肝炎対策カルテなし患者が対案 基本法案で
与野党案とは異なり、カルテなしの患者を含む全員救済を実現するため、救済法の対象が患者の一部であることを明記。国の責任で「生活支援策の整備」「恒久対策の確立」を実施することなどを盛り込んでいる。
新潟県庁で13日、記者会見した「カルテのない薬害C型肝炎新潟の会」の児玉義明事務局長は、「法案成立で幕引きとならないよう、理念だけでなく具体的な施策が必要」と訴えた。
“対案”は「新潟の会」と「薬害C型肝炎問題に取り組む鹿児島県民の会」の連名。同日、衆院厚生労働委員会の各党議員にも提出した。
昨年1月に成立した薬害肝炎救済法は、フィブリノゲンなどの血液製剤投与を証明できる患者にのみ給付金を支給するため、カルテがない場合、救済対象にならない恐れがある。(共同)
コメント:
HCV(C型肝炎)については、難治性(HCV-1b型)で、今の「標準治療のPeGIFN+RBV」よりも、はるかに優れた(効果が高く、副作用が少ない)治療薬候補を見つけたよ。まあ、このためにヒトiPS細胞研究をやってるようなもんだが・・・私の場合。
論文公表と同時に、お知らせしますよ。あと少し、待っててね。
まさに法案の「理念」だけでは病気は治らないから、具体的な「もの」を示します。
あとは、治験に、お金がかかるので、なんとかしてもらえないかなあ・・・日本政府さま。
因果関係論について・・・富山の70代男性、新型ワクチン接種後に死亡
厚生労働省は13日、新型インフルエンザワクチンを接種した富山県内の70代男性が
死亡したと発表した。
男性は肺気腫による慢性呼吸不全の状態で、死因は急性呼吸不全。接種との関連は
ないという。
男性は11日午後2時ごろ、ワクチンを接種。接種後の様子に変化はなかったものの、
家族が翌12日午後7時半ごろに自宅で死亡しているのを発見したという。厚労省によると、
新型ワクチン接種後の死亡は2人目。
(2009年11月13日19時55分 読売新聞)
コメント:
因果関係が、有るのか無いのか・・・。
、このケースでは接種後、たった1日の間に死亡されています。
当初は因果関係があるものとして、精査しなきゃいけません。
打たなければ、こんなことになったのか否かが焦点なんですが、
「本当のところ、それは、わからない」、だから、今は関係ないようにしておこう・・・
という「霞ヶ関文学・表現」の1つに思えてなりません・・・。
インフル患者、前週よりやや減少 国立感染症研究所
この1週間に新たに医療機関を受診したインフルエンザ患者は推計約153万人(前週約154万人)で、7月上旬(6日)以降の累計は738万人となった。
大都市圏の多くで報告数が減ったが、その原因について感染研は、祝日(文化の日)があったため前週より診療日が少ない医療機関が多く、報告数に影響したと分析。今後の推移を慎重に観察すべきだとしている。
都道府県別で報告数が最も多いのは愛知で1機関当たり53・19人。次いで秋田(50・64人)、滋賀(50・06人)、福岡(48・73人)、宮城(46・24人)、大分(45・78人)、香川(42・11人)、新潟(40・52人)、石川(40・10人)、青森(38・92人)の順。(47News)
コメント:
前の記事に書きました(*^▽^*)
今後の予測(新型インフル関連)
研究所によると、県内の195の医療機関を選び定点調査を実施。
今月2~8日の1週間で、1機関当たりの患者数が53・2人となり、
前週の54・9人を下回った。患者総数は1万373人(前週1万698人)だった。
県では9月中旬以降、1医療機関当たりの患者数が1週間で平均8人前後のペースで急激に増加。
国立感染症研究所が6日に発表した都道府県別の報告件数では、愛知県が最多となっていた。(共同)
コメント:
実は、ほかの都道府県でも似たような傾向を示しつつところがある。
私の予測を述べておくと・・・。非常に緩やかに「新型インフル第1波」の新規感染者は、減少していく(ただし、時おり、少々増加する場合もあり、単調減少ではない)だろう。
速ければ、今月末から来月初めあたりには、警報レベルを下回るところも出てくるだろう。ただし、依然、警報レベルを超えるところもあり、全国的に注意報レベル以上は年末から年明けまでは、キープするだろう。
