前回 までは人々の生活感と大きく関係するであろう実質賃金(インフレを考慮した後の賃金)はデフレであろうと、インフレであろうと実質成長率によって決まるのであって、インフレ率によってきまるわけではないということを書いた。(ま、当たり前なんだけど・・・)
それでも名目賃金が大切だ!と叫ぶ人もいそうなので名目賃金とインフレ率/実質成長の関係を見てみよう。
日本の場合。1981年から2009年のデータを見てみると名目賃金はたしかにインフレ率と実質成長の両方の要素から決まっているように見える。それは認めよう。
しかし、日本で名目成長率と実質成長率が逆転しデフレに入ってきた時代(1995~)の両者の関係をそれぞれグラフで表すと・・・
下のグラフが縦軸が名目賃金成長率、横軸が実質経済成長率だ。(それぞれの算出方法は前回
と同じ)
見てのとおり。なんと、名目賃金の決定要因としてより実質成長率のほうが重要なのが見て取れる。
ついでだからアメリカのデータも見てみよう。こっちは1971年から2009年までを見ると、たしかにアメリカもこの期間を通して名目賃金はCPIで決まる要素が強かった。
アメリカの1970-1980年代はインフレ率が激しく変動していた。しかし、1990年代に入るとそのインフレはかなり落ち着き2-3%程度のレンジに修練してくる。その状態が始まる1992年以降の名目賃金とインフレ率/実質成長の関係を見てみると・・・
これらのグラフを見れば明らかだが、米国でも名目賃金は低インフレ(インフレ安定)下ではCPIではなく実質成長率によってより決まっていることがよくわかるだろう。(アメリカの賃金は個人所得のデータを使用)
インフレが低位に安定すれば名目賃金の決定要因はCPIではなくて実質成長率になる。というのがデータ上は見て取れる。リフレ派といってもとんでもない高いインフレ率やインフレ率の乱高下を望む人は少ないはずだから、そういった人達がこのデータでちょっとだけリフレ(インフレ待望論)に疑問を持ってもらえると幸いだ。
いずれにしても、経済が成長しなければ生活水準の向上はないわけだ。なんでもいいから、リフレでインフレを起こせば生活がよくなるというのは本末転倒であるということがよくわかってもらえたと思う。逆にデフレや低インフレであっても実質成長率を高めれば生活はよくなるというわけだ。(ま、当たり前のことなんだけどね)だいたいデフレって言ったって1999年以降のインフレ率はCPIで年平均で-0.25%とかだ。これのどこが大問題なのかまったくわからない。ものすごいデフレが進行してるわけじゃないよ・・・。
毎週書いて今回で3回目となった。お付き合いいただいた方々には感謝します。
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