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セス・マクファーレン監督、マーク・ウォルバーグミラ・クニス出演の『テッド』。R15+

ナレーションは『X-MEN』のプロフェッサーXことパトリック・ステュワート



ボストン。ジョン少年はクリスマスにテディベアをもらい「テッド」と名づける。友だちのいないジョンが祈るとテッドに命が宿る。ふたりは親友になった。27年後、35歳になってレンタカー屋の受付の仕事をしているジョンは、外見は昔のままだが中身はみごとにオッサン化したテッドといまもいっしょに暮らしていた。


お笑い芸人の有吉弘行がテッドの声を吹き替えて「酒くれよ」とかTVでもやたらと宣伝してたんで、てっきり大きめのシネコンならどこでもやってるもんだとばかり思ってたら、R指定ということもあるだろうけど意外と上映してるところがすくなくて。

いつもよりちょっと遠出して上映開始時間ギリギリにすべりこみセーフで鑑賞。

なお、僕が観たのは字幕版。

以下、ネタバレあり。



字幕監修を映画評論家の町山智浩さんが担当していて、やはりこれまで町山さんが日本語字幕を監修した『キック・アス』や『宇宙人ポール』などどれも楽しんできたので、この映画も似たような匂いを感じていた。

で、CMでもやってるように、テディベアがマリファナ吸ったり腰振ったり、おねえさんのチチ揉んだりする。

テッドが家に呼んだ売春婦のおねえさんが置き土産に床にウ○チ残してったりもする(さすがに脱糞の瞬間はないが)。

それをミラ・クニス演じるヒロインのロリが「うわぁ、ウン○が指についたぁ!!」とかさけびながら後始末する。

どんな映画だよっ(^▽^;)


いじめられっ子にすら見下されていたジョン少年は、命が宿ったヌイグルミ、テッドと「サンダー・バディ(雷兄弟)」になる。

雷が鳴ると怖いので、ふたりでいっしょに歌をうたって恐怖心をまぎらわすのだ。

30代半ばになってもそれはかわらない。

恋人とイイ雰囲気になってても、ベッドにオッサン声のクマのヌイグルミが入りこんでくる。

これはようするに、いい年してても大人になれない主人公が自立するお話。

『宇宙人ポール』もそういう映画だったけど、まさにあの宇宙人がヌイグルミになったようなもの。

それと、仲良し男子ふたりの一方にカノジョができて、親友同士のあいだにひと悶着が…といった展開もおなじ。

それは『スーパーバッド 童貞ウォーズ』でも描かれていた。


ところで、ほかでもすでにいわれてるしどうでもいいことだけど、ミラ・クニスって前からエマ・ストーンに似てるなぁ、って思っていた。

でっかい瞳やちょっと低めの声とか。

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さて、どちらがミラ・クニスでどちらがエマ・ストーンでしょうか?

ミラ・クニスの方は、ちょっとマリオン・コティヤールも入ってるよーな。

ブラック・スワン』では“おぼこ”のナタリー・ポートマンを誘惑する悪女キャラを演じていたけど、ラヴコメもいける人のようで。

エマ・ストーンの方がもうちょっと陽気なような気はするが。

二人は共演もしてるらしいけど、キャラがカブんなかったんだろうか。

『スーパーバッド』ではエマ・ストーンはジョナ・ヒルにヘッドバット食らってたし、この『テッド』でミラ・クニスは踊るマーク・ウォルバーグにパンチされて床にぶったおれる。

このふたりって、映画の途中で入れ替わってもみんな気づかないんじゃないか(かなり失礼な発言)。

それは冗談だけど、『スーパーバッド』も『テッド』もおなじような話を描いていて、これまでは男同士でキャッキャしてた主人公が、カノジョのために生き方を変えるようせまられる。

