『LOVE&THANKS』11月号:「大麻サイコウ。」(その2) | ほたるいかの書きつけ

『LOVE&THANKS』11月号:「大麻サイコウ。」(その2)

 というわけで、前回のつづき。江本の文章。なお、予想外に沢山のブクマをいただきました。そのうち幾つかのものについて、一番下で御返事差し上げます。

 さて、江本の文章がどれくらい電波かというのは、小見出しを抜き出せばよくわかるだろう。特に章番号などはついていないので(見開き2ページのみ)順に書いておく。なお記事自体のタイトルは「麻の復興は、世界平和への一番簡便な方法です」だ。
麻の高周波
言霊の周波数合わせ
宇宙との中継をする麻
小国日本の近代史
虚と実のエネルギー
大和魂は世界平和のこと
闇の勢力の終焉
アメリカよ、大麻を解禁せよ
どうです、冒頭からズッコけるでしょう。これだけでも十分に目的を果たしたと言ってもよいのだけど、もう少し詳しく紹介してみましょうか。

 「麻の高周波」の最初の3パラグラフを引用しよう。
 我が国における大麻との共生は波動の理論そのものであると気づきました。
 日本における大麻は、国の歴史と同じくらい重要なものでした。古神道では神宮大麻とも言い、精神性を大麻が守護していたと考えていいでしょう。大麻の衣装を着ると、非常に、みそぎ的な、高邁な精神になりますね。「神道=振動」です。国家として一体になっての天皇制には、いつも麻がありました。神社の儀式には必ず麻が使われます。
 私はそれを敢えて「麻の高周波」と呼んでいます。現象面としてはまったくそういうことなんです。私は、波動の三原則として、共鳴現象、純粋性、相似象を挙げます。それと言霊を併せ考えて、やはりこれは神、大いなる意志による仕業であるとも考えます。
ここまで意味のバランバランな文章が一つのロジックになっていると思っているらしいあたりが凄まじい。「神道=振動」て。「国家として一体になっての天皇制」が大好きなんだな、このヒトは。

 次の「言霊」は1パラグラフしかないのだけれども、全文が電波だ。変なところを引用していると全文引用にしかならないので、誰の目にも明らかなおかしなところだけ紹介しておこう。
(…)古神道では言霊という周波数合わせをします。周波数が合う「共鳴」、また、ドレミファソラシドの理論、オクターブの法則によって、300メガヘルツのものは、3000、300000、300000メガヘルツは共振するという、相似象、純粋であればあるほどエネルギーの高感度が高くなるという純粋性が、古神道の儀式にみられます。
…最後のところは頭痛が痛いが、それはおくとして。いやあんた、10進数で共振論じてどうするの。300だったら600、1200、…といかないといかんでしょ。しかもそれは「ドレミファソラシド」と関係ないよ。西洋音楽にどっぷりはまってる自分に自覚がないんだね。雅楽が「ドレミファソラシド」かよ。

「宇宙との中継をする麻」の冒頭。
 神主さんの祝詞と、宇宙を中継するのが、麻の役割だと私は思っています。
神主さんの声だけでは届きづらいから、麻で高周波に変換して中継させるんだって!なんでかって?それは…
麻は、高周波であると同時に、麻それ自体にドレミファソラシドが入っていると考えられます。どうも私には、麻は、ミやソなどの特定の音だけを持っているのではなくて、すべて含んでいるように思える。だから、麻からいろんなものができ、多様性がある。360度方向に共鳴する、ということは、360度方向の性質を持っている、ということです。何でもできちゃうんですね。360度方向、ということはもちろん、ドレミファソラシドのすべてを指します。
「もちろん」と言われたって困るわい。このヒト、「音」とはなにかわかってないんだろうな。講演会では音叉を複数持ってきて共鳴の実験をやるそうだけど、目の前で自分がやってることがなんなのか理解していないんだろう。もちろん本人は理解したつもりになっているのだろうけれども。

 さてここから歴史の話である。右翼思想と親和的であることがわかるだろう。
 「近代史」の後半を引用する。太字強調は引用者による。
(…)今度は第一次世界大戦です。ドイツと同盟を結び、またこれも大変な成果を上げて、アジアに日本ここにあり、というようなことになった。大東亜共栄圏が形づくられていくわけです。1917年から20年後の大東亜戦争まで、連勝、連勝、連勝ときたわけですが、最終的にアメリカが加担して、連合軍の巨大なる軍事力に押されていきます。日本はあの時、人口1億もなかったと思う。そういう国が、アメリカ、ロシア、ヨーロッパを含めて、すごい国の数と軍事力とを相手にほとんど一国で勝ってきたわけです。しかし最終的には広島と長崎に原爆が落とされて、敗れてしまいます。
ここにはアジアの国々の視点が完全に欠落している。来年は日韓併合100年を迎えるわけだが、こんな発想でどうやって連帯していこうってんだろうね。大東亜共栄圏なんてものいまだに信じてるの?

