基礎マスターと商訴集中講義 ~入門講座再考~ | 司法試験情報局(LAW-WAVE)

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伊藤塾 に『基礎マスター』と『商訴集中講義』呉講師 )という講座があります。

 

講座評をしたいわけではないのですが、これらの講座の比較から見えてきたものについて、私の感じた正直なところを述べてみたいと思います。

 

テーマを一言でいえば、

「本当に入門講座を受ける必要はあるのか?」

ということになります。

 

あるいは、予備校が用意している

入門講座の類を受講せずに、全く同様の効果を潜脱的に享受する方法はないのか

を検討してみたいと思います。

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私は、『商訴集中講義』のカセット(現在の最新版よりも一つ前の版)をヤフオクで入手して、民訴と刑訴に入門しました。

ちなみに、補講込みで1科目7回(1コマ3h)くらいの講座でした。

 

入門書(伊藤真の講義再現版 レベルのテキスト)を一読したくらいの前提知識はたしかにありましたが、訴訟法については、ほぼこの講座で「入門」したと言っていいと思います。

(ちなみに誓って嘘は言っていません)

 

その後、同じく呉講師の『基本書基礎マスター』という講座で、(商法に加えて)民訴と刑訴を聴きました(憲民刑3科目は先に受講済みでした)。

こちらは1科目22回という大型講座でした。

 

入門講座を受講していなかったので不安があったこと、そして、22回もある講座なら何かもっと大きなご利益があるに違いないと考えたことが、民訴・刑訴について2度目の受講を決めた理由です。

 

ここで、民訴・刑訴について両方の講座を比較検討した結果、分かった事実があります。

若干内容がかぶる部分もありますが、いちおう3つに分けて示したいと思います。

 

 

1科目7回の商訴集中講義で十分に「入門→インプット卒業」が可能でした。

 

基本的な定義や概念の説明から始まって、少なくとも論文で必要とされる論点まで、つまりは通常の基礎マスターの内容まで重要ポイントはほぼ省略されることなく網羅されていました。

たしかにその分講義の進行は速かったですが、所々テープを止めながら聴いていけば、初心者レベルでも問題なくフォローすることができる内容でした。

 

たまに、「商訴集中講義は中上級者の復習講座なので、初学者が聴いてもついていけないよ」みたいなことを言う受験生がいるのですが、大嘘です。初学者でも十分についてくことができます。

私はお世辞にも飲み込みが早いとは言い難い人間ですが、その私でも完全に大丈夫でした。

 

 

両講座の学習効果(学習内容)は、回数の違いがあるにもかかわらず、ほぼ同等でした。

 

少なくとも、インプット講義として聴いておかなければならない内容は、商訴集中講義のほうに完全に網羅されていました。

内容の網羅性が同等というだけではなくて、説明の分かりやすさすら同等でした。

 

というか、より正直に言ってしまえば、最初の方の記憶が薄れないうちに全体を一気に概観できるというメリットがあったので、商訴集中講義のほうが基礎マスターよりも分かりやすいと感じました。

 

ちなみに、受講したのが「基礎マス→集中講義」の順だったのであれば、先に基礎マスを聴いていたから次の集中講義を分かりやすく感じることができたんだ、と解釈することも可能かもしれません。

 

しかし、実際に私が聴いたのは「集中講義→基礎マス」の順です。

つまり、2回目復習として基礎マスを聴いたわけです。

にもかかわらず、より分かりやすいと感じたのは、最初に聴いた集中講義のほうでした。

 

ここで集中講義のほうを分かりやすいと感じた理由を、私なりに推測してみます。。

よく、「司法試験は下りのエスカレーターを駆け上がるようなものだ」と言われることがあります。これはすなわち、司法試験のような膨大な範囲を学習しなければならない試験では、ダラダラと時間をかけて勉強していると、いつまで経っても内容が身につかないという意味です。

 

私は集中講義(7回)を1週間で終わらせました。

テープを止めたり調べものをしたりしながらだったので、1日に7~8時間はかけたと思いますが、それでも1週間という短期間で一気に全体を終えてしまったことが、上記の学習効果につながったのは間違いないありません。

 

一方の基礎マスのほうは、1ヶ月くらいかけて「ダラダラ」とやってしまいました(通学講座ならば2ヶ月はかかってしまうところでしょう)。

これが基礎マスを分かりにくいと感じさせた主な原因だと思います。

 

司法試験の世界では、入門講座を受講したのに再度同じような講座を受け直す人や、同じく入門を受け終わったのに別のテキストの読込みに走る人、はたまた基本書を読み終わったのにまた別の基本書に手を出す人…といった、一言でいえば、いつまでもインプットのスパイラルから抜け出ることができないタイプの受験生が非常に多いです(私自身にもそういう面がありました・・)。

 

これは、上記の「ダラダラ」した勉強に原因があるのではないでしょうか。

ダラダラ時間をかけて勉強していると、インプットが終わった達成感のようなものがいつまで経っても得られず、インプット面での消化不良感のようなものが残り続けてしまいます。

その結果、論文・短答などの実践的な勉強に移らなければいけない段階になっても、もう一度インプットからやり直したくなってしまうのです。

 

 

受講料と時間の面でも、商訴集中講義のほうが圧倒的にお得です。

 

まず、集中講義のほうが受講料がだいぶ安く済みます

 

受講時間についても、基礎マスを1回聴く時間で集中講義が3回聴けてしまうという機会利益の観点を併せて考えると、単なる回数の少なさ以上に集中講義のほうが時間的利益が高いことが分かります。

 

 

以上が両講座の比較検討の結果です。

 

①②③すべて『商訴集中講義』のほうがお得だという話でしたが、一方の基礎マスのほうがお得だという面は、いろいろ考えたてみたのですが、実は何ひとつないかもしれません。