でも昔からずっと仲のよかった友だちとダベったり呑んだり大はしゃぎしたりするのは楽しいので、なかなかやめられない。

そのために仕事もサボっちゃう。

カノジョとつきあって4年経っても結婚に踏みきれない。

…正職についててまもなく昇進、ミラ・クニスみたいなカノジョがいる時点でリア充じゃねーか、爆発しろ!!と思うが、どうやら35歳でレンタカー屋ではたらく次期支店長の男は、この映画のなかじゃ女性から見たら不十分らしい(ヒロインは社会的地位ではなくてカレにケジメをもとめているのだが)。

テッドがスーパーのレジ打ちの仕事で知り合ってつきあいはじめる(これは…ナニ姦というのだろうか)タミ・リンみたいに客席で「一流企業に勤めてるからっていばるんじゃねぇ!!」とキレそうにもなったが、まぁいいや。

つまり、男は結婚して家庭をもってはじめて一人前の人間として自立できたといえるので、いつまでも子どものままでいるんじゃなくてちゃんと責任のある人生を送りなさい、ということですかね。

ほっとけっ。

でも『宇宙人ポール』もいわんとしてたのはそういうことだったわけで。


予告篇観てテッドはもっとやさぐれてるのかと思ったら、たしかにハッパはヤるし友だち呼んで大騒ぎするし職場で女の子とハメちゃうけど^_^;でも基本的には彼はカワイイ。

道端で女の子たちからいっしょに写真を頼まれたり(で、チチを揉む)、子どもも寄ってきたりする。

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ときにはヤバいのにつきまとわれたりも。

テッドの声を演じているのは監督本人。もともと俳優なんだそうで。

『宇宙人ポール』もそうだったけど、なんか最近オヤジキャラのクリーチャーが多いですな。

この映画で使われるジョークはアメリカ人向けなので日本の観客にはその面白さが理解できないため、和訳する際にところどころアレンジされている。

字幕にあった「七五三」も「ガチャピン」ももちろん原語版にはない。

これをとやかくいうむきもあるようだけど、僕は適切な措置だと思いました。

「“くまモン”の方がよかった」という意訳はナイス(^~^)


日本語字幕についての町山さんの解説

ただまぁ、全篇そんな爆笑ってわけでもなくて、クマのヌイグルミがしゃべるユルいジョークにときどきクスリとする感じで、『宇宙人ポール』ほどパンチはなかったけど。

やっぱりローカルすぎるネタはアメリカ人じゃないんでよくわからないし、主演のウォルバーグが『ブギーナイツ』のときみたいに「ステイン・アライヴ」に合わせて踊る場面も、楽しいっちゃ楽しかったけど若干スベり気味ではあった。

スターウォーズ』の「ダース・ベイダーのテーマ」の着メロのシーンも同様。

“肛門ネタ”もすでに『ポール』で経験済みなので(誤解をまねくような表現)、さほどインパクトもなく。

でもマリファナ吸ってるテッドのボタンみたいなつぶらな瞳にキャメラが寄ると、まるで瞳孔がひらききってるように見えて個人的にツボでしたw


これまたどーでもいいけど、ヌイグルミのクマといっしょにマリファナ吸ってビール飲んでぐーたれてるレンタカー屋の店員役なのに、マーク・ウォルバーグってば腕太すぎ。

この人、年追うごとにムキムキになっていってる(;^_^A

ジョンはけっして救いようのないバカではなくて、まだ幼稚さが抜けないところがある程度なので、彼がかかえる問題はそんなに深刻なものではない。

テッドとの同居をやめたって今生の別れではないのだし、『宇宙人ポール』のサイモン・ペグがそうだったように世のなかには結婚や恋愛と趣味や友だち付き合いをうまく両立させてる人たちだっている。

だからジョンの悩みにはまったくといっていいほど共感しなかったんだけど、それでもテッドがらみの場面は単純に観ていて楽しかったです。

観てるうちにまるで違和感がなくなって自然にそこにいるように見えてくるけど、いうまでもなくテッドはCG製で、マーク・ウォルバーグもミラ・クニスも相手が誰もいない方向(もしくは合成用の緑色のタイツ着た人)にむかって演技してるわけで。