 次は噴飯ものなので、全文紹介する。「虚と実のエネルギー」。これについては、関連する内容が前号にも載っており、このエントリで簡単に紹介した。
 あの時、なぜ原爆が使われたんでしょう。まだ歴史的に明らかになっていない部分があります。私はこれを、虚実のエネルギーという考えで解き明かそうと思います。
 神がかり的な日本のエネルギーは、天照大神を代表とする虚の宇宙エネルギーと共鳴しています。もう崇高な所までいっているから、それを打ち破るには、虚のエネルギーでは対抗できない。虚に対して実、物理的な強いエネルギーである原子爆弾で対応せざるをえないだろう、と考えたのではないでしょうか。そこで、二発の原子爆弾を使って日本の神がかり的な、天照大神のエネルギーの結界を破った。
 では、原子爆弾というのは一体どういうものでしょうか。核という言葉があるように、現実の、いまの物理の世界で立ち入ることのできる物の世界の最小単位です。しかしそれは、やはり波動的な物理性を持っているはずです。そこに、殺略(原文ママ)や破壊などの怨念的な波動を組み込んで核分裂をさせるものだった。だから、原子爆弾は、ウィルスのように後世までも白血病などの病原菌的な働きをして、人々を苦しめた。
 その後、アメリカは占領政策で日本へ乗り込みました。そしてその時に3つの政策を実行しました。1つは天皇制の廃止、1つは国家神道の廃止、1つは大麻栽培の廃止です。その3つを分析しますと、占領政策を考えた頭の良い人は、短い歴史で、世界に存在感を示した、強い日本国民の精神性や、日本のエネルギーを見事に理解していたと思います。
 それが効を奏して、日本人の大和魂を破壊した。以来、日本がアメリカに対して追随せざるをえなくなった。ですから、麻の復活は、日本人の大和魂を復活させることでもあるわけですね。
…あやまれ。歴史学者と物理学者と被爆者にあやまれ。学者にはあやまらんでもいいけど、被爆者にはあやまれ。なんと失礼な。
 順番に見ていこう。
 なにを指して「明らかになっていない部分」と言っているのか定かではないが、確実に言えることは、「虚実のエネルギー」などというわけのわからんもので解き明かすことは不可能である、ということだ。
 次に、確かに当時の日本はある意味「神がかり的」であったろう。最後は神風が吹くと信じて-教育現場では教師が子どもに最後まで叩き込んでいた-戦っていたわけだから。しかしそれを「崇高」などと表現するのは歴史からまったく何も学んでいない者のみが言えることであろう。大体原爆が「天照大神のエネルギーの結界を破った」なんて出来の悪いファンタジーでしかない。
 「では、原子爆弾というのは~」のところは意味がわからない。何が「最小単位」なのか?文章の構造からは「原子爆弾」ということになるが、どういうことだ?原子核に波動的な性質はもちろんあるが(江本の理解とは完全に違っているが、量子力学的にということ)、「怨念的な波動を組み込んで核分裂」などということはない。断固としてない。100%ない。原爆で苦しんだ(でいる)人々に対してこんな失礼な話はない。
 さらに「3つの政策」であるが、「天皇制」が戦前の「絶対主義的天皇制」を指していると善意で解釈してあげるとして、この2つと大麻栽培の廃止を並べるところが江本の大麻中心史観のよくわかるところである。
 さらに、戦後日本のアメリカ追随ぶりは実際目に余るものがあるが(この間の普天間基地撤去問題における岡田外相の態度などもそうである)、麻でどうこうなんていったいどこの世界に生きているんだ?

