「なにごとじゃ」

 天守閣でくつろいでいた殿さまが、急に騒がしくなった城内に耳を傾けた。

「ただいま、見て参ります」

 家臣が立ち上がったとき、「殿、一大事でござります。主水之正めが謀反いたしました」と身に数本の矢を帯びた家臣が、息も絶え絶えに注進に上がってきた。

「なに、主水之正の謀反とな」

 日頃目を懸けてやっている寵臣に裏切られたと聞いて、殿さまは、目を剥かんばかりに驚いた。

「もう、彼奴等は直ぐ下まで来ています。はや、お覚悟を」

 先ほど立ち上がった家臣が、下を覗いて、絶望的な顔を殿さまに向ける。

「ぬうう、無念な」

 殿さまが蒼い顔をして呻いたとき、「殿、数々の悪政、民に成り代わり、この主水之正が成敗してござる」と、主水之正が血刀を引っ下げて上がってきた。

「き、きさま、日頃恩顧をかけてやったのを忘れたのか」

 凄まじい形相で、殿さまが言う。

「はて、なんのことですかな」

 主水之正が薄ら笑いを浮かべて、そらとぼけた。

「かくなるうえは、やむを得ん」

 殿さまが手にした自爆装置のスイッチを押すと、謀反人もろとも城が吹っ飛んだ。

 西暦2083年のことである。

 

 

 

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