Enterprise2.0を作る人たち、支える人たち | A Day In The Boy's Life

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とあるエンジニアのとある1日のつぶやき。

以前に「2008年は「エンタープライズ2.0」元年となるか!? 」という記事を書いたのですが、その2008年もはや半年が過ぎてしまいました

しかし、華々しいEnterprise2.0の企業導入効果というのはほとんど聞こえてきません。

むしろ聞こえてくるのは、「なぜ社内でWeb2.0系ツールが流行らないのか」といった類の情報です。


結局のところこういうWeb2.0系ツールは、一人だけが一生懸命にやっても効果などなく、大人数を巻き込んで初めて効果がでるものです。

個人的な意見では、これが流行れば仕事を劇的に変えることができるという感じは受けていますが、周りの人との温度差は激しく、いまいちピンと来ていない人が多いという印象を受けます。


で、自分なりに流行らない理由というのを考えてみた時に、Web2.0とEnterprise2.0とでは、圧倒的にその母数が違う事が要因になっているのではないかと感じます。

Web2.0では、インターネットにつながった全ての人がそのサービスの恩恵を受けられます。

全ての人が興味を持たずとも、特定の分野に特化したサービスであっても数千人から数十万人といった単位でユーザーがいます。

例えそのサービスを支える自分ひとりが抜けたところで、そのサービスの母体を揺るがす事はありません。

残りの人たちで粛々とそのコミュニティは継続していけるでしょう。


一方で、Enterprise2.0の場合、その母数は企業の従業員数が最大値です。

大企業なら数千人、グローバルに展開している企業であれば数十万人といった従業員が対象となりえますが、中小企業であれば数百人程度にまでしぼんでしまう事になります。

さらに、特定の業務に特化した物となれば、数えるぐらいの人しか対象となりえないのではないでしょうか。

あなたがその情報発信を止めてしまえば、そのコミュニティは消滅しうる危機を抱えながら運用していくことになります。


仮に、社内のWebシステム構築・保守を担当しているとして、その周りに同じ業務をしている人は何名いるでしょうか。

恐らく100名といった大きな単位にはならず、10人かそれ以下かといったチームで動いていないでしょうか。

そうなってくるとWeb2.0のツールを使って知識の共有と叡智を蓄えようとしても、それほど効果が高くなるものでもありません。

というよりは、10名程度で使うものであれば、それほど大掛かりなツールも要らないという判断にもなります。


業務で必要な知識をオープンにする事は悪いことではありません。

そのオープンにした知識が、いつか誰かを助ける事になるかもしれません。

業務には関係ないものの、以前からその分野に興味を持っていてあなたが発信する情報に深い興味を持つ人もいるかもしれません。


例えばあなたが勤める情報システム部門に100名の従業員がいて、その中で自分が業務の対象としている、ある分野に対して社内のブログやWikiで積極的に情報を発信していったとします。

その他にも、積極的に情報を発信している人がいますが、その割合は全体ではそこまで多くありません。

パレートの法則 に準えれば、それは2割程度の人たちによって発信されている事になります。

20名が、残りの80名のためにせっせと情報を生み出しているわけです。

そして、先の話と同じように特定分野での情報となるとさらに対応者は少なくなります。

2名か3名か、もしかしたらあなた1人でである分野について情報を発信し続ける事になります。


それに対する反応が十分であれば、書き手のモチベーションも維持できるでしょうが、そうで無い場合、それをすることの意味と意義を失うかもしれません。

社内ブログやWikiで、情報を発する事に成果を認めることが、一つの手となるかもしれませんが、それはEnterprise2.0の本質から外れた行為でもあります。

Web2.0の世界を見て、金のためにブログを書いている人はほとんどいません。

(いるかもしれませんが、そのような野心はすぐに現実的に無理があると気づくでしょう)


残り80名が何もしないわけではありません。

以前に「2.0系ツール利用者に向いている人、向いていない人 」という記事を書きましたが、この「2.0系ツール利用者に向いていない人」が残り80名全員に該当するわけではありません。

実際には3つの階層構造になっていて、


A: 2.0系ツールを積極的に使いこなす人

「2.0系ツール利用者に向いている人」の一部の人。自らが積極的に情報を開示し、また賛同する人の発した情報に深い関心を示し、賛辞を送ることができる人。


B: Aが発した情報を活用する人

ただし、活用するだけで自らが情報を発する事はほとんどは無い。


C: 2.0系ツールを使わないどころか開示された情報にあまり関心を持たない人

「2.0系ツール利用者に向いていない人」の一部の人。自分の関心ごとを自分の頭の中の知識だけでやりくりしようとし、他人の発した情報にほとんど関心を示さない人。


というカテゴリに属した人がいます。

このBのタイプの人がAの人をどれだけ支えられるかで成功の可否が決まってくるように感じます。


Enterprise2.0の全てが大失敗というわけではありません。

一部では成功しているという情報も聞こえてきます。

しかし、それは大企業という母数が大きな集団の中での話が中心です。

その母数が何処まで大きくできるかが鍵なのではと感じます。

ただし、それは絶対数ではありません。

絶対数で言えばEnterprise2.0系ツールは大企業の中でしか生きられないということになります。


中小規模の組織、チームの中でもその効用はあると感じます。

ただし、その中で信号を発する人をどれだけ周りが支えられるかです。

大企業で言えば、例え2割の人しか情報の発信を行い、その情報に関心を示さなくとも、その母数はそれなりの数がいて、コミュニティを形成できるところに強みがあります。

そうで無い場合は、そこで形成したコミュニティの強さが鍵となります。


もし、その環境で強力なコミュニティを形成できる力が無いのであれば、大きなコミュニティを形成しうるものを中心に2.0系ツールを導入してみるというのも手かもしれません。

あなたのやっているWebシステム構築・保守業務のノウハウを共有するという目的ではなく、社員の誰もが知る必要がある、庶務・事務に関する情報開示と共有に使うとか。

母数が少なくなれば、その少ない母数のなかでどれぐらいの割合で強力なコミュニティを形成できるか、その対象に絞った利用というのも有効ではないかと感じます。