 次の「大和魂」は飛ばして、「闇の勢力の終焉」。内容は昨日のエントリとほぼ被るので、最後の部分のみ。
もともとは、大麻の主生産地はアフガニスタンであったといわれています。現在のアフガニスタンは、世界でもっとも疲弊した国と言われています。それは、国の植物と言われ、主農業生産物とも言われる、大麻を根底から根こそぎとられてしまったせいであろうと思います。
アフガンの人々にも失礼だな。

 これは、最後の「アメリカよ、~」の冒頭の文章と対になっている。
 アメリカのオバマ大統領が、「アフガニスタンが一番問題であろう」と言っていますけれども、どうってことはない。自分たちが勝手に禁じた大麻の栽培を、また元に戻すだけで、簡単に解決できることなんですね。
で、なんで「そういう、誰でも分かるような計画が否定されているのか」というと、「闇の勢力」のせいだ、と。
 次のパラグラフは吸引についてのもの。
 マリファナは、タバコよりもずっと被害のないものであるし、薬にさえなる。全世界的にみて、マリファナを吸って、凶暴な事件が起きたという事例は一件もない、ということです。中毒性も絶対ない。実際なんにも悪いことがない。
じゃあなんで世界的に禁止されているのだ?禁止されているのは日本とアメリカだけじゃないぞ。
 最後。
 大麻を禁じる理由はたった一つ。現在の製薬業、林業・パルプ業、石油生産業などの擁護でしかない。我々の将来の子供たちに対して、麻以外の材料は、大変な害を与えるものでしかないわけです。麻をいかに上手に使うか、です。なぜ日本の官憲はエキセントリックに取り締まるのか。おかしいでしょう。
 どこでどういう所で、これを訴えていくか。やっぱり、これはもう、月刊『LOVE & THANKS』が中心になって訴えていくしかないですね。
というわけで、今後も大麻解禁論が主張されていくようだ。


ここから、前回のエントリにいただいたブクマコメントについて、いくつか補足を。すいませんが敬称略で。すいませんすいません。
north-pole,  ?? 戦前の日本人はおおいに大麻を吸引していた・・・ていいたいのか?
どうも、戦前に吸引の習慣はなかったようですね。戦後に米軍とともに持ち込まれたようです。
felis_azuri , 「心理的な依存」先が増えるの大歓迎みたいな調子だなぁ。
さすが鋭い。(^^) 赤星氏は同じ記事の中でこんなことを言っています。
調べるうちに驚いたのは、薬物乱用を防止するのが正しい、という神話があることです。そういう視点では真実は見えません。薬物に限らず、人は何かに依存していかなければ生きていけない動物なんだ、という着眼点を持つ必要があります。薬物に限らず、恋愛、ゲーム、甘い物、スポーツに依存する人もいるわけです。依存する一つに薬物と言われているものがある。何かに依存する自由とそれを選択するのは個人の自由ではないでしょうか。長い歴史の中で市民権を得たかどうかの差があるだけのような気がします。
「だって他の人だってやってるやん」メソッドですかね。「依存」というキーワードですべてを同列に扱い、大麻を相対化する。「市民権を得たかどうかの差」がどれだけ重要かということが意図的にぼかされていますね。
ezookojo 栽培による大麻繊維自体は日本の産業に必要だと思うんだが、このへんうまくどうにかならんもんかね
検討の余地はあると思いますね。ヘンプとして品種改良もされているので。
goingzero 水が憎ければ大麻まで憎し?
私の場合、水伝と大麻はそれぞれ批判の理由が全く違いますので、その点誤解なきよう。前回エントリの末尾にその旨書いております。水伝に批判的で大麻には肯定的、という方はもちろんいてもいいわけです。私はそうではない、ということです。
monono 江本みたいな人がナショナリズム肯定するのは意外。支持者層的に反国家で話すものだと思ってた。|"大麻を解禁した場合に何が起こるかは科学の問題になるが" これ科学じゃなくて社会では、と思った。
むしろ、超国家主義的な臭いがしますね。行動規範を外部に設定し、それに従うことが素晴しい未来を開くものである、と。ただ論理的ではないので、ニューエイジというくくりで、「きくちゆみ」のような(一見)左翼的な人とも親和性があるように見える、と。後半については、自然科学という意味ではなくて、客観的に検討可能であるという意味で「科学」と表現しました。「価値」に対しての「科学」です。社会で何が起きるかは客観的に分析・検証することが(原理的には)可能である、という程度の意味です。わかりにくくてすいません。

その他、植物についてコメントいただいた皆様、ありがとうございました。もちろん、それ以外の方々も!

なお、江本勝と大麻の関係については、以下のエントリでも取り上げています。
江本勝と大麻
「水からの伝言」に書いてあること(1)
ふんどしウェーブ(『Hado』9月号)
『共鳴によってのみ生命の音は振動し続ける』その5 (のコメント欄)