監督・脚本・製作・主演:セス・マクファーレン、出演:マーク・ウォルバーグアマンダ・セイフライドジェシカ・バースジョヴァンニ・リビシサム・J・ジョーンズパトリック・ウォーバートンジョン・スラッテリーモーガン・フリーマンの『テッド2』。R15+



スーパーのレジ係として働きながら同じ職場の恋人タミ=リンと結婚したテッド。しかし1年経って二人の関係に亀裂が入り始める。テッドは妻との間に子どもを作ることにするが、彼女の卵巣は過去の薬物濫用のためにボロボロで妊娠は不可能と医師から言われる。そこで養子を迎えようとしたところ、テッドは人間ではないから、という理由で拒否され、結婚も取り消されそうになり、そしてテッドの「人間」としての権利そのものが否定されるという事態に。このままではテッドは法律的にただの「所有物」とみなされてしまうため、彼と親友のジョンは弁護士を雇って裁判で争うことにする。


カワイイ顔してラリパッパで下品なテディベア、テッドの活躍(?)を描くシリーズ第2弾。

年齢制限があるにもかかわらず前作は予想外のヒットを飛ばしたことは記憶に新しい。

先日TVの地上波で「大人になるまで待てない!バージョン(PG12)」と称して1作目が大麻ネタや下ネタの場面を巧妙にカットして放映されたけど、なんでもわざわざそのために吹き替えを録り直したんだそうで、妙に力が入っていた。

ハッパネタや下ネタを取り除いちゃったらそれはもうテッドじゃないだろう、と思っていたんだけど、意外とスルスルッと観れちゃいましたね。

あれで12歳未満の子たちがテッドを観られたんなら結構なことで。

ただまぁ、やっぱりこのシリーズで一番面白いのはそういう場面なわけだから、いい年したおっさんにはサビ抜きの寿司食ってるみたいで味気なかったことは確か。

僕は前作は映画館では字幕版で観たんですが、監督のセス・マクファーレン自らが吹き込んだオリジナル版のテッドの声はもろ“おっさん”なのに対して、お笑い芸人の有吉弘行がアテた吹替版のテッドの声はちょっとやさぐれ気味のあんちゃん、といった感じで、やっぱ違和感があった。

カワイイ姿のヌイグルミと野太い声のギャップが面白いんだからさ。あそこはやっぱりおっさん声の声優さんにアテてもらいたかったな、と。

なので、今度も意地でも字幕版で観ようと思ったんだけど、僕が住んでるところではどのシネコンも吹替版での上映の方が多くて、字幕版はすでに1日に2回ぐらいしかやってない。

おかげで時間が合わずになかなか観られなくてイライラしたんだけど(同じ理由で、吹替版しかやってなかったピクサーの『インサイド・ヘッド』は劇場で観なかった)、ぜってぇ字幕で観る、と決めたのでそうした。

さて今回は、ミラ・クニスが演じた前作のヒロイン、ローリーは「ジョンと別れた」ということになってて、新たにアマンダ・セイフライド演じる弁護士サマンサが登場。

これがストーリー上の都合でなのか、それともミラ・クニスの出演がかなわなかったからなのか詳しい事情は知らないけど、前作であんだけ別れるのヨリを戻すのと大騒ぎした末にラストで結婚した二人があっさり離婚したことになってるのはちょっと興ざめではあった。

キレると急に口が悪くなるテッドの恋人、タミ=リン(ジェシカ・バース)の方が残って、真面目なキャリアウーマンだったローリーが映画から消えてしまったのにはちょっと驚いた。




ただ、「男女の仲なんてどうなるのかわからない」というのはリアルっちゃリアルなのかも。

それと、前作は「子どもの頃から大事にしているクマのヌイグルミ=幼稚なものへの執着、を捨てて大人に成長すること」についての物語だったのが、今回はまったく違うテーマなので、ローリーが再登場してまたしてもジョンと揉め続けるのはお話の展開上邪魔だから、というのはある。

