港には、大勢の政府関係者やマスコミが集まっていた。

見物客も多くいる。

今、まさに日本が世界一となる日が来たのだ。

世界で一番の豪華客船を軽く抜く、豪華客船の進水式だ。

政府関係者は悦に入り、マスコミ関係者は誇らしげに、見物客は晴れがましげに、巨大なビルを横倒しにしたような、大きな船に魅入っている。

もちろん、各国からも大勢のマスコミが詰めかけていた。

その巨体を誇るように、大きな汽笛を鳴らして、船はゆっくりと大海原に滑り出していった。

「社長、仕掛けは万端です」

腹心の秘書が、この船を製造した会社の社長の側に来て、耳打ちした。

「よし」

社長が、満足げに頷く。

「こんな船を、我が社が作れるわけはないんだ。所詮、この船は張子の虎だ。テロリストのせいにして、船を沈めちまえば、手抜きはばれないし、保険は入るしで、一石二鳥ってもんだ。まあ、多少は高くついたがな」

「それでも、会社は潤いますよ」

二人が、周りに気付かれないように、忍び笑いを漏らす。

秘書は密かに武器商人に手を回し、船底のいたるところに、時限爆弾を仕掛けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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