静かな夜だった。

こんな静かな夜は初めてだ。

ここへ来てよかったと、俺はしみじみ思った。

日本にもまだこんなとこがあったのかと思うと、ちょっぴり嬉しくなった。

ただひとつ、欠点を上げれば、スマホが繋がらないことだ。

そういった意味でも、日本にもまだこんなとこがあったんだと思う。

時間に追われる日々。

誰かと、常に連絡を取り合っている日々。

誰かと繋がっていなければ、不安で不安でしかたがない日々、

俺は、そんな毎日にうんざりしたのだ。

仕事を辞め、住まいも引き払って、俺は放浪の旅に出た。

そして、行き着いたのが、ここだった。

誰もいない。

喧噪もない。

まてよ、俺は、はたと気が付いた。

あまりにも静か過ぎる。

動物や虫の鳴き声どころか、風の音もしない。

そうだ。

俺は、崖から足を滑らせて、深い谷底に真っ逆さまに転落したのだった。

すると、ここは?

 

 

 

 

 

 

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