なお、年齢別では、小児や小学生あたりの感染者数は、あんまり変わらないし、
重症化する患者数も、今の医療対策のままならば変わらない。
大人の感染者が「ある程度、1段落」する分、全体として「感染者数」は、減少しているように見えるだけと思われる。だから、今の対策のままだと、前から書いているような年末の医療機関の地獄絵図の恐れは、さほど緩和されない。
そして、年末から年明け過ぎのあたりで、そろそろと、季節インフルがお目覚めする。この時が、また「いろいろ、やっかい」である。・・・たとえば、かわいそうな受験生ら・・・。
なお、季節インフルと新型インフルの怖いハイブリット型は、すぐには現れないだろう。ただ、季節インフルが一巡したあと、少ししてから、今の機関銃レベルではなく、ミサイル装備の「第2波」の空襲が来る可能性がある。更に、他の怖い感染症も忘れてはならない。
過去、インフルエンザは、人類の予想・予測を、ことごとく裏切ってきた。
上記の予想の悪いところが当たらないようにと願うばかりである・・・。
ただ、今回の新型については、「不況の2番底」が来ないようにと願うレベルと、ほぼ同じか。。。まあ、今までの私の予想は、当たっているし・・・。
始めから結論ありき・・・新型インフルワクチン、2回接種しても1回と効果同じ
国内産の新型インフルエンザワクチンを健康な成人が2回接種しても、
1回接種した効果とほぼ同じであることが11日、厚生労働省の臨床試験で分かった。
同省はこの結果をもとに、
「原則2回接種」としている「1歳未満の小児の保護者」や「基礎疾患(持病)がある患者」、
「持病のない65歳以上の人」への接種回数を検討する。
先月16日、1回接種の結果で免疫を高める効果があることが確認されており、
同省は10月19日から始まった医療従事者などへの接種は1回としている。
今回の臨床試験は健康成人200人を対象に実施、9月中旬に1回目の接種、
3週間後に2回目の接種を実施して、免疫を高める効果があるかどうかを確認した。
1回目では接種した人の約4分の3が免疫効果があったが、2回目もほぼ変わりがなかった。
(日経新聞)
・・・で、別の報道。
新型インフルエンザワクチンの接種回数について議論する、
専門家らによる厚生労働省の意見交換会が11日開かれ、
国産ワクチンを2回接種しても、
1回だけの場合に比べ効果の上乗せはなかったとの臨床研究結果が報告された。
現時点では優先接種対象者の接種回数は、医療従事者を除き2回が前提だが、
今回の結果を受けて専門家らは、「基礎疾患(持病)のある成人」「乳児の保護者」、
「65歳以上の高齢者」、さらに「妊婦」についても「1回で問題ない」との見解で一致した。
会議に途中まで出席した足立信也政務官は「可能な限り速やかに行政判断したい」と述べた。
1回接種が決まれば、ワクチンを節約して、全体的に接種時期を前倒しできる可能性がある。
臨床研究は、9月中旬から国内4カ所の医療施設で、健康成人200人を対象に実施された。
報告によると、2回接種しても1回の場合と効果に差がなかった。
意見交換会では、専門家からは「1回の接種で既に抗体が上昇し、
2回目で上がる余地がなかったと考えられる」などの見方が示された。
意見交換会には、ワクチンや感染症の専門家、患者団体の代表らが参加した。(共同)
コメント:
どうにか、1回ですむようにして、
できるだけ全国民に新型インフルワクチンをいきわたるようにするための
「証拠」がどうしても欲しい政府が頭を捻ってやられたことですわ・・・。
もう、待ちかねて飛びつくように、この程度の試験結果に「ダイブ」し、
1部の大御所(御用学者)と「患者団体」代表やMediaを大いに活用し、
「公開議論」の形をとって必死に脇を固めようとしていますね(笑)。
どんな事でも、そうですけど、霞ヶ関の官僚というのは、都合の良い数字「だけ」をピックアップして、それを元に立論するのが得意ですというか・・・「習性」です。
こういう調子だから、他の(今までの)医薬品承認審査のレベルも、
良くわかるでしょう?
