徹は、浜辺で奇妙な石を拾った。大きめのビー玉くらいの大きさで、まん丸く、表面がつやつやした真っ黒な石だった。

 中心部は、鮮やかな漆黒が渦を巻いているように動いており、自然のもとは思われず、まるで偉大な芸術家が造ったような気がした。

 その石を、徹はお守りのように、いつもポケットに入れていた。

 ある夜、残業で帰宅が深夜になったとき、数人のチンピラに絡まれ、殴られそうになったとき、徹は無意識にポケットの石を掴み出し、チンピラに翳した。

 ゴウッっという音と共に、渦が激しく回転し、数人のチンピラは、石に吸い込まれていった。味をしめた徹は、嫌いな上司や隣人に石を翳して回った。

 石は、その度に、目標となった人間を吸い込んでゆく。

 徹は、覇者になった気がした。

「消えろ」と心の中で呟いて石を翳すと、人だけはなく、電車だろうが車だろうがビルだろうが、その石は、なんでも吸い込んでくれる。

 ある日、徹は最愛の妻と、ささいなことで喧嘩をし、頭に血がのぼった徹は、いつのもの癖で、妻に向けて石を翳した。

 そして、妻はいなくなった。

 我に返った徹は、激しい後悔に苛まれ、生きるのが嫌になった。

「消えろ」

 徹は、自分に石を翳して、大声で言った。

 今日も、その石は、どこかで誰かに拾われるのを待っているかもしれない。

 

 

 

 

 

恋と夜景とお芝居と(現在連載中)

ふとしたことから知り合った、中堅の会社に勤める健一と、売れない劇団員の麗の、恋の行方は?

 

絆・猫が変えてくれた人生

会社が倒産し、自棄になっていた男の前に現れた一匹の黒い仔猫。

無二の友との出会い、予期せぬ人との再会。

その仔猫を拾ったことから、男の人生は変わっていった。

小さな命が織りなす、男の成長と再生の物語。

 

プリティドール 

奥さんが、元CIAのトップシークレットに属する、ブロンド美人の殺し屋。

旦那は、冴えない正真正銘、日本の民間人。

そんな凸凹コンビが、CIAが開発中に盗まれた、人類をも滅ぼしかねない物の奪還に動く。

ロシア最凶の女戦士と、凶悪な犯罪組織の守り神。

世界の三凶と呼ばれて、裏の世界で恐れられている三人が激突する。

果たして、勝者は誰か?

奪われた物は誰の手に?

   

短編小説(夢

 

短編小説(ある夏の日)

 

短編小説(因果)

 

中編小説(人生は一度きり)

 

20行ショート小説集

 

僕の好きな一冊シリーズ

 

魔法の言葉集