正しい。)

海外のジェネリックを買うと、大きさが半分に割れており、しかもそのままコーティングされているような剤型を目撃する。希少で取っておきたいほどだ。とりあえず、そのくらいの精度なのである。

海外ではイスラエルのテバ社がジェネリックメーカーとして有名である。テバ社はジェネリックメーカーの中で世界最大の売り上げを誇っている。しかしながら、この会社が国家的にジェネリック処方を推進する日本にやって来て、営業するという話は聞かない。これは日本の神経質で厳しい基準にパスすることが難しいこともあるように思う。

また、日本は世界でも珍しく、極端にジェネリックが処方されない国なのも関係ありそうだ。

例えば、アムロジン(ノルバスク)はジェネリックが販売されるようになったが、圧倒的に先発品が売れている。実は、日本ではアムロジン(ノルバスク)は10%もジェネリックに変わっていないらしい。

日本ではジェネリックが発売されても、かなり時間がかかってやっと5割~6割変わるといったところだ。しかし、海外ではジェネリックが認可されると、瞬く間にジェネリックがシェアを伸ばしている。例えば、アメリカではアムロジン(ノルバスク)など1~2年で90%はジェネリックに変わったと言われる。

こういう風に見ると、先発品の大手メーカー(世界的巨大企業)にとって、日本は天国のような国である。

過去ログでは、既にゾロフトはジェネリックが多く処方されているような状況で、世界的にファイザーのゾロフトは急激に売り上げが減少していると書いている。これはジェネリックの方がより売れているだけで、塩酸セルトラリンのトータルの売り上げが減少しているわけではない。

そのような状況で、日本がジェイゾロフトを認可し、(既に海外で売れなくなった先発品を)日本国内で高値で売られるのはなんだかな~というのは相当にある。

これが日本で開発された薬ならまだ理解できるが、単にルールに囚われて、日本の国益を損なっているような気がしてならない。(国が先発品とジェネリックの差がないと宣伝し、積極的にジェネリック処方を推進するなら、最初からゾロフトのジェネリックを認可した方が良いくらい。その方が首尾一貫している)

この特許が切れてジェネリックが発売可能になる期間も国によってかなり異なっているように思う。なぜなら、比較的新しい薬も海外のサイトでジェネリックも売られているからである。

セディールは中国でも販売されている話を過去ログでアップしている。実は、セディールは別に大日本住友が中国で売らなくても、既に海賊盤(海賊薬というべきか)が流通していたようなのである。だからこそだが、認可も緩かったような気もする。(最近のグーグル撤退の話は面白かった。中国は国内の状況を考慮し、セディールを認可しても無問題と思ったのかもしれない。)

日本の先発品が売れる環境は、健康保険制度が関係しており、先発品でもジェネリックでも窓口の支払いがそこまで大きく変わらないことが大きい。ブランド志向ももちろんある。

現在、国民の医療費が莫大な額になっており、厚生労働省は全体の薬の割合を決めて、ジェネリックを導入するように指導している(ほぼ強制)。今後は、ある程度の品目はジェネリックに変更していかねばばらないだろう。

そのような際に、ジェネリックの出来が良いかどうかを見極める眼は医師にとって重要なことなのかもしれない。(全てを変えろとは言われていないため)

ジェネリック導入を推進することはメリットもあるがデメリットもある。上で、日本は先発メーカーにとって天国のような国であると書いているが、つまり、日本では新薬の開発がしやすいのである。

もしずっと以前から、現在のように半ば強制的にジェネリックを処方するようになっていたり、海外の一部の国のように特別に特許切れが早かったりしたら、日本の先発品メーカーは、研究開発費を新薬で回収できないケースが多くなる。このような状況が長く続けば、次第に新薬開発能力が落ちていくことが想像できる。

だからこそだが、エビリファイやアリセプトなどの優れた向精神薬は、このような天国のような環境だからこそ、創薬されたともいえる。現在の日本の先発品メーカーは、巨大資本を投入して開発をしやすい環境なのである。

この辺りの国の舵取りは難しいし、未来を予測できないところもある。

目先のことに囚われて、日本の国力を弱らせるようなことは避けねばならないと思う。

参考
ジェネリックの都市伝説
考察、「ジェネリックの都市伝説」
リスパダールOD錠0.5㎎を発売の予定
リスパダールの先発品とジェネリック
ジェイゾロフトとパキシルの力価の話
セロクエル口腔内崩壊錠
海外の薬価の不思議