まあ、25%強の方は全く「免疫効果」すらも無いのだから、これから少なくとも判定後、そういう人たちには、お金を返金したらいかがでしょう?その他の人々についても、打っても、予防効果も?だけどね。重症化予防効果ですら、前から言ってるように怪しい・・・。
それにしても、何を、ワクチンのことだけ、ここまで必死にやらなきゃならんのか・・・。どうしても・・・というなら「重症化」しやすい小児やハイリスクの人々への接種で十分。国民全員になんか必要ない・・・今の新型インフルワクチンは!
そして、それよりも、彼らの方のために「今すぐ使える、新薬の限定的承認」の
方が先だし。。。
他にも重要な問題は、山ほどあるのに・・・。
P.S; ブログのタイトルを変えたら、余計に言葉がきつくなった私・・・。
まあ、もうすぐ大人しくしようかと思ってますから・・・勘弁ね!
どこへ行くiPS細胞(下)・・・のコメント
iPS(下)研究体制の差、戦略無く周回遅れに
世界に先駆けて新型万能細胞(iPS細胞)を作製した京都大の山中伸弥教授は研究、講演、政府との折衝と、日々めまぐるしい忙しさだが、欠かさないことがある。毎月の渡米だ。
行き先は米カリフォルニア大サンフランシスコ校内にあるグラッドストーン研究所。狙いは「研究の最新情報を仕入れること」。国内にいるだけでは激烈な研究競争に勝てないという危機感が後押しする。
同研究所の研究スタッフは350人。最新の実験機器に加え、博士号を持つ技術員や知的財産権の専門家らをそろえた手厚い陣容が、世界各地から集まる研究者を支える。
年間予算は60億円。連邦政府や州が拠出するほか、研究所の持つ基金や一般からの寄付で成り立っている。
これに対し、山中教授が率いる研究室の昨年度の研究費は、文部科学省や科学技術振興機構などからの助成金をかき集めても約16億円。この中には他大学との共同研究費も含まれる。
山中教授がトップを務め、山中研究室も入る京大iPS細胞研究センターも、学生や事務職員まで含めて140人余の陣容だ。海外からはドイツの研究員、韓国と台湾の留学生の3人だけ。山中教授は「知財や契約、患者への情報発信など専門性の高い人材を確保するのは大変」と語る。
日本が再生医療分野に投入するのは年200億円ほど。米国では、国立衛生研究所だけで年940億円の予算を組み、複数の大学や研究機関に配分している。
けた違いの投資をする米国に対抗し、内閣府は今年9月、最先端研究開発支援プログラムを発表した。山中教授のグループには研究費として手厚い予算が割り当てられる見通しだが、事はそう単純ではない。
山中教授への一極集中投資を疑問視するのは、米ハーバード大研究員も務める東京大の森口尚史特任教授だ。「iPS研究には、化学や数学など幅広い分野の研究者の参画が欠かせない。限られた研究者に資金が集中すれば、研究の遅れを招く」
もう一つの万能細胞である「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」を研究する中辻憲夫・京大教授も7月の講演会で訴えた。「ES細胞でも素晴らしい成果が出ているのに研究費がなく、来年からは続けられない」
戦略の無さは結果に表れている。例えば今年7月にスペインで開かれた再生医療分野の国際学会。米国の発表件数は500件以上だったのに対し、日本からは100件余。先頭を走っていたつもりの日本が今、周回遅れのランナーになりつつある。
(読売新聞)
コメント:
まあ、周回遅れとは、少し、きついナ。
私の意見の補足しておきます。
今後のiPS細胞研究の進展、あるいは臨床応用のためには、
化学や物理、情報科学などにも戦略的な投資を行うことが必要です。
「シナジー効果」が期待できるでしょう。そういった分野の底上げにもつながります。
ただし、上記の基礎科学の方々から提案しても「iPS特需」を受けにくいのが、
この国の特徴。
