セロクエル口腔内崩壊錠 | kyupinの日記 気が向けば更新

セロクエル口腔内崩壊錠

アメリカではセロクエル200mgの口腔内崩壊錠(OD)があるらしい。以前、セロクエルは200mg錠があったほうが良いと書いたことがあるが(詳細)、アメリカではOD錠の剤型で、既に200mg錠は発売されているのである。このアメリカ製の口腔内崩壊錠だが、あまりにも不安定で薬物動態的にばらつきが大きすぎるという。これを日本に持ってきても、日本の厳しい基準を満たすのは難しいレベルなのである。結局、そのような理由で、200mgOD錠はしばらくは発売されそうにない。

一般に薬品メーカーは、ジェネリック対策にこのような剤型を出したりする。今回、リスパダールのジェネリックが発売されたが、実際ヤンセンはリスパダールOD錠を発売している。今のところ、OD錠はジェネリックでは出せないからだ。つまり売り上げの激減を緩和しようとしている。セロクエルはたぶん2010年頃にはジェネリックの話が出始め、たぶん2012年か2013年くらいにジェネリックが発売されるだろう。普通、少しタイムラグがあるから。その時、会社は重い腰を上げ、セロクエルの口腔内崩壊錠が発売されるような気がしている。

現在、日本ではセロクエルはアステラス製薬が販売しているが、これはもともと藤沢薬品と山之内製薬が合併したものだ。もし、山之内の技術者がセロクエルの口腔内崩壊錠を作ったなら、素晴らしい品質のセロクエルOD錠ができるだろうと思われる。口腔内崩壊錠は微粒子から少しずつ溶け出すという高い技術が必要で山之内は特に得意な分野なのである。

ところが、今そんなことをし始めても、開発や治験にお金と時間がかかるし、自社製品ならまだしも、日本で販売しているだけの立場ではそういうことも難しいと思われる。それは実現しそうにない。(セロクエルの開発元はアストラゼネカである)

話は変るが、セロクエルは、一過性かつルーズな結合の薬物なので、OD錠はきわめて価値が高いように思える。リスパダールのように持続性でタイトな薬ではないから。優れたOD錠はセロクエルの不安定さを緩和する可能性を秘めている。また、口腔内崩壊錠は水がいらないので、老人のように水の飲み込みの悪い人や、若い人でも外出時にも服用しやすい。あるいは水制限のある人にも極めて有用なのである。

セロクエルは200mg錠がないことに加え、剤型上、いくつかの点で問題をかかえている。例えば、セロクエル細粒は50%散であることもそうだ。例えば、同じ非定型薬物のリスパダールやジプレキサの場合、散剤は1%散となっている。(定型薬のセレネース、トロペロン、インプロメンなども1%である)

例えば、リスパダールを1mgを細粒で処方しようとするなら、細粒では0.1g(100mg)分である。ところが、セロクエルを老人に10mg処方しようとすると、0.02g(20mg)のという僅かな細粒を処方しなくてはならない。薬剤師さんにとっては耳かきレベルなのである(実際見たことないけど)。1日に0.1g処方するのと0.02g処方するのではかなり勝手が違うといえる。こういう場合、乳糖と混ぜて細粒を増やし分包する。結局、少ない量にしては粉薬は増えるし、誤差は出るだろうし、薬剤師さんの仕事は増えるしで良いことがない。

細粒の50%については変更は難しいと思われるが、将来、口腔内崩壊錠という剤型で、200mg錠は発売されるかもしれない。

参考
ジェネリックの考え方
リーマス