徹は、浜辺で奇妙な石を拾った。大きめのビー玉くらいの大きさで、まん丸く、表面がつやつやした真っ黒な石だった。
中心部は、鮮やかな漆黒が渦を巻いているように動いており、自然のもとは思われず、まるで偉大な芸術家が造ったような気がした。
その石を、徹はお守りのように、いつもポケットに入れていた。
ある夜、残業で帰宅が深夜になったとき、数人のチンピラに絡まれ、殴られそうになったとき、徹は無意識にポケットの石を掴み出し、チンピラに翳した。
ゴウッっという音と共に、渦が激しく回転し、数人のチンピラは、石に吸い込まれていった。味をしめた徹は、嫌いな上司や隣人に石を翳して回った。
石は、その度に、目標となった人間を吸い込んでゆく。
徹は、覇者になった気がした。
「消えろ」と心の中で呟いて石を翳すと、人だけはなく、電車だろうが車だろうがビルだろうが、その石は、なんでも吸い込んでくれる。
ある日、徹は最愛の妻と、ささいなことで喧嘩をし、頭に血がのぼった徹は、いつのもの癖で、妻に向けて石を翳した。
そして、妻はいなくなった。
我に返った徹は、激しい後悔に苛まれ、生きるのが嫌になった。
「消えろ」
徹は、自分に石を翳して、大声で言った。
今日も、その石は、どこかで誰かに拾われるのを待っているかもしれない。
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