 

強いて言えば、予備校側にとっては、学生が基礎マスを受講してくれたほうが「得」であるのは間違いないでしょう。

 

①②③の事実から感じたのは、伊藤塾のような予備校が基礎マスターのような大型講座を設定しているのは、おそらくはもっぱら予備校側の事情(利益)だということです。

実際は、彼らのスキルを持ってすれば、基礎マスターの半分orそれ以下の回数で同じことができるに違いありません

 

具体的にいえば、憲・刑・商訴で数回、民法でも10回ちょっとあれば十分に可能だと思います。

 

そうしないで、わざわざ1科目につき何十回もの回数を設定しているのは、情報密度を下げることで回数を増やして、その分の受講料を受講生から徴収するためだとしか考えられません

一方の受講生の側も、基礎マスターのような情報密度の低い一見聴きやすい講座を、ただ聴きやすいという理由だけで何か価値あるものと勘違させられてしまっているのです。

 

伊藤塾にそこまでの意図があると断言はできません。

しかし、少なくとも私には、そう疑いたくなるくらいに呉講師や本田講師などの一部の伊藤塾講師の講義スキルは「高い」と感じられます。

 

いずれにせよ、入門講座の回数が、従来のものよりもずっと少なくて済むことは間違いありません。

講義回数の少ないものでも、基礎マスターと同じ効果を期待できる講座は(数は少ないですが)受験界にいくつかは存在しています。

そこで、特に時間のないロー未修生の方などに提案なのですが、基礎マスや他校の入門講座を聴く時間がないのであれば、今回紹介した『商訴集中講義』や、同じく伊藤塾・本田講師の『憲民刑集中講義』(←こっちは聴いたことはないですが)などを入門講座の代わりにしてはいかがでしょうか。

これまで述べてきたように、質・量いずれの点でも、これらの講座で十分に間に合うと思います。むしろ、こういったコンパクトな講座を何度も聴くほうが、知識の定着に資するとさえ思います。

【追記】

あとでいただいた情報なのですが、憲民刑集中講義は、商訴集中講義よりは上級者向けだということです。本田講師の講義力や商訴のほうの講座趣旨から考えて、憲民刑のほうもゼロからでも大丈夫な講座なのではないかと思ったのですが、憲民刑のほうはある程度(それなりの入門書等を読み終えるなどの)勉強をしてから聴いたほうが良いようです。

 

これから司法試験に入門される方にも、この案を検討されることをおすすめします。

 

もっとも、以上のことは、講義技術を徹底的に鍛え上げている一部の優秀なプロ講師に限って言えることです。この点は誤解のないように。

ゼロスタートから→内容の網羅までを、数回程度の回数で講義できるのは、現状ではせいぜい伊藤塾の数名の講師くらいでしょう。

たとえば、受験界では、辰已西口講師 や原講師などが通常の入門よりも回数を絞った入門講座をやっていますが、残念ながらこれらの講座は(明らかな準備不足もあるのでしょうが)質・量ともに商訴集中講義はもちろん基礎マスターにも遠く及びません。彼らの講義力では、講義時間を3分の1に絞れば、そのぶん講義密度も3分の1になってしまうだけだと思います。もっとはっきり言ってしまうと、元々の単位時間内の情報密度が、呉講師や本田講師により低いわけから、辰已の入門講座が講義回数を3分の1に絞ってしまえば、実際の情報量は伊藤塾の3分の1どころか、もっと少ない、5分の1、6分の1の情報量まで下がってしまうことになるだろうと思います(辰已の入門講座の質・量の貧困さについては、私自身がヤフオクで身銭を切って確認したことがあることなので、申し訳ないですがこの点は自信を持って断言できます)。

LEC工藤講師 の「3倍速インプット」なども、回数的には商訴集中講義と似たような講座ですが、ストリーミングで試聴した限りでいうと、知識ゼロの初学者が理解するのは完全に無理な内容だと感じました。「ゼロスタート」も、「内容の網羅」も、いずれも実現できていません(そもそもそういう趣旨の講座ではないのかもしれません)。普通の上級者向けの、ポイントを絞ったインプット講座だと思います。

結局、上記提案の候補となる講座は、今のところは伊藤塾のいくつかの講座に限られるでしょう。

【追記】

2013年春から、こちらの講座 がスタートしました。

今回紹介した商訴集中講義と同趣旨の講座です(こちらは基礎講座≒入門講座です)。各科目数回程度の回数で、「ゼロスタート」(入門講座の機能)から「内容の網羅」(総まとめ講座の機能)までを実現しています。

商訴集中講義との違いは、①条文を軸とした講座であること、②主要7法が揃っていること、③講義音声をDLできること、④テキストが短答にも論文にも使える逐条式のサブノートであることetc…です。

講義と教材に興味を持たれた方は、まずは講義の試聴をしてみてください。

半年くらい前、入門講座(講師)はどこ(誰)にすべきか というエントリーで基礎マスをおすすめしましたが、今回はその裏技を書いてみました。

前回は、これから入門を受けようという方に対してあんまり一般的でないことを書くのはどうかなと思ったことと、こっちがより正直なところですが、この事実を多くの受験生に知らせてしまうことに一受験生として多少の躊躇を覚えたことがあって、「裏技」の公開に踏み切れませんでした。

 

ですが、最低限入門書の類を一読しておけば、この提案は間違いなく誰にでも実行可能です。

 

実際は、入門講座を受講しなくても、同じ効果を上げる方法はあるのです。

 

入門講座に一科目何十回もの回数は(本当は)必要ありません。

 

この裏技を使えば、お金も安く済みますし、時間も短くて済みます(=早く復習サイクルに入れます)。

結果的に、入門講座よりもはるかに高い学習効果を得られるだろうと思います。