「おどれら、なにをぐずぐずさらしてけつかんねん」

武闘派で鳴らした、池山組の戦闘隊長である渡嘉敷龍二が、組員に向かって怒鳴り散らす。

昔、どんなに武闘派であっても、暴対法が出来た今は、身動きが取れない。

暴対法のお蔭で、どんどん牙を抜かれていったヤクザ達は、抗争が勃発しても、昔に比べて消極的だった。

それに、シノギが厳しい現在、抗争に注ぎ込む資金も乏しい。

それでも、舐められたら生きていけないヤクザの世界だ。

 一旦抗争が起きてしまえば、有利な形で手打ちに持っていかなければ、どんどんしぼんでゆくばかりだ。

 龍二のいる組は、些細なことから、敵対する組に組員が痛めつけられた。

 このまま黙っていては、組のメンツが立たない。

 それで龍二は、相手の組に殴り込みをかけようとしていた。

「龍二よ」

 まなじりを吊り上げて、組員の知りを叩く龍二に、組長が声をかけた。

「おまえの気持ちはありがたいがな、こんな些細なことで喧嘩になったとあっちゃ、組はやっていけねえ」

 組長の説得に、龍二は渋々折れた。

 それは見せかけで、内心はほっとしていた。

 龍二も、暴対法に牙を抜かれていた一人だった。

 

 

 

 

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