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どこへ行くiPS細胞(下)・・・のコメント

iPS(下)研究体制の差、戦略無く周回遅れに

 世界に先駆けて新型万能細胞(iPS細胞)を作製した京都大の山中伸弥教授は研究、講演、政府との折衝と、日々めまぐるしい忙しさだが、欠かさないことがある。毎月の渡米だ。

 行き先は米カリフォルニア大サンフランシスコ校内にあるグラッドストーン研究所。狙いは「研究の最新情報を仕入れること」。国内にいるだけでは激烈な研究競争に勝てないという危機感が後押しする。

 同研究所の研究スタッフは350人。最新の実験機器に加え、博士号を持つ技術員や知的財産権の専門家らをそろえた手厚い陣容が、世界各地から集まる研究者を支える。

 年間予算は60億円。連邦政府や州が拠出するほか、研究所の持つ基金や一般からの寄付で成り立っている。

 これに対し、山中教授が率いる研究室の昨年度の研究費は、文部科学省や科学技術振興機構などからの助成金をかき集めても約16億円。この中には他大学との共同研究費も含まれる。

 山中教授がトップを務め、山中研究室も入る京大iPS細胞研究センターも、学生や事務職員まで含めて140人余の陣容だ。海外からはドイツの研究員、韓国と台湾の留学生の3人だけ。山中教授は「知財や契約、患者への情報発信など専門性の高い人材を確保するのは大変」と語る。

 日本が再生医療分野に投入するのは年200億円ほど。米国では、国立衛生研究所だけで年940億円の予算を組み、複数の大学や研究機関に配分している。

 けた違いの投資をする米国に対抗し、内閣府は今年9月、最先端研究開発支援プログラムを発表した。山中教授のグループには研究費として手厚い予算が割り当てられる見通しだが、事はそう単純ではない。

 山中教授への一極集中投資を疑問視するのは、米ハーバード大研究員も務める東京大の森口尚史特任教授だ。「iPS研究には、化学や数学など幅広い分野の研究者の参画が欠かせない。限られた研究者に資金が集中すれば、研究の遅れを招く」

 もう一つの万能細胞である「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」を研究する中辻憲夫・京大教授も7月の講演会で訴えた。「ES細胞でも素晴らしい成果が出ているのに研究費がなく、来年からは続けられない」

 戦略の無さは結果に表れている。例えば今年7月にスペインで開かれた再生医療分野の国際学会。米国の発表件数は500件以上だったのに対し、日本からは100件余。先頭を走っていたつもりの日本が今、周回遅れのランナーになりつつある。
(読売新聞)



コメント:


 まあ、周回遅れとは、少し、きついナ。


私の意見の補足しておきます。


 今後のiPS細胞研究の進展、あるいは臨床応用のためには、

化学や物理、情報科学などにも戦略的な投資を行うことが必要です。

「シナジー効果」が期待できるでしょう。そういった分野の底上げにもつながります。

 ただし、上記の基礎科学の方々から提案しても「iPS特需」を受けにくいのが、

この国の特徴。


 だいたい、この国のiPS細胞研究公募は、幹細胞研究者か医学研究者の1部しか、なかなか受からないですからね。(出来レースもあるし)

 だから、政府や京大CiRAが「化合物iPS細胞を創るための化学物質スクリーニング」研究とか「パソコン内で、iPS細胞利用の仮想臨床試験を行う」研究とかの公募を設定して、上記の分野の優秀な研究者を引き寄せる工夫が必要でしょう。


 それから、公募をやるときは、米国NIHの公募のように、提出された研究計画を中心に、厳正かつ公平に評価・審査してもらいたい。だめなら、どこが不足しているのか、詳細なコメントを応募者に示すのがNIHでは当たり前です。


 それから、あえて年齢や性別だけで、区切るのは、問題ですよ。

例えば、2007年にノックアウトマウスの作製でノーベル賞を受賞したオリバー・スミシーズ先生は、受賞対象の研究を62歳ではじめたそうです。