ローリーはジョンがテッドと一緒になって暴走するのを止めるストッパー役だったけど、今回その役は必要ないから。

新登場のサマンサは弁護士のタマゴにもかかわらず、彼らと一緒になってマリファナ吸いまくるし。

前作はジョンについての映画だったのが、今回はテッドが真の主人公になっている。

テッドはジョンが幼い頃に命が宿って以来の親友で、彼自身、自分を人間と同等の存在と思っている。

それが「君は人間ではない。ただの所有物だ」と言われたのだから呆然。

真面目に働いてきたのに仕事はクビにされ、養子縁組は許されず、それどころかタミ=リンとの結婚すら無効にされそうになる(そもそも当たり前のように結婚できたこと自体が可笑しいんだけど、それも伏線になっている)。

前作のようなノリを期待していた人が「あまり笑えなかった」と評していたり、確かに公開されてから前作ほどには話題になっていないことから若干の不安はあったんだけど、結果的には僕は面白かったです。

この映画についてはすでに映画評論家の町山智浩さんの解説を聴いていたこともあって、何についての物語なのか事前に知っていたり他の人たちのレヴューを読んでいたので、わりとスルッと抵抗なく入ってきました。

笑えるところもあればそれほど笑えないところもあるんだけど、それは前作でもそうだったから。

映画の始めの方で“フラッシュ・ゴードン”ことサム・ジョーンズが「俺が誰とクスリを吸ったかわからないだろ」と言ってキャメラがPANすると、物凄い勢いで縄跳びを跳んでてそのまま窓ガラス突き破って外に飛んでっちゃう男の場面なんかはちょっと『裸の銃を持つ男』っぽいノリだったけど、どちらかといえばこの「テッド」シリーズにはああいうアッパー系のギャグは少ない。

僕は、最初のオープニングクレジットでテッドがダンサーたちと一緒に踊ってる場面を観ていたら、それだけでもう心地良くなってしまったんですよね。たとえ本篇のギャグがスベリ気味だったとしてもすべてが許せる気がした。




もう、テッドがいろんな服着てたり走ったり転んだりジョンをぶん殴ったりしてる姿を見ているだけで楽しいから。

 


これまでにミュージカル映画に何本か出演しているアマンダ・セイフライドが出てるからか、テッドとジョン、サマンサのダンスシーンもあったりして(『ブレックファスト・クラブ』のパロディ)。

だから、中には前作が好きだからこそ今回はノれなかった、という人もいるかもしれないけど、僕個人は前作同様に好きです。

2本続けて観るとより面白さが増すと思う。

とりあえず前作を未見のかたは前もって観ておいた方がいいでしょう。

そんなわけで、これ以降はストーリーのネタバレがありますのでご注意ください。



まず「笑えなくてむしろ不快だった」という感想を持った人の言い分としては、テッドたちが罪のない人々に悪さをする場面に引っかかった、と。

ジョギングしてる人にリンゴぶつけたり、ジョンの同僚のガイ(パトリック・ウォーバートン)とその恋人リックはコミコンでオタクたちを苛めまくる。

前作ではあれほど憧れの的で結婚式の神父役まで務めてくれたフラッシュ・ゴードンにさえも、精子を提供してくれなかった(80年代にコカインをやり過ぎて精子がたった1匹だけになってしまったため)、ということで悪態ついたうえに彼の高級な愛車まで破壊する始末。

クライマックスでは怒ったフラッシュ・ゴードンと大乱闘に。

ハッパ吸って飲酒運転してやりたい放題。

確かにジョギングしてる人に意地悪する必要性は感じなかったけど(あと“お笑い芸人いじめ”も^_^; 911テロのネタをしつこく繰り返すのは、セス・マクファーレン本人が実際にほんのわずかな偶然からあのテロに巻き込まれるのを免れた経験からか)、競技用の自転車で凄いスピードで公道を走ってる人は迷惑だな、とは思う。

まぁ、あの場面ではテッドは「身体なんか鍛えやがって」とか言ってたから、酒とマリファナ好きの自堕落人間がスポーツマンをやっかんでる、ってことかな。

乱暴運転については、最近薬物使用や飲酒で暴走して事故を起こす人間のニュースをやたらと目にするんで、観ていて爽快感はまったくなかった。

昔はフィクションの中の暴走シーンなんて素朴に面白がってたけど、今では現実の方がどんどんデタラメになっていってるんで映画の中のそういう場面を楽しめない。

でも、この映画ではそれをやってるのがクマのヌイグルミだからね^_^;

