ジェネリックの考え方 | kyupinの日記 気が向けば更新

ジェネリックの考え方

ジェネリック、いわゆるゾロは以前に比べずいぶんと種類も多くなったし、国も医療費削減で推奨していることもあり今後も増えていくように思われる。 ジェネリックは後発品ともいわれ、マイナーな会社が従来品と同じ薬剤を名前を変えて発売するものである。 ネーミングのセンスの悪さに思わず笑ってしまうこともある。 病院や患者さんからすると正規品に比べ薬価が安く、その分医療費が安くあがるメリットがある。 薬は特許期間が切れると、後発品がそれこそ雨後のタケノコのように発売される。 ゾロゾロ出てくるのでゾロなのである。


ジェネリックについては、僕には悪いイメージがあり、2年前くらいまでは精神科薬物についてはほとんど使っていなかった。 僕が卒業した当時、1980年代半ば頃は、ジェネリックの品質はとても悪かったからだ。 例えば、セレネースのジェネリックになると、本来出なかった口渇が出たりする。 ドグマチールのジェネリックは正規品より異常に眠かったり。 なぜジェネリックのみ副作用が出るかは謎だった。 抗てんかん薬は血中濃度が変わり発作が増えたりした。 こんな差は普通はあまり目撃しないものだが、大学病院である程度治療したあと、関連病院に転院させたときに、その差が一目瞭然となっていた。


あれから時代が流れ、現在に至る。 僕はリントンという薬物は正規品と思っていた。これは厳密にはセレネースのゾロなのである。 リントンはゾロにしてはあまりにも優秀である。副作用の面でも正規品との差が全然わからないし血中濃度も問題ない。 現在の入院治療では療養病棟の割合が高くなっており、経営的にもある程度ジェネリックを入れざると得ない。 療養病棟では、いくら薬を使ったり検査をしても診療報酬は変わらないのだ。 最近、恐る恐るトロペロンのジェネリックを入れてみたが、まったく品質的に問題がなかった。 それでも、トロペロンもまだ置いており、同じものを2種類置いている。 (トロペロンは古いのに高すぎる) 


ジェネリックと言えども日本製でもあり、品質が昔より上がっているようなのである。 精神科薬物に関して、うちの病院でゾロを入れているものは、ロヒプノール、アモバン、トロペロン、セレネース(リントン)の4つだけなのである。 だから、一般の精神科より断然正規品率が高い。 患者さんが自分で選べるなら、できるだけ正規品を選択するほうが良いと思う。 (現在は院外処方箋の場合、患者さんが選択できる) なぜなら、医療費はある程度自立支援法で援助されるし、なにしろ長期に服用するものだから。精神科薬は脳に作用するものだしね。


ところで、最近、国立病院に鑑定に行ったことがあり、しばらく病院に通って鑑定書を書いていた。 カルテを閲覧していて驚いたのだが、今では国立病院でもゾロを使っているのである。 国立病院と言えども、独立して採算を考えないと生きていけない状況なのだ。 非定型抗精神病薬は、今まで正規品しかなかったのだが、やがてリスパダールのジェネリックが発売されるらしい。


思うのだが、ジェネリックでも例えば吉冨薬品などが子会社を買収してジェネリックを作らせている場合などは、信頼性もかなり高いのではないかと。 ジェネリックを作っている会社により品質の差があるような気がしている。 精神科に限らず、今は内科薬でもジェネリックが幅を利かせているが、たまに正規品より評判が良いジェネリックが存在するらしい。 あるゾロの降圧剤は、非常に評判が良いんだそうだ。 あるゾロの鎮痛薬は正規品より胃腸障害の副作用が少ないらしい。 こんな話は笑えるけど、精神科の薬は脳に作用しますからねえ。笑うに笑えなかったり。 副作用がどうであれ、正規品の完全コピーが望ましい。


東和薬品なるジェネリックの巨大メーカーがあるが、ここの薬はジェネリックでも格上なのである。 薬価もジェネリックの中でもいくらか高めだ。 錠剤の固め方とか、そのテクニックの点で、正規品と血中濃度のピーク時間や半減期などの細かいデータの差がわずかに出るのかもしれない。 僕は精神科薬でも血中濃度が重視されるものは、正規品がより安全だと思う。それは、抗てんかん薬やリーマスなどである。 (リーマスの項参照)