つくづく思うんだけど、俳優ってスゴいっすねぇ~。

ウォルバーグとテッドのシバき合いのシーンなんて、撮影風景を想像するとなかなか微苦笑をさそう。

アメコミヒーロー映画『グリーン・ランタン』がコケちゃったライアン・レイノルズが主人公の職場の同僚のゲイの恋人役で出てたり、なによりあのQUEENの名曲(だけ)が有名な愛すべきヘッポコ・スペースオペラ『フラッシュ・ゴードン』の主演サム・ジョーンズが大フィーチャーされてたり(この人がまたけっこうぶっとんだジジィになってる)、あとなぜか『トップガン』や『エイリアン』のトム・スケリットがやる気なさげに顔出してたりするのが愉快。

それから、ノラ・ジョーンズがテッドとあーんな関係だったことも判明。

『フラッシュ・ゴードン』(1980) 監督:マイク・ホッジス 出演:マックス・フォン・シドー ティモシー・ダルトン
原作からして「皇帝ミン」に「惑星モンゴ」って、あまりに安易なネーミング(´∀`)フラッシュ、ああ~♪




ちなみに『フラッシュ・ゴードン』には『フレッシュ・ゴードン』というポルノ版パロディがあって(サム・ジョーンズ主演版よりも前の74年作品)昔ヴィデオかDVDで観たけど、なんかチ○コがドリルになったロボットとか出てきたよーな。じつは特撮映画史においてはけっこう有名な作品なんですが。

それにしても、いまだに「『スターウォーズ』の新作の監督がJ・J・エイブラムスに決まった!」とかいって騒いでるよーな僕には、いい年こいて『フラッシュ・ゴードン』観て喜んでる三十路男をまったく笑えないのだった。


プライベート・ライアン』で「ママ、ママ」いいながら死んでたジョヴァンニ・リビシが、子どもの頃にテディベアを買ってもらえなかったために精神に異常をきたして^_^;テッドにつきまとう男を演じている。

アバター』でも憎まれ役を演じてたけど、なんか最近はそういう役柄が多いんだろうか。

リビシが演じるこの口ヒゲのヘンタイ男(ティファニーのミュージック・クリップ観ながらキモすぎるダンスを披露)はテッドを拉致して自分の息子にプレゼントしようとする。

彼の肥満児の息子は、まるで『トイ・ストーリー』で人形を拷問していた少年シドのようにテッドの耳をむしりとって折檻しようとする。

『トイ・ストーリー』もまた、主人公の人形ウッディと彼の持ち主アンディの成長と別れの物語でもあった。

だからこの映画も描きようによっては号泣必至の感動作にもなったかもしれないんだけど、ヒロインのセクハラ上司(この人も変なキャラだったけど)が「屁が爆発して死んだ」などとテキトーにもほどがある説明がつくラストのように、「なーんてね♪」と冗談めかしてあくまでもコメディに徹しようとしてる。

大人への成長、というテーマをあつかっているこの作品だが、じつは主人公のジョンは映画の途中でテッドとの別れを決意して成長をとげてしまう。

だから映画を盛り上げるためにテッドの誘拐事件が描かれる。

カーチェイスの途中でテッドが肥満児を「そこのスーザン・ボイル!」と呼ぶところは吹いてしまった。

ただ、終盤のジョヴァンニ・リビシ&肥満児の息子とテッド&ジョン&ロリの追っかけは、「大人への成長」というこの映画のテーマとはほとんど関係がない。

「おバカ映画」なんだから軽く笑って観てればいいんだしそれをクソ真面目に語るのは野暮なのは承知で書くけど、僕がこの映画に物足りなさを感じたのはまさにこの部分で、この映画ではリビシが演じるヘンタイ拉致男はまったく理解不能な存在だけど、主人公ジョンのような「幸福な子ども時代」を送れなかった人としてちゃんと描けばジョンの「暗黒面」のようなキャラクターにできたはずなんだよね。

彼のテッドに対する執着心は、まるで子ども時代から抜け出せないまま廃人みたいになったジョンの成れの果てを見るようだ。

だからもしもこの男のそんな哀しみまで描けていたら、クライマックスでの彼とジョンによるテッドの奪い合いももっと盛り上がっただろうと思う。

あれは主人公の心のなかでの葛藤でもあるのだから。


たしかにウルッとくる一瞬はある。

拉致男によって「『エイリアン2』のビショップみたい」にまっぷたつにちぎれてしまったテッドは、ジョンとロリの必死の縫合手術(裁縫)にもかかわらず、ふたりの幸せを願いながらもとのただのヌイグルミにもどっていく。

テディ~~!!!

