『水からの伝言4 水はことばの鏡』 | ほたるいかの書きつけ

『水からの伝言4 水はことばの鏡』

 というわけで、江本勝の『水からの伝言4 水はことばの鏡』(以下「水伝4」)です。
 「水伝」については、書かなければならないこと(その非科学性・欺瞞性)は既に一通り書いてしまったので、「水伝4」に関しては、今回はその全体的な流れを、今後は気がついたことを少しづつ書いていきたいと思っています。なお本ブログにおける「水伝」関連のエントリについては、サイドバーの「ブログテーマ一覧」から「水からの伝言」を選んでください。特に「水伝」の作り方については
 水からの伝言はどうやって作られているのか(1)
 水からの伝言はどうやって作られているのか(2)
 水からの伝言はどうやって作られているのか(3)
 水からの伝言はどうやって作られているのか(4)
 水からの伝言はどうやって作られているのか(5)補足
を参照してください。「水伝」はその構造上、自然科学的な議論に留まるわけにはいきませんが、問題の全体像を把握するには、
 「水からの伝言」を信じないでください (学習院大学・田崎晴明氏)
 『水からの伝言』の基礎知識 (PSJ渋谷研究所X)
 ニセ科学批判まとめ %作成中
を見ると良いと思います。

 さて。
 まず気づくのは、判型が今までと異なっている。A4変型版というやつ。レイアウト上の違いについてはこちら で今回製作に携わった方が書いてらっしゃる。内容も豊富…と言っていいのかわからないが、分量は増えている。

 「水伝4」は、批判者にとってもある意味「買い」かもしれない。「そろそろ一冊ぐらい手もとに置いて批判するかなあ」と思ってらっしゃる方は、この「水伝4」がいいのではないかと思う(決してオススメしているわけではありません。もし一冊買わないといけないとするならば…です。ま、「水伝」より古本屋で『水は答を知っている』を買うほうが生産的(?)かもしれませんが、写真集ならば「水伝」シリーズになるので)。
 「水伝4」には、いままでの「水伝」に載っていた写真も載っている。例えば、「ありがとう」「ばかやろう」の写真も載っている。世界の言葉で「ありがとう」を見せた場合も載っている。またこのブログでも取り上げた「魚のマーク」や「大麻(おおあさ)」の写真も載っている。
 他にも興味深い(色々な意味で)写真が満載なのだが、それはおいおい取り上げるとして、とりあえず目次を示す。

 はじめに
 第1章 ことば
 ・「ありがとう」のかたち / ・人生のことば / ・愛のかたち / ・スピーチの波動 / ・水の泣き顔
 第2章 アート
 ・世界の名曲 / ・日本の名曲 / ・写真を見せる
 第3章 祈り
 ・五次元世界 / ・宗教と祈りの力 / ・「アッラーの99の美名」から
 ・1999年7月27日セレモニー「ありがとう琵琶湖」
 第4章 さまざまな実験
 ・テレビやパソコンを見せた水の結晶 / ・フラワーエッセンスの結晶 / ・EM-X
 ・水道水の実験最新報告 / ・水は哲学する / ・不思議なできごと / ・読者からの実験報告
 ・「水の氷結結晶写真」撮影の方法 / ・エモト・プロジェクト
 あとがき

なお第3章の琵琶湖の件については、私もこのエントリ で批判しているので参照されたい。
 いかがでしょう?気になるでしょ?五次元だとかEM-Xだとか。五次元についてはこんな取り上げ方されてリサ・ランドールがあまりに可哀想なので、いずれ必ずエントリをあげたいと思っています。まあ「異次元は存在する」とか「五次元時空の謎を解く」とか邦題がつけられちゃったら食いつかれるのは仕方ないのだろうけど。あ、リサ・ランドールはまっとうな科学者です。念のため。

 「水伝4」で一番興味を持ったのは、第1章「水の泣き顔」だ。ここでは、江本により「悪い言葉」とされた単語を見せた場合に結晶がどうなるかを示している。つまり、江本が何を悪いと考えているかが見えてくるのだ。
 取り上げている単語は以下の通り。「ばかやろう」「ムカツク・殺す」「You Fool」「Dummkopf(ドイツ語でばかやろう)」「Espece d'imbecile(フランス語でばかやろう)」「癌」「できない」「どうせ無理」「2001年9月11日NYC」「ダメだよ」「ストレス」「苦手」「インスタント食品」「クローン人間」「疲れた」。結晶ができているのもあるんですよ。でも、江本のこじつけによって、いいように(というか悪いように)解釈されてしまっている。他の節で良いように解釈されている言葉と似たような写真もあるのだが…。「どうせ無理」とか噴出しそうになるのをこらえて読んだのだが、出ている写真は六角形の一角が真ん中から溶け出しているもの。もう少し早いタイミングで写真を撮れば、綺麗な6角形の結晶だったんじゃないのか?
 他にも第4章「水は哲学する」の中で、「しようね」と「しなさい」の違い、などで「悪い言葉」が幾つか示されている。

 とりあえず今回はここまで。今後、少しづつ、おかしな点を中心に紹介していきます。


 以下は「水からの伝言」をはじめて見た方、なんとなく「いい話」と思ってやって来られた方、友人知人にすすめられて「どうだろ」と思って来られた方へのメッセージです。

 「水からの伝言」は、端的に言えば、科学的に間違いを含んでいます。水の結晶は言葉や祈りによって変化するものではありません。これはもう半世紀にわたって世界中で実験が繰り返されており、確立した客観的事実です。
 また、自然科学的な面をのぞいても、例えば冷酷な「ありがとう」もあれば、温かい心のこもった「ばかやろう」もあるでしょう。文脈を無視して単語の良し悪しなど決まりません。
 さらに、どうして「ありがとう」と言うかといえば、相手の心に感謝の気持ちを伝えたいからですよね。そして「ありがとう」と言われて嬉しいのは、自分の体の水が反応するからではなくて、自分の心が反応するからですよね。水がいい結晶を作るからいい言葉だ、というのは、よくよく考えてみると、人間の心、精神性を冒涜していることにならないでしょうか?
 「水からの伝言」をあなたにすすめた方の善意は疑いようもありません。しかし、「水からの伝言」には以上のような問題が含まれており、これが拡がるのは問題だと考えています。どうか今一度考え直していただければと思っています。