真面目に憤慨するのもバカバカしくて。これが主人公が人間だったら僕も作品に批判的な人たちと一緒に怒ってたかもしれませんが。

今回、テッドが問題児であることは映画の作り手にとって意図的なものだということがわかる。

映画の中盤で、テッドはモーガン・フリーマン演じるヴェテラン弁護士ミーアンから(ジャスティン・ビーバーに喩えられて)「特別な存在になれたはずなのに、君はこれまで何をやってきた?」と問い詰められる。

法律を犯すことばかりして人に迷惑かけているだけで、世の中の役にまったく立っていないじゃないか、と。

ミーアンはテッドの素行の悪さを理由に、彼の弁護人の依頼を断わる。

これまでのテッドの悪行三昧を見てきているだけに思わず同意してしまいそうになるが、でもそのこととテッドに基本的人権があるかどうかということはまったく別の話だ。

「世の中の役に立たない人間」には人間としての権利はないのか?ということ。

もしも「お前、役立たずだからこれから“物”扱いな」と言われたらどうする?

同じ職場のアフリカ系の女性がかつて奴隷として売られてきた自分たちの祖先のことを話すのは、このことに繋がっている(彼女の「白ニガ」発言に若干ヒイてるテッドの様子が可笑しい)。

世の中の役に立つから誰かに権利を与えられるのではない。それは最初から自分が持っているはずのものだ。

もちろん、法を犯すことをやってればそれに対する罰は受けなければならないし、場合によっては自らが有する権利を著しく制限される可能性だってある。

それでも「人間」である権利は誰にも冒されてはならない、ということ。

それと、ジョンの同僚で人に暴力をふるって悪さをしているガイが同性愛者という設定だったり、ダイナーで店員に横柄な態度の半ケツの客が視覚障害者だったりするのにも当然意味があって、つまり性的マイノリティだろうと障害者だろうとイヤな奴はいる、ということ。だって人間だもの。

“ヘテロセクシュアル”や“健常者”にクソ野郎がいるのと同じで。

だからこの映画が一体何を描いているのかがわかると、笑えるか笑えないか、ということ以外の部分でも楽しめると思う。

…なんかあまり笑えないこと前提みたいに書いてますが、結構クスクスしましたけどね、僕は。

テッドが自分の代わりにジョンに精子をもらおうとするとことか、あんなに白い液体が大量に画面に飛び散りまくる映画を観るのは『殺し屋1』か『最終絶叫計画』以来だw


デカマラに驚愕。レインコート姿のテッドがカワイイけど、精子の“しぶき”を防ぐためですw


マーク・ウォルバーグ演じるジョンが精液まみれになりながら「目に入った!」と騒ぐとことか爆笑してしまったもの。

離婚してパソコンをエロファイルだらけにしてしまってテッドにドン引きされる時のウォルバーグの熱演が見もの。

この映画のジョンは前作以上に口が悪くなって、さらにアホに磨きがかかってきている。でもイイ奴。

彼のテッドへの友情が、最後にテッドに「人間」としての権利を取り戻させる。

精子、ってのは生命のおおもとだからこの映画のテーマの象徴ともいえるし。気のせいかもしれないけど。

でも下ネタにすらも僕にはちゃんと意味があるように感じられたのでした。

ほんと、精子ネタ最高だったw

テッドから「目がゴラム」と言われて額にマジックで「ペヌス(PENUS)」って書かれてしまうサマンサは「そんな奴おれへんやろ」って感じの型破りな女性だけど、でも演じるアマンダ・セイフライドがキュートだからオッケー。歌声も披露してくれます。チ○コ型のマリファナ吸引器も口に…。

 
ツーショットw マリファナ吸引器は劇中ではもっとモロな形のモノを吸います


“ゴラム”を知らず『ロッキー』を観たこともなく、スターウォーズスタートレックの区別もつかないサマンサにテッドが「もっと映画を観ろよ」と言うけど、世界中のモテないオタクたちの呟きに聴こえた(;^_^A