だいたい、この国のiPS細胞研究公募は、幹細胞研究者か医学研究者の1部しか、なかなか受からないですからね。(出来レースもあるし)
だから、政府や京大CiRAが「化合物iPS細胞を創るための化学物質スクリーニング」研究とか「パソコン内で、iPS細胞利用の仮想臨床試験を行う」研究とかの公募を設定して、上記の分野の優秀な研究者を引き寄せる工夫が必要でしょう。
それから、公募をやるときは、米国NIHの公募のように、提出された研究計画を中心に、厳正かつ公平に評価・審査してもらいたい。だめなら、どこが不足しているのか、詳細なコメントを応募者に示すのがNIHでは当たり前です。
それから、あえて年齢や性別だけで、区切るのは、問題ですよ。
例えば、2007年にノックアウトマウスの作製でノーベル賞を受賞したオリバー・スミシーズ先生は、受賞対象の研究を62歳ではじめたそうです。
どこへ行くiPS細胞(中):安全性の審査、「経験不足」の厚労省・・・のコメント
グラフには右肩上がりに伸びた線が引かれていた。iPS細胞(新型万能細胞)が体の様々な場所で働くように細工したマウスの死亡率。京都大学の山中伸弥教授が厚生労働省の会合で示したもので、マウスは日がたつにつれ、次々と死んでいったことがわかる。
死因はがん。iPS細胞はがん化しやすいのだ。
現在最も効率が良いiPS細胞の作製法はウイルスを使って4種類の遺伝子を導入する方法だ。だが、遺伝子のうち1種類はがん遺伝子で、ウイルスによっても細胞の染色体が傷つき、がんになることがある。
山中教授はiPS細胞をがん遺伝子やウイルスなしでも作製しており、こちらのマウスは、ほとんどがん化しない。作製効率は悪いが、山中教授は「数年で解決できるだろう」と強気の姿勢を崩さない。
異論もある。「安全性を証明するには、実際に移植する細胞ががん化しないことを確かめないといけない。動物実験を重ねる必要があり、臨床応用までにはかなり時間がかかる」。国立がんセンターの佐々木博己室長はそう指摘する。
仮にiPS細胞を安全に利用する技術に見通しが立っても、実用化への道はさらに厳しい。
技術が成熟しておらずビジネス上のリスクがある再生医療分野で新薬開発を主に担うのは、ベンチャーと呼ばれる新興企業だ。医薬産業政策研究所によると、新薬の審査期間は米欧では14か月前後なのに、日本は25か月もかかる。ただでさえ財務体質が弱いことが多いベンチャーにとって、この時間差は死活問題。再生医療の実用化を目指した企業が、審査期間が長引いたため、倒産した例もある。
何が問題なのか。
厚労省の慎重な審査の背景には、度重なる薬害事件の苦い記憶があるようだ。再生医療を産業化したい経済産業省幹部は「新医療技術の導入で、厚労省は国民医療費がさらに膨らむと恐れているらしい」とも語る。
開発拠点を米シリコンバレーに置くベンチャー企業の森田晴彦・最高経営責任者の見方はこうだ。「日本で承認される薬は、海外で承認済みのものがほとんど。海外の製薬企業は、開発したばかりの薬を日本では申請しないから、厚労省に審査ノウハウが蓄積されない」
政府はiPS細胞研究に数十億円の支援をしているが、このままでは国内の医療ビジネスの競争力強化は望めない。拙速な審査は論外だが、iPS細胞を牽引(けんいん)役とする再生医療の実用化のためには、審査当局の基礎体力アップと発想の転換が欠かせない。(読売新聞)
コメント:
iPS細胞のがん化問題については、ここでも折に触れて述べている。
国立がんセンターの室長氏の記事コメントの補足だが、「動物実験」をやろうにも、
適切な「疾患モデル動物」が確立されていない場合もあるので、そういうときに
iPS細胞は、新しいリサーチツールとして威力を発揮する。
iPS細胞をリサーチツール(創薬あるいは新薬の毒性評価)として」使う場合と
移植医療(再生医療)として使う場合を若干、ひとくくりにしたコメントに見受けられた。
前者なら、かなり早く実用化できるだろう。
