インフレじゃなくてデフレだから給料が下がって厳しい。という声が多い。経済が成長してもデフレだから給料があがらない。という不平不満も聞こえてくる。
しかし、それは理屈がおかしいし、数字で見ればもっとおかしいでしょ?というのを前回 書いた。
今回は第2弾。じゃ、インフレのときは給料がどんどん上がっていたのか?もちろん、ただ上がるだけじゃなくて生活がよくならなければいけないのは当たり前だ。日本がインフレだった時代。1981年-1994年(GDPの名目成長率と実質成長率が逆転する前の最後の年)の実質賃金とCPI/成長率のデータを見てみよう。
その前に給料に関してだが・・・
当然、給料の上昇よりも物価の上昇のほうが遅ければ生活水準は向上するし、給料の上昇が物価の上昇よりも遅ければ生活は苦しくなる。今日、よく出てくる実質賃金とは見た目の賃金(名目賃金)からインフレ分を差し引いた数字のことだ。※
たとえば、週に1回バイト時給800円のバイトを3時間してその2400円でバイト終了後にのみに行くのを楽しみにしている大学生がいるとする。
もし、インフレが起きて居酒屋の値段が10%上がればこの人は今までよりも飲み食いの量を減らさないといけなくなる。
逆にデフレが起きて居酒屋のメニューの値段が10%下がればこの人は今までよりもたくさん飲み食いできる。
こう考えれば、実質賃金のほうが名目賃金よりも重要なのは当然だとわかるだろう。
もちろん、実際には賃金も変化するから、どちらの増え幅(減り幅)が大きいかということだ。(そしてそれを考慮して求められるのが上記の実質賃金)
では、本題。(といってもグラフ見てもらって終わりだけど)
日本がインフレだった時代に上記の実質賃金はインフレ(CPI)によって決まったのか実質成長率(経済の成長率)によって決まったのかを見てみよう。
どうだろう?
上のグラフは縦軸に実質賃金の伸び率(国税庁のその年1年勤続者の民間給与に関する統計から筆者が計算)、横軸にCPI|(全国総合)の伸び率をとったもの。
下のグラフは縦軸に実質賃金の伸び率、横軸に実質GDP成長率をとったものだ。
グラフを見れば一目瞭然だが、実質賃金を決める要素としては実質成長率のほうが有効である可能性が高いということがよくわかる。(相関係数は-.0.1vs0.7)
こんなのはデータを見れば一目瞭然だし、理屈で考えても当たり前なんだけど・・・。
なんとなくデフレが悪です。って、みんなが言うから、デフレだから生活が苦しい。インフレになったら生活が楽になるというよくわからない議論がなぜか受け入れられてしまう。
本当のところは(前回の記事とあわせて考えると)デフレでもインフレでも実質成長率を高めることが賃金の上昇(=生活水準の向上)には大切ということだ。もちろん、景気がよければインフレになりやすいし、景気が悪ければデフレになりやすいという事実はあるが、それを飛び越えてインフレになればいいんだなんていうのは意味不明だ。
もちろん、賃金が上昇したとしてもそれがどのように分配されるかといのはまた別の問題だけれども。これからの時代は日本だけじゃなくどこの先進国でも好景気をみんなが感じるというのは難しいとは思う。残念ながら。
次回は名目賃金についてもちょっと見てみたいと思う。それでも名目賃金が大切なんだ!!って言う人も多そうだから。
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過去のリフレに対する疑問シリーズ
リフレに対する素朴な疑問(7) インフレになっても生活はよくならない (2010/12/30)
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※印の部分を一部訂正しました。SEAN0111さんに感謝。2011/1/6