一面に広がるマリファナ畑に感動的に鳴り響くジュラシック・パークのテーマ曲。

「群れになってる…」ってwww

思えば、テッドたちとサマンサの共通の趣味ってマリファナだけだもんな。クサ仲間か。

コミコンで通行人に狼藉を働いて喜ぶガイの恋人リックを演じているマイケル・ドーンは、「スタートレック」シリーズでウォーフ中尉を演じていた俳優さん(しかも吹き替えの声は元ネタ同様にしっかりと銀河万丈がアテてる。そこだけ観たいw)。

 


素顔はああいう顔してたんだ。これまでクリンゴン人の特殊メイクした顔ばっか見てたから。

彼にクリンゴン人のメイクをしてトレッキーたちをドツかせるという、趣向w

コミコンの場面は、ほんとコスプレした通行人たちを見てるだけで楽しかった。

アマゾンの半魚人とスタトレ(TOS)の有名な怪獣ゴーンが超スローモーで戦ってたり、「ドラゴンボール」の悟空や「宇宙家族ロビンソン」か『禁断の惑星』か「ドクター・フー」のロボットみたいなのがいたり、ストームトルーパーとオビ=ワンとベイダー卿が仲良く歩いててテッドにツッコまれたりしてる。

セス・マクファーレンはもちろんオタクだから(そうでなければあんなにしつこく『フラッシュ・ゴードン』にこだわるわけがない)、オタクいじめをするガイたちを最後には懲らしめる。

トレッキーたちにぶっ飛ばされるウォーフってスゲェな。

ちなみに、この映画のナレーションを担当しているのは、これまたスタトレ「ネクスト・ジェネレーション(TNG)」のピカード艦長ことパトリック・ステュワート

劇中でテッドたちが観ているTVドラマ「ルーツ」で主人公クンタ・キンテを演じていたのは、のちに「TNG」で盲目のためずっとヴァイザーで目隠しされてたラ=フォージ中尉を演じたレヴァー・バートン

 


どんだけスタートレックが好きなんだよマクファーレン^_^;

そして、テッドの働いてるスーパーに子ども向けのお菓子を買いにくる“あの人”。

エンドクレジットのあとにも再登場してて意味がわからなかった人がいるようだけど、あの人はダークマンで元ジェダイ・マスターで最強のお父さんですよ。いつも闘ってる人なの!w

ジョヴァンニ・リビシが前作に続いてティファニーの歌で踊るキモい拉致男ドニーを演じているけど(肥満児の息子は出ません)、彼と共謀する悪いオモチャ会社が思いっきり「ハズブロ社」なのが笑う。

よく実名をオッケーしたよな。

で、「どこの会社だ」と聞かれてライヴァルの「マテル社」の名を騙ったりして。

このあたりは知らないと何が面白いんだかわかんないだろうな。

「カーダシアン」というのがリアリティ番組に出てるお騒がせセレブ一家のことだとか、トイレで男漁りをやってたジェイ・レノがアメリカの有名なコメディアンだということを知らなければ台詞の意味もそのギャグの面白さも伝わらないし。

今回、字幕監修の町山さんは前作の「ガチャピン」とか「星一徹」みたいに台詞を日本人向けに替えることは一切やってなくて、日本の観客には意味がわかんなくてもそのまま日本語訳にしている。

前作でよっぽど叩かれたんでしょうね。だったらもうやらない、ってことですな。

くまモンの方がいい」とか、なかなかいい意訳だと思ったけどね。

熊ん子」なんて、今回ちょうどチン○型吸引器が出てくるんだからピッタリの訳だったのに。

町山さん、懲りずにまた超訳やってくださいよ。


そんなわけで、すべてが丸く収まりテッドとタミ=リンはあらためて結婚する。

人間だから苗字が必要なので、テッドの本名は「テッド・クラバー・ラング」に(さらに養子の赤ちゃんには「アポロ・クリード」の名前も)。

 
クラバーことミスター・Tとアポロ(カール・ウェザース
※カール・ウェザースさんのご冥福をお祈りいたします。24.2.1


どんだけ『ロッキー3』が好きなんだよ^_^;

だからテッドが繰り出すパンチはあんなに重い音がするんだなw



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