むろん、どういう場合でも、がん化リスクを極限にまで無くしたiPS細胞であればなお良く、その点で、ヒトiPS細胞の標準化に関する研究は最優先課題となる。
一方、日本の審査体制だが、別にiPS細胞に限らず、今だに、この国の新薬審査体制は、欧米に比べて脆弱である。
これは、以前から幾人もの識者も述べており、それなりの対策が講じられているが、まともに「論文」も読めないような「給料泥棒」が多くいるので困ったもんだ・・・。
なぜ、この国では審査が遅いか。
彼らは、企業担当者のせいにするが(まあ、ときおり、不十分な資料を出してくるほうも悪いが)、審査官の英文読解能力には、いつも疑問を抱いている大学教官の1人です。
だいたい採用された「審査官」で、英文一流誌に自著の論文をしっかり書いていた奴がいないから無理もない。
・・・で、そういうことに「コンプ」をもってる上のほうの役人は、「先生、研究なんて、どうでもいいんですよ、などと暴言をはく」(俺は忘れんぞ。近いうちに問題にしてあげる。)
こういうことで、iPS細胞云々以前の問題が、この国にはあるのです・・・。
北九州市の3歳女児死亡 新型インフル、死者56人に
市によると、女児は小児ぜんそくのため7月に市内の病院に入院したが、
11月8日に呼吸状態が悪化。
9日の簡易検査で新型インフルエンザ感染が陽性となりタミフルを服用したが、
急性肺炎で死亡し、10日の詳細検査で感染が確定した。
女児の家族はワクチン接種を希望していたが、入院先に在庫がなく11月中旬の入荷を待っていた。
同室の患者3人に感染の疑いはないという。
コメント:
毎日、こういう悲劇が報道される。
急性肺炎か・・・おそらくウイルス性肺炎だろう。
この段階じゃ、タミフルだけじゃ、だめなんだよ。
だから、前からいってるように・・・。現場は必死だよ。
どこへ行く iPS細胞(上):読売新聞のコメント
今日から、表題のテーマに関するコメントを簡単にしておきます。
まずは、「iPS(上)実用化へ特許戦争激化…京大 対 海外勢」の記事から。
投機的な「技術あさり」も脅威
再生医療の切り札として、世界から注目されるiPS細胞(新型万能細胞)。京都大学の山中伸弥教授は今年、その開発者として米医学界で最も権威のあるラスカー賞を受賞し、将来のノーベル賞も確実視されている。だが、iPS細胞の実用化には課題が多く、日本勢はビジネス展開に向けた準備では苦戦している。その底流を探った。
◆
「さっきの話、ちょっと聞かせてください」。山中教授の研究室で毎週月曜に開かれる報告会。その終了後、実験室に戻ろうとする研究員の1人を追いかけたのは、京大iPS細胞研究センターの高須直子・知的財産管理室長だ。
「手続きが差し迫っている時は、僕より先に高須さんが実験結果の報告を受けることもある」と山中教授。高須室長は報告会に出席し、これはと思う成果があれば、特許出願の手続きを始めるのが仕事だ。特許などの知的財産管理を担当していた製薬会社から昨年6月、山中教授が引き抜いた。
iPS細胞作製の特許は、4種類の遺伝子を導入する京大の手法が国内ですでに成立している。京大は、がん遺伝子を除いた方法など数十件も国際出願中だが、現在のiPS細胞の作製技術は安全性などに問題が多く、改良が必要だ。
新しい方法が出現すれば京大の特許は価値を失う恐れがある。実際、2007年3月以降、海外でiPS細胞関連の出願が相次いでいる。京大が新規特許獲得を重視するのは、早くiPS細胞の作製法を完成させ、関連技術を押さえなければ、大発見の果実を海外にさらわれてしまうからだ。
戦略も問われている。05年12月、山中教授が最初に出願し、後に論文発表したiPS細胞の特許は、マウス実験に基づいていた。教授と異なる方法で人間のiPS細胞を作製、07年6月に出願した元バイエル薬品の桜田一洋・ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャーが語る。