泣いたよ、あたしゃ。

ヌイグルミとかモノが命をもって主人公とふれあって、最後にまたただのモノにもどっていくようなシーンには問答無用で泣いてしまう。

でもその一方で、この映画は最初から下ネタOKの「おバカ映画」の体裁をとっているので、きっと最後にはシレッとした顔でテッドはまたジョンの前にあらわれるんだろう、とも思っていた。

そんで、やはりそのとおりだった。ちょっと残念。


何度もくりかえすように、たわいない内容の映画なんだから別にハッピーエンドでいいじゃん、とも思う。

ひとつは、ヌイグルミにしろなんにしろ、“モノ”というのはペットや野生の生き物と違って所詮最初から「命」はないので、それが「生きている」と感じるかどうかは人間の心持ちひとつでいかようにでもなるということ。

これがもしほんとに生きてる小熊とのふれあいの物語だったら、死んでしまったクマが奇跡で生きかえる、なんて話は噴飯モノでしょう。

だから別にいいと思うんだけど、でもやっぱりあそこはジョンにはほんとうにお別れしてほしかったのだ、テッドと。

『宇宙人ポール』のポールだっていちおう宇宙に帰っていったんだし。

宮崎駿監督の『魔女の宅急便』で、主人公の少女キキは幼い頃からいっしょに過ごしてきた黒猫のジジと言葉が通じなくなってしまう。

それは少女の成長を意味していた。

キキはショックをうけるが、ジジは二度と彼女とは会話しない。

それは宮崎監督の観客に対する最低限の誠意だったんじゃないかと思う。


たとえば、場合によってはテッドがあの肥満児にもらわれていくような展開だってありえたんじゃないだろうか。

もちろん、テッドだってあんな凶暴なガキにはもらわれたくなんかないだろうけど、それでもただ「デブ」をバカにするんじゃなくて、これはもっと泣ける話にだってできたんじゃないかと思うのだ。

トイ・ストーリー3』が感動的だったのも、最後に人形たちが自分たちを必要としている相手のもとにもらわれていったからこそではないか。


人生には二度ともどってはこないものがある。

それでも人は生きていく。


ジョンはもうひとりでも雷が怖くない。

そんなジョンの前で、もはやテッドは二度と口を利くことはない。

そして、どこかの子どもの家でまた、別のヌイグルミがしゃべりはじめて…。

あるいは、テッドはいつもは黙ってジョンを見守りながら、ときどき人知れずジジィになったフラッシュ・ゴードンといっしょに空にむかってジャンプしてる。

…てな終わり方でよかったんじゃないのかなぁ、と思うんですが。

ジョンとテッドの別れをきちんと描ききっていたら、これはもしかしたら何世代にもわたって読み継がれる「さようならドラえもん」のような名作になった可能性だってある(下ネタ満載だけど)。


たしかに遠くの映画館に汗だくで猛ダッシュしてまで観にいくほどの作品だったかといえば、そこまでではないかもしれない。

3ヵ月ぐらいすりゃDVDになるんだし。

でもまぁ、いつも観たい映画を近くでやってくんないので、くやしかったからおもわず観に行っちゃったのだ。だから満足。

中年オヤジが熊ん子の映画観ていろいろ考えたのさ。

大麻はやんないけど、オッサンはもう酒呑んで寝るぜ。

最後に一言。

テディ、スーパーマン リターンズ』は“ダメ”じゃねーよっ!!



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