「同じ研究者でも企業と大学では発想が全く違う。企業ならマウスの成果を発表したりしない」。学問では普通の体細胞からできたことが重要なのだが、企業にとっては人間で実現しなければ商品化できないから意味がないというのだ。
人間のiPS細胞を新薬の毒性を確かめる「道具」として使う手法は実用化目前まで来た。iPS細胞を心筋や神経の細胞に変化させた上で、新薬候補を投与し、細胞の反応を見る。この方法が普及すれば、動物実験に依存する現在の医薬品開発手法は激変する。
だが、各種細胞に変化させる技術はES細胞(胚(はい)性幹細胞)での研究が先行。iPS細胞に応用するには、こちらも国内外で複雑な特許の調整が必要になる。
現状を打開するため、京大は昨年7月、特許管理会社「iPSアカデミアジャパン」を設立した。同社はすでにiPS細胞作製に使う試薬の製造・販売などに関して国内5社と契約した。大阪大や岐阜大からも実用化に役立つ特許の寄託を受け、米ベンチャー企業とも水面下で交渉を進める。
海千山千の世界では、これでも安心できない。iPSアカデミアジャパン知的財産・法務部の白橋光臣部長は今、「パテント・トロール(特許の怪物)」と呼ばれる動きを警戒している。
有望な技術の特許権を安く買いあさり、実用化が見えてきた段階で高値で売りつけるビジネス。「せっかくの技術が高すぎて使えなくなり、iPS細胞の実用化が遅れてしまう」。白橋部長は今後、海外での訴訟もあり得ると考えている。
iPS細胞を巡って繰り広げられている特許戦争。政府が膨大な研究予算を投じるiPS細胞研究は、投資に見合う成果を出せるのだろうか。
iPS細胞の特許をめぐる主な動き
2005年 12月 京大、作製技術の国内特許を出願
06年 8月 山中教授、マウスでの作製を発表
12月 京大、作製技術(人を含む)の国際特許を出願
07年 3~6月 米ウィスコンシン大など3大学と独バイエル社が人での作製に関する国際特許を出願
11月 山中教授と米ウィスコンシン大、人での作製を同日発表
08年 9月 京大、作製技術(人を含む)の国内特許を取得
10月 山中教授、ウイルスを使わない方法での作製(マウス)を発表
09年 2月 独バイエル社、人での作製に関する特許権を米バイオベンチャー企業に譲渡
4月 京大、米バイオベンチャー企業と研究協力の契約締結
(読売新聞)
コメント:
まず、iPS細胞に限らず、どんな医学研究の特許も、臨床試験に進めなければ、「紙くず同然」になります。
そして、その試験中に問題(看過できない副作用の出現や効果が期待ほど得れなかった・・)が生じた場合、その時点で終了。
要は、最終的に、臨床応用されないと、「経済的リターン」は望めません。
ということで、ハイリスク・ハイリターンの代表格が、医薬品ビジネスなのです。
期待の大きい、iPS細胞ですが、前にも書いたように、かなりの部分の特許を戦略的に海外勢に抑えられています。
京大は「基本特許」があるから大丈夫というわけではありません。
iPS細胞を臨床応用していくには、無数の特許が必要です。
そこで、その戦略的な組み合わせを頭を捻って考えるのが、上記にあるような「知的財産」管理の専門家です。
ただし、ハーバードやMIT、ウイスコンシンなどの知的財産チームの専門家に比べれば、知識・経験・戦略のどれをとっても、日本は見劣りします。
彼ら、欧米の専門家は、くぐってきた修羅場の数が違う・・・。
ただし、日本政府では、大学・産業界とともに、バイオ知財の人材養成を行ってきました。(日本政府は単純に手をこまねいていたというわけでは、ありません。)
ただ、もう、10年近くになりますか・・・。
どうやら、1部の「評論家」が育っただけのようです。
優秀な方々は、すぐに「金にならない」バイオ・医学分野は避けて、情報通信分野・工学などの「知財専門家」として、ご活躍されています。
経済不況が、この流れに一層拍車をかけている